3ー21 アルク対セイラ2
「あんた[魔法消去]を使ってるな?」
アルクがそう言うとセイラは驚いた顔をした。
魔法消去。それは文字通り魔法そのものを消す事の出来る魔法であり、相手の詠唱、または魔法陣構築に合わせて使うと、魔法が発動しなくなる。
「凄いな。まさかこんなに早く見破られるとは」
「違和感があったんだよ。俺の発動した魔法は不自然な形で消滅したり、セイラさんの指先に魔力の残滓があったり」
「そうか……だが、知ったところで何か変わるのか?」
セイラがそう言うと、セイラは剣に炎を纏わせ斬撃を飛ばしてきた。アルクはセイラの飛ばしてきた炎の斬撃を避けた。
確かにアルクはセイラの[魔法消去]を知ったところでどう対処すれば良いの分からなかった。
そう考えているとセイラが距離を詰め始めた。
[聖剣流・隼斬り]
するとセイラは二人に増えた。だがセイラはお構いなしに攻撃を続けた。セイラが右から攻撃したかと思えば左から攻撃される。セイラが剣を振り下ろしたと思えば振り上げられる。
さすがのアルクも二人を相手するのは大変で体の至る所に切り傷が増えていった。
[我流剣術・八重斬り]
アルクは周囲に八つの斬撃を放った。すると[八重斬り]の一つの斬撃がセイラの分身に当たり分身は消えた。
(にしてもこの剣術どこかで?)
とアルクはセイラの扱う聖剣流に覚えがあった。
だが思い出しそうで思い出せない。
[聖剣流・天の刃]
と、セイラが空中に向かって剣を投げると剣が増え、気づくと空中一杯に剣が増えた。
「降り注げ!」
そのセイラの掛け声と共に空中に漂っていた剣が一斉にアルクに降り始めた。アルクは剣を上に掲げると剣に風が纏い始め、その剣を地面に思いっきり突き刺す。
[我流剣術・竜巻]
するとアルクを中心に地面に突き刺した剣から竜巻が発生し[聖剣流・天の刃]を巻き込み周囲に飛ばし攻撃を凌いだ。
だがアルクもやられっぱなしは性に合わない性格で、今度はアルクから仕掛ける。
[我流剣術・炎突]
と、アルクは剣に炎を纏わせセイラ目掛け炎の刺突を放ったがセイラは全て剣で切断した。
[聖剣流・紫電一閃]
セイラは瞬間移動と見間違える様な速度でアルクとの距離を詰め胴を切った。だがアルクは剣の石塚で塞いだが、防ぎ切れず肩に切り傷が走った。
(やはりこの剣術どこかで?)
アルクはまだセイラの扱う剣術に覚えがあった。
(どこだ?……どこで?思い出せ。)
アルクは考えるので必死でセイラから目を離してしまった。
「何をしている!アルク!集中しろ!!」
と、目を離したアルクにセイラは叫んだ。
「思い……出した」
「どうした?」
「5年前魔物の死体の山で……」
アルクはそう言うとセイラは口角を上げて笑った。
「そうか……やはりお前が……」
セイラがアルクの正体を言おうとするとアルクは黙らせるかの様な剣幕でセイラを襲った。
「セイラさん。俺が白血鬼と言うことは黙ってくれませんか?」
と、アルクはセイラとの鍔迫り合いの時に小声で言った。
「なぜ?」
「俺の正体を知っているのは限られた者だけなんです。お願いしますね」
アルクはそう言うとセイラとの剣戟が始まった。
(セイラさんにバレたなら隠す必要はないか)
アルクとセイラの剣戟が終わろうとした時セイラは剣を逆手に持ち替えた。
[聖剣流・首狩り]
セイラはアルクの首を狙って横に一閃した。だがそれはアルクの剣によって塞がれた。
[アレキウス神滅剣・雷轟斬]
アルクは雷を纏った剣をそのまま滑らせ、セイラを斬ろうとしたが、セイラに腹を蹴られ強制的に距離を離された。
[アレキウス神滅剣・次元斬]
[聖剣流・伸斬]
アルクの放った[アレキウス神滅剣・次元斬]はセイラの伸びる斬撃によって塞がれ、伸びる斬撃がアルクの首を掠った。
すると翼の使用を許可するホイッスルが闘技場に響き渡った。
「どうするアルク君?」
「どうするとは?」
「お互い本気を出して終わるか、それとも翼を顕現しないで終わるか」
「そんなものお互い本気出して終わりたいな」
「そうか」
セイラがそう言うと詠唱を始めた。
[顕現せよ。刮目せよ]
セイラがそう言うと翼が生えた。
だがその翼の数が違和感を放っていた。
「なんと!セイラ様の翼の数は4枚」
「なんだと!するとセイラ様の光は……」
「ああ、間違いなく光翼騎士団団長レイラー=ブラウスと同じ神光だ!」
神光。それは光の中でも限りなくゼロに近い確率で生まれる、光の完全上位互換。通常の2枚の翼よりも飛行性能が高く、通常より強化された光魔法を撃てる。まだバルト王国内では光翼騎士団団長レイラー=ブラウスしか確認されていない。
アルクはセイラの神光を目の前にして全身に鳥肌が立って行くのが分かる。すると瞬きした瞬間、セイラの姿を見失いアルクの胴体に痺れる痛みが走った。
自分の体を見ると右肩から左脇腹まで切り傷が入る。
「どうした?まだ勝負は付いていないぞ。」
アルクの背後からセイラの声が聞こえた。
アルクは剣を地面に叩きつけ砂埃を起こしセイラとの距離を取った。
「さあ。君もフローランスとの戦いで使用した独自技能を使ったらどうだ?」
「そうだな。じゃあお言葉に甘えようか」
アルクがそう言うと魔力を解放した。
[独自身体強化術・羅刹]




