3ー20 アルク対セイラ
「なぁ、アルク……次こんな強い人と戦うのかよ。どうするんだ?」
「……まぁ気合と根性で頑張るわ」
「そんな単純な話では……」
「じゃあ、準備しに行ってくる」
と、アルクはグラウスにそう言うと選手控え室に向かった。
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(セイラさんの対策どうしようか)
アルクは選手控え室に着いてからずっとその事を考えていた。
(まずセイラさんの剣術はあの試合では観ていないし、魔法に付いても魔法消去しか出していない)
すると選手控え室の扉がノックされた。
アルクが扉を開けるとそこにはセイラが立っていた。
「セイラさん?どうしたんですか?」
「アルクくん単刀直入に聞く。君は白血鬼を知っているか?」
「っ!?」
「その反応知っている様だな」
アルクは内心とても焦っていた。
確かにアルクは白血鬼を知っている。
むしろ白血鬼がアルクだ。
だが白血鬼は限られた冒険者と学院長とグラウスとフローランスしか知らない。
それを何故セイラが知っている?
「白血鬼は名前だけ知っていますが、なんで?」
「いや、単純な話だ。君の剣術が白血鬼と似ているんだ」
「確かに前に一度会っただけで知り合いとかじゃありませんよ」
「そうか。まぁ良い。この試合お互いに楽しもう」
とセイラは自分の選手控え室に戻った。
セイラがアルクの選手控え室から出て行った後アルクは平常心を保とうとしたが内心はすごく動揺してた。
(危なかった!!)
アルクは選手控え室の椅子に座り再びセイラの対策を考えた。
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「それでは皆さんやって参りました!スキンティア学院闘技大会決勝戦!」
「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおお!」」」」
審判の声と共に闘技場内に大きな歓声が響き渡る。
「まず決勝は特殊ルールで15分の戦いが30分になります。…それでは戦う相手は平民でありながらここまで成り上がった選手アルク!」
と、審判がそう言うとアルクは闘技場に入場する。
「くたばれ!薄汚い平民が!」
「今すぐ失せろ!」
「恥ずかしくないのか?」
アルクが闘技場に入るや否や激しい罵声が飛んだ。
「そしてその平民アルクと戦う相手は闘技大会決勝戦常連!十魔剣第一席セイラ=スキルニング」
審判がそう言うとセイラもアルク同様闘技場に入場した。
「セイラ様頑張って下さい!」
「あの卑しい平民をボコボコにして下さい!」
「セイラ様美しい」
と、セイラを称える声がセイラに飛んだ。
「それでは闘技大会決勝を始めて下さい!」
審判がそう言うと闘技場内にホイッスルが響き渡った。
セイラは剣を抜いた瞬間、アルクは全身の鳥肌が立ち始めた。
セイラは剣を構えアルクとの距離を詰めた。
[聖剣流・七星剣]
セイラは瞬きの間に七つの斬撃をアルクに放つが、アルクは予測していた様な動きをし全て避ける。
[我流剣術・八星]
アルクは先程セイラの放った[聖剣流・七星剣]をお返しと言わんばかりの斬撃を返した。
だがセイラは避ける様な仕草をしなかった。
「はぁ!!!!!」
なんとセイラの威圧だけでアルクの[我流剣術・八星]をかき消した。
「まじか……」
アルクは距離を取ったがセイラがそれを許さなかった。
[聖剣流・地の剣]
とセイラは剣を地面に突き刺した。するとアルクの足元が突然隆起したと思えば地面から剣が生えた。アルクは避け切れずに右足に剣が刺さってしまう。だがアルクは空中に飛ぶのと同時に剣を引き抜きセイラに向かって投げた。だがセイラはアルクの投げた剣を殴って消滅した。
(この剣術……どこかで?)
アルクがセイラの扱う剣術に覚えがあった。だがセイラはアルクに考える時間を与えずに距離を詰め剣戟に挑んだ。
セイラは袈裟斬り、振り下ろし、回転切りを放ってきたがアルクは紙一重で避けセイラの腹に蹴りを入れ距離を取った。
「おいおい、聖剣流ってのはそんな荒いのかよ」
「聖剣流は生物を殺すために作られた剣術。殺すのに美しさなどいらないだろう?」
「それもそうだな」
セイラの言葉に納得したアルクは魔法陣を構築する。詠唱の要らない魔法に観客は驚いていたが、セイラは落ち着いていた。
[炎魔法・炎の槍]
アルクが魔法陣を構築し終えた瞬間、アルクの魔法陣が爆発した。
「どう……いう?」
アルクが再び魔法を打とうとしても魔法陣が消去されるか爆発する。
「何をしている?」
とセイラが聞いて来たがアルクは違和感を覚える。その違和感の正体を知る為に、アルクはセイラをよく観察する。
すると、その違和感の正体は直ぐに分かった。それはセイラの指先から魔力が残っていた。アルクは再び魔法を使った瞬間、セイラの指先から魔力が放出された。
(そう言う事か!)
アルクは何故魔法が使えないかその時理解した。
「あんた[魔法消去]を使ってるな」




