3ー18 アルク対フローランス3
[独自身体強化術・羅刹]
アルクがそう唱えると全身に巡らせていた魔力が一気に解放された。そして、一気に解放された魔力はアルクの体から溢れ出し、アルクの額に魔力で形成された二本の角が出現した。
「すごい……これが貴方の本気?これだけ離れていても、魔力を感じる!」
と、フローランスは驚嘆していた。
「行くぞ。フローランス」
アルクがそう言うとフローランスは剣を構えた。だがフローランスが瞬きをした瞬間、アルクの姿が消える。
「ぐっ!?」
するとフローランスの背中に重い衝撃が走った。
後ろを見ればいつの間にか、アルクがフローランスの後ろに居た。フローランスは急いで距離を取り魔法を放った。
[中級氷魔法・ダイヤモンドダスト]
フローランスは広範囲の氷の渦をアルクに放った。
だがそこにはアルクが居なかった。
フローランスが警戒していると、右側頭部に冷たい気配を感じ、フローランスは急いで身を捻る。
するとそこには剣を横に一閃したアルクが立っていた。
「くそっ。久しぶりにこれを使ったから体がまだ慣れないな」
と、アルクはそう言うとフローランスに殺気を放った。
[聖級氷魔法・絶対零度]
フローランスは危機を察知し[絶対零度の刃]を解きドーム状の魔法を使った。
「ちっ……」
アルクは[汎用魔法・飛行]を使い空中に飛び[絶対零度]を発動しているフローランスに向かって炎の斬撃を放った。
「無駄よ、アルク。この魔法はあらゆるものを凍……結……!?」
フローランスは話を中断し、アルクの放った炎の斬撃を防ぐ事に集中した。
通常[絶対零度]は生物、炎、水などあらゆる物を範囲内に入った瞬間凍る。
だがアルクの放った炎の斬撃は[絶対零度]の範囲内に入ったのにも関わらず凍っていなかった。
「な、なんで!?」
「燃えろおおおおおお!!」
するとアルクの放った炎の斬撃は遂に、フローランスに届き巨大な炎柱が発生した。
[神速流・流刃]
フローランスは剣を周囲に振り、アルクの放った炎の斬撃を乗り切った。だがフローランスは無傷では無く所々に火傷の跡が見える。
「どう言うこと?…なんでただの炎の斬撃は凍らずに、私に当たった?」
「フローランス。なんでただの純粋な身体強化だと思っているんだ?」
「それはどういう……まさか!」
「ああ、そのまさかだよ」
「あり得ない。身体強化で魔法の威力を上げるなんて!」
「簡単な事さ。全身に巡らせている魔力を解放したおかげで通常じゃあり得ない程の魔力量を消費出来るから魔法を撃てる。」
と、アルクとフローランスが話していると残り5分のホイッスルが鳴る。
「残り5分か……翼、顕現しないのか?」
「逆に聞くよ?こんな大魔法連発して翼を顕現出来るほどの魔力が残ってると思う?」
「それもそうだ……な!」
アルクは話が終わる瞬間にフローランスとの距離を詰め剣戟に挑んだ。[絶対零度]に単身で入ったアルクだが、大量の魔力で身を守っているのか、体は凍っていなかった。
切っては斬られ、防いでは塞がれ激しい攻防を続けた。
するとアルクは突如膝を地面に付ける。フローランスはその隙を見逃さずアルクに剣を振った。
だがアルクはギリギリで後ろに転がり避けた。
「どうやら貴方の魔力が少ないようね……ぐふっ!?」
フローランスは口から血を吐いた。
「それはお前もだろ?」
二人は今魔力が尽きかけていた。
この世界の空気中には魔素が漂っており魔力のない人間には毒だ。だがこの世界で人間が暮らすうちに魔力を体に秘め魔素に対する耐性が出来ていた。それが魔力だ。
つまり体から魔力が無くなることは魔素による耐性が無くなり死んでしまう。
「そろそろ終わりにしないといけないな……ゴホッ……」
「そうね……」
二人はそれぞれ構えを取った。
[神速流奥義ーーー]
[我流剣術・一ノ太刀ーーー]
フローランスは剣を引き腰を下げ突っ込む体制を取った。
アルクは刀を上段の構えを取った。
[ーー蒼天死突]
フローランスはそのままアルクに突っ込んだ。
だがフローランスの剣は余りの速さに周囲の空気を凍らせながら巨大なソニックブームが起こす。
[ーー無斬]
アルクは刀を縦に振った。
だが空気を斬る音がなくただゆっくりと刀を振った。
しかしアルクが刀を振り終えた瞬間、空の雲が切れ、地面が切れる。
フローランスの放った[蒼天死突]とアルクの放った[無斬]が打つかり巨大な煙と音と共に人が切れる音がした。




