3ー4 チルナ戦2
翼を完全に顕現したチルナは体の奥底から力と魔力が湧き出るのを感じた。
「行くぞ!アルク君!」
「来い!」
と、アルクはチルナを迎え撃った。
[雷剣流・攻の型・ひび割れ]
チルナは雷になる。いや、雷になったように見えたのだ。アルクは本能で危険を察知した。
[我流剣術・臥竜天災]
と、刀に風を纏わせて踏み込み地面を抉りながら刀を振った。
アルクとチルナの剣が交わった時、衝撃波を発生させる。
剣が交わった時アルクの腕の骨はひびが入り、チルナの腕は折れた。
通常この技は相手を吹き飛ばす事により本来、来るであろう反動を軽減している。だが、チルナを吹き飛ばす事に失敗したアルクは腕に激痛が走る。
だが、アルクの剣術の[臥竜天災]は剣に風を纏うので風圧で鎌鼬が発生しチルナの体を刻んだ。
しかし、チルナは[雷剣流・攻の型・ひび割れ]が弱まった時アルクに二刀流で攻撃をした。腕が折れているのにも関わらず。
アルクもチルナの攻撃をを受け流していると腕に鋭い痛みが入った。
アルクのヒビが入っていた腕が折れたのだ。しかしアルクは気にせずチルナと打ち込んでいると、チルナが体勢を崩した。
[風魔法・四壁断空]
アルクは風魔法を使いチルナを閉じ込める。
[炎魔法・炎の渦]
そのまま魔法を四壁断空に放った。外から見れば相手を閉じ込めるだけでなく大量の炎の渦を放ったそこは凄まじかった。
[光魔法・慈愛の檻]
と、チルナが唱えると四壁断空が消えた。
それだけではない。今まで怪我をしている箇所が回復している。チルナが再び構えるとアルクは違和感を感じた。
チルナの剣は一本しかない。
待て。一本?いやチルナは今まで二刀流だった。
チルナの扱う剣術は二刀流だが一本しかないのだ。
いや違う。
そこでアルクは思い出す。
一本は黒く、もう一本は白い。
「すごいな。私が使う剣が見えるなんてな」
「イヤ、こっちも最初はもう片方を見失っていた。どういうことだ?」
「何。簡単さ。まずこの白い剣は周囲の景色に溶けやすく見失いやすい。そしてのこの黒い剣は目立つ」
何となくチルナの言いたい事が分かってきた。相手が目立ちやすい黒い剣を警戒して周囲の景色に溶けやすい白い剣で相手を切る。
「そう言う事か」
「にしてもすごいなアルク君。これを初見で見破るなんて」
「いや、こっちもいつ色が変わったのか分からなかった」
「そうか。実はこの剣は我が家に代々引き継がれた剣でな。光魔法に反応する魔剣なんだ」
魔剣。魔法に反応し、魔法の威力の底上げや魔力の内臓量が増える。なお、それは魔剣の種類によって効果は変わる。
「まぁ、話はここまでにしよう。時間が無くなってしまう」
と、チルナはアルクに詰め寄り再び剣を交えた。
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闘技大会を見ていた観客は目の前に繰り広げられている戦いを完全に楽しんでいた。
「なぁ、アイツは何者だ?……何故雷帝のチルナと互角に渡り歩いてる?」
「アイツは前に編入してきた奴だな。確か平民だとよ」
「いや。いくら平民だとしてもあの雷鳴……十魔剣のメンバーに……」
「やっぱりお前も気になるか」
と、観客話していた。
確かに一般の平民と貴族では強さが違う。
平民は財産が少ない上に血筋が複雑になっている。
一方貴族は財産があり血筋、つまりそれぞれの名家の上位の者が結婚する政略結婚で貴族の一人一人の能力が高い。
しかし稀に平民でありながらアルクの様に能力の高い平民が生まれるが、身分の違いによりその平民の能力が評価されない。
「まさかこんなに強い平民がいるなんて信じられない」
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一方、アルクとチルナは激しい攻防戦を繰り返していた。
攻撃しては防がれ、攻撃されては防ぎを繰り返している。
しかしアルクの斬撃がチルナの右腕を掠めた。しかしアルクは攻めず距離を取った。
[我流剣術・真空斬]
と、言うと何も無いはずの空間だった筈だが、チルナの右腕の擦り傷が広かった。
「アルク君、一体何をした?」
「今のは魔力を乗せた斬撃を使って擦り傷に魔力を残した。そして、擦り傷に残った魔力を使い、一瞬だけ空気を消し真空状態にする。そして、空気は真空状態の所に空気が入りソニックブームが起こる」
「すごいな……くっ……」
チルナの翼が消えた。
「どうやら、私が限界だ」
「いや、こっちも両腕が折れてる上に魔力が少なくなってきた」
「本当に私は君が怖いよ。翼が無いのにこれほどの魔力量。本当に怖いよ」
「褒め言葉として受け取るよ」
「うん、そうしてくれ」
チルナは再び翼を展開してアルクに迫った。
アルクはこのままだと負けると判断して身体強化魔法を使いチルナと剣を交えた。
「すごいな。ここまで来て更に強くなるのか」
「伊達に冒険者をやってるわけじゃ無いからな」
[雷魔法・雷の怒り]
と、チルナは上位雷魔法を打った。
(まだ上位雷魔法を撃つ魔力持ってんのかよ!?)
アルクはここに来て上位雷魔法を打ってくる事を予想してなく、正面から当たってしまった。だが、アルクは煙の中から立ち上がった。魔法を塞いだのか影響か左腕が焼けていた。
しかしチルナは違和感を感じた
(何故?……何故正面から放ったのに左腕しか焼けていない?)
[炎魔法・炎の槍]
と、チルナは考えているとアルクは魔法を放った。
しかしチルナは避けて構えを取った。




