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8-1 緊急依頼

 マガツヒ。それはバルト王国の遥か西に存在する島国であり、計4つの島で構成されている。マガツヒでは貿易が盛んでは無く、唯一バルト王国と貿易をしている。島国である事から特殊な文化や特殊な武器が生まれており、刀と呼ばれる剣は観賞用にも高い評価と評判を持っている。


 そんな島国であるマガツヒでは国を揺るがす大事件が起きていた。それはこの世界に存在する七つの聖具の一つである炎の聖刀が闇に染まり始めていると言う事だ。


 七つの聖具とはこの世界に存在する強大な力を持った武器であり、バルト王国光翼騎士団団長であるレイラーが持っている光の聖剣も七つの聖具の一つにあたる。


 炎の聖刀が闇に染まり始めている事はまだ他国には広がっておらず、まだマガツヒ国内に留まっている。だが、他国に知れ渡るのも時間の問題だ。


 マガツヒの首都オワリに置かれている城で、それぞれの大臣が集まり言い合いをしていた。


「殿よ!どうかご決断を!今こそ鎖国令を出すべきでございます!」


「待て!マガツヒではバルト王国の貿易に大きく依存している。鎖国をした場合、食糧難や物資難は免れないぞ!」


「だったらどうするんだ!炎の聖刀が他国に、特に聖ミリス皇国に伝わればこの国に宗教介入が起きてしまう!」


「落ち着け!」


 大臣の言い争いに嫌気を刺したマガツヒの王は大臣達を黙らせる。すると、言い争いで熱くなっていた大臣達は一斉にマガツヒの王に首を垂れる。


「鎖国令は出さん!これは民の生活を考えてだ。そして陰陽連に聖刀の抑制をする様に命令しろ!浄化は聖ミリス皇国に依頼する」


「よろしいのですか?聖ミリス皇国に依頼した場合、外部に漏れる可能性があります」


「勿論それは知っている。だが、隠した結果今よりも悪化した場合が厄介だ。ならば早い段階でやった方が良い……他に何か話のある奴はいるか!」


 マガツヒの王は大臣達に問いかけるが返答は無く、話し合いはそのまま終了した。


 だが、大臣とマガツヒの王共にやるべき事が多かった。


 大臣達は陰陽連への連絡から、それぞれの都市への情報統制、炎の聖刀が保管されている洞窟への立ち入り禁止。


 マガツヒの王では聖ミリス皇国への現状説明から、ミリス教徒を迎え入れる為の計画を立てる。


 聖ミリス皇国への連絡の手段は二つある。


 一つ目は文通。だが、文通は非常に時間が掛かってしまうため、する必要がない。


 二つ目は陰陽連の力を使った交信だ。


 マガツヒの国民は魔力を体内に有しているが、この世界に漂う魔素から身を守る程度しかない。だが、1000人に1人の確率で魔力を多く有している子供が生まれる事がある。


 生まれた場合、魔力の使い方を教わる為、陰陽連へと強制的に入らされる。そして、陰陽連へと入らされた子供達は魔力の扱いから魔物の対峙の仕方など多くの事を学ぶ。


 そして、15歳になれば陰陽師として魔物や炎の聖刀の管理などを任される。


「殿。お呼びでしょうか?」


「来てくれたか。早速で悪いが聖ミリス皇国の教皇に繋げてくれんか?」


「御意」


 マガツヒの王の部屋に通された陰陽師の青年はミリス教皇であるサハルへと魔力を飛ばす。陰陽師の青年から見て、数多くの障害物や途中で別の人間に魔力が繋がりそうになったが、教皇サハルへと魔力を繋げる事に成功する。


『声は届いているか?』


『この声……もしかしてマガツヒの王であるオダか?』


『そうだ。久しいな。積もる話はあるが単刀直入に言おう。我が国が保管している炎の聖刀カグツチが闇に染まり始めている。事態が深刻になる前に何人か送ってくれないか?』


 炎の聖刀が闇に染まっている事を聞いたサハルは驚いたのか、椅子が倒れる音がした。


『それは本当か!分かった。それじゃあ今すぐに送る者達を集める。それまで耐えてくれ』


『それは助かる。宿やその他諸々の手配はこちらがする』


 ある程度、連絡し終えると陰陽師の青年は魔力を流すのを止め、そのままマガツヒの王の部屋を出て行った。


(取り敢えずこれである程度は解決したが……よりによって何故私の代で闇に染まり始めた?)


 オダと呼ばれたマガツヒの王は炎の聖刀に関する多くの書類を取り出し、目を通す。


 炎の聖刀ガクツチは元々普通の刀であった。だが、炎の精霊が刀に宿った事でその刀は炎を出せるようになった。


 オダは多くの書類に目を通したが、どれも似たような内容ばかりで意味がなかった。


 ため息を吐いた後、再び本棚へ向かう。すると、本棚の奥の壁が一部だけ朽ちている部分があった。


 オダは周りに誰も居ない事を確認した後、朽ちている壁に手を伸ばす。意外にも朽ちている壁は柔らかく、簡単に壊す事が出来た。


(これは……紙?本か?)


 オダは壁の中に一枚の紙を発見し、それを取り出す。取り出した紙は他の本と比べ虫食いが酷かったが、辛うじて読む事が出来た。


『これを呼んでいると言う事はカグツチが闇に染まっていると言う事だろう。正直に記そう。ガクツチが刺さっている下には強大な闇を封じている。このまま放置すればこの国は滅んでしまう。だが安心してくれ。カグツチの真の主人が現れれば全てが解決する。だからどうにかしてカグツチの真の主人を探してくれ。最後にこれだけは言わせてくれ。面倒事を後世に残してしまって済まない。だがこの面倒事が解決すれば全て良い方向に動く。だからどうにかそれまで耐えてくれ』


 そして、紙の最後には人名らしきものが書かれていたが、見たことの無い言語で書かれていた為、誰が書き残したのか分からなかった。だが、少なくとも何世代か前のマガツヒの王が残した物であると考えられる。


 オダは紙を懐に仕舞い、炎の聖刀について更に知ろうと動き出した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 アルク達がクプ二村に帰還してから一週間が経った。既にリラやイレナ、白蜘蛛の疲れは完全に取り除かれ、クラシスとレイリンと特訓をしていた。


 リラと白蜘蛛はレイリンと共に近接戦闘、アルクとイレナは闇や魔法の使い方を教わっていた。


 アニニマで本来の姿へとなったリラは強大な力に困惑しながらも次第に力に馴染んでいった。その実力はアルクでさえも追い詰める程だ。


 反対にクラシスの特訓の下、闇の使い方を学んでいるが一向に上達する気配がない。それとは対照的にイレナは光の使い方が上達していた。


「なんで……俺には闇の適性が無いのか?」


 周りが強くなっていきアルクは焦っていた。


 このままでは足手纏いになってしまう。そんな考えが思考を埋め尽くしていた。


「そんなに焦る必要は無いと思うわよ。だってあなたの翼片方だけじゃない?片翼であれだけの力はむしろ怖いわ」


「そうか?だったら当面の目標は両翼の展開だな。アレスの野郎……さっさと俺に全部渡せばいいのに……」


「まぁまぁ。それにまだ闇は完全に動いてないからゆっくりで良いわよ」


「それもそうだな……でも俺の予想だとそろそろーー」


 アルクは何か言いたそうな顔をすると、クラシスが自室から飛び出してくる。どうやら予知夢を見た様だ。


「お前達!今すぐマガツヒに行って来い!魔法陣は全て私がやるから!早く!」


「待て待て!落ち着け!まずはマガツヒで何をするのか先に言え!」


「そうだな。ふぅ……ふぅ。マガツヒに行って炎の聖刀を引き抜いて来い。以上!それじゃあ送るぞ。行く奴らはアルクとリラだ!イレナと白蜘蛛は特訓させる!」


「はぁ!?分かったから少し待ってくれ!」


 アルクとリラは突然の事に困惑しながら、必要な荷物をバックに詰め込み、転移魔法陣の中へと入る。


「それじゃあ送るぞ!炎の聖刀を引き抜けたらクプ二村へ強制転移させる!頑張って!」


 クラシスはそう言うと、二人をマガツヒへと転移させた。


「えっと……お母様?せめて私には説明してください」


「そうね。私も突然の事で驚いていたわ。お茶を飲みながら説明しましょう」


 クラシスはどんな予知夢を見たのかイレナに説明し始めた。

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