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7ー23 予期せぬ再開

 ラクジャが正気を取り戻した翌日、アルク達は集まってこれからのことについて話し合っていた。


「俺から言うぞ?最初に考えたのはラクジャを利用して衛兵共を使うつもりだ。そうすれば始祖神獣を見つけるのが楽になる」


「その事なんだが、アルク。それは出来なくなった」


「何でだよ?」


「これを読め」


「これは?」


「外にいる俺の冒険者仲間が鳥を通じて持って来てくれた」


 アルクの提案に反対したハリスは一枚の紙をアルクに渡す。渡された紙を見たアルクは天井を仰いだ。気になったアポロンはアルクから紙を奪い、目を通す。


「はぁ!?ミリス教徒が太陽城を襲撃して衛兵達を殺した!?」


 紙の内容を見たアポロンは衝撃のあまり叫び、ドルフィラとラプターを驚かせた。


「どういう事ですか、アポロン様!あの者達が理由も無しにこんな蛮行をする可能性がありません!」


「そうだぜ!俺も少ししか話さなかったが悪い奴らじゃ無かったぞ!」


 アポロンはドルフィラとラプターに紙を渡し、内容を読ませる。ラクジャはミリス教徒がアニニマに来た事実を知らなかったのか、ハリスに説明されていた。


 イレナはアルクの近くにより、紙に書かれた内容について相談していた。


「アルク。これはどういう状態だ?」


「分からない。けど考えられるのは衛兵共が帝国のゴミに操られた可能性が高い。なんせラクジャを10年間も洗脳してたんだら可笑しくない」


「じゃあどうするんだ?このままだと迂闊に外を出歩けないぞ」


 ラクジャ達は外の状況に付いて話し合い、アルクとイレナはこれからどうするか話し合っていた。すると、リラが口を開いた。


「ちょっと良いですか?少し前にご主人とイレナさんが地下牢から助け出した獣人に頼るのはどうですか?」


 その言葉にアポロンと族長二人は顔を見合わせた。アルクとイレナが助け出した地下牢に閉じ込められた獣人とは、夜狼族迫害に反対した事により地下牢に閉じ込められた獣人達だ。


「そう言えば言ってたわ。外に仲間がいるって。でも規模が分からないわ」


「それなら大丈夫だ。反迫害派は俺が作ったんだからな。早速外に居る仲間と連絡を取ってみよう……だがどうやって連絡を……」


「それなら俺に任せてくれ。俺の仲間に鳥を飼ってる奴がいてな。そいつなら連絡を取れるぞ」


「本当か!それじゃあ今すぐ書くから少し待っててくれ!」


 アポロンはリラから要らない書類を受け取り、一部を破いてこれからどうするかを書く。そしてその紙をハリスの仲間の鳥に咥えさせ、指定の場所に行くように頼んだ。


「所で帝国の人間はどんな奴なんだ?顔を知っているのはラクジャ王だけだったんだが……ラクジャ王。奴の顔は覚えてるか?」


「それは覚えている。子供の様な幼い外見をしていた。他にも見てる奴は居ないか?」


「顔なら俺とアポロン、それにドルフィラも見てる筈だ」


「そうか。なら話は早い。あの人間は俺に殺させろ」


「ラプターお前が?」


 アルクはラプターの顔を見ながら言う。すると、微かにラプターの手が血で滲んでいる所を見る。


「そうだ。単にムカつくのもあるが一番は我等獣人族を見下しているのが気に入らない」


「別に良いが……もし殺したらアニニマが大変になるぞ」


「何故だ?まさか報復されると思っているのか?」


「それもあるが……ラクジャが説明した方が簡単だろう」


「そうだな。アルクが言っていた大変な事は世界情勢になる」


「世界情勢?すべて帝国が仕組んだことなのに?」


「そこなんだよ。確かに我々は帝国が全て仕組んだことを知っている。だが奴らが証拠を残している訳がない。ラプターだって知っているだろう?徹底した妨害工作で証拠すら残さずに国を操った歴史を持つ帝国を」


「た、確かに……」


「それに帝国と同じ考えの国が幾つもある。それらを相手に世界情勢と報復をされたら大変だ。だから出来れば帝国の人間を殺すのは第三者。つまりアルクかイレナにして貰った方が都合が良い」


「そういう事だ。後帝国の人間からの貰い物はあるか?」


「あるが……出した方がいいか?」


「ああ。持ってる奴は全員ここに出してくれ」


 すると、ラプターは腕輪。ドルフィラはネックレスを出した。


「それ全部、帝国の人間が洗脳に使う道具だから壊せ」


 そう言った瞬間、ラプターは腕輪を握り潰す。だが、ドルフィラはネックレスを引き千切ろうとするが力が足りずに苦戦していた。見かねたハリスはドルフィラからネックレスを奪い取り、代わりに破壊した。


「おお。気が効く男」


「立てるなアルク」


「冒険者だったら何か出ると思ったが……無理だったか」


「当たり前だ。お!どうやら返事が来た様だぞ」


 ハリスは窓のある方向に向かう。するとそこには別の紙を加えた鳥が居た。


「返事が来たみたいだが……なんだこれ?暗号か?アポロンは分かるか?」


「見せてくれ……これか。しばらく待っててくれ」


 アポロンは紙に書かれた暗号を解き始める。アルクは横で暗号を解いているアポロンを見ていたが、暗号に身に覚えがあった。


「これって神語か?」


「なんで分かるんだ?」


「ちょっと神語を知ってる知人がいてな。そいつに少し教えてもらったんだ」


「そうか……良し!解読が終わったぞ!指定の場所は太陽の広場地下だ!」


 地下。その言葉だけでアルクは既視感を覚えた。アニニマの地下と言えば、一度だけ情報屋に訪れただけだった。

 

「地下だと?待て、アポロン。俺の知ってる限りそんな所に地下なんて作らせた覚えないぞ?」


「当たり前だよ父さん。何せ父さんに内緒で反迫害派の宝土竜族が勝手に作った地下なんだから。取り敢えずそこに行けば仲間に会えるから行こう」


 アポロンの提案にアルク達は承諾し、ある程度準備を終えると太陽の広場にある地下に向かう事にした。


 だが、ここで問題が一つ起こった。それは余りにも人数が多いという所だ。現地点では九人と絶対に目立つ人数にまでなってしまった。


 人数配置をどうするか考えていたアポロンだったが、ここでドルフィラが提案をした。


「私とラプターは一度離れたいと思います」


 提案したのはドルフィラとラプターは太陽な広場地下に行かない事だった。


「ちゃんと理由はありますよ?初めに人数が多い事。それに族長二人が居なかったら部族のみんなが心配します!」


「分かった。ハリスはどうする?このままアルク達と一緒に動くか?」


「じゃあ俺は仲間の冒険者に合流するからここでお前らとお別れだ。アポロン。頑張れよ」


「お前もな!」


 アポロンとハリスはアイツ握手を交わし、ドルフィラとラプターと一緒に屋根裏部屋から出て行った。


「ここに残ったのは父さんと……アルク達か」


「なんで元気が無くなるんだよ?」


「それがな……言うのは初めてだが今から向かう場所にはミリス教徒も居るみたいなんだよ」


 ミリス教徒。その言葉を聞いたアルクは真っ先に太陽城で戦った聖騎士を思い浮かんだ。もしこのまま合流すれば殺し合いになるのは目に見えている。


 だが、合流しなければ何も収穫は得られない。


「大丈夫だろ。それにあっちにはセイラさんも居るんだ。なんとかなるさ」


「本当か?なら良いが……」


「って言うかそっちも大丈夫なのか?聞いた話だと反迫害派はラクジャを敵視してるみたいな事言ってたろ?」


「大丈夫だ。何故なら俺はアイツらから一番信用されてるからな!」


「じゃあ良いが……ラクジャ!お前は余計なこと言うなよ?」


「うぇ!?いきなり話をこっちに振るな」


 いきなり話の矛先をラクジャに回され、油断していたラクジャは飲みかけていた水を噴き出してしまう。


「緊張もほぐれたと言うことで……太陽の広場地下に向かうぞ!」


 アポロンはそう言うとフード付きのローブを被り、屋根裏部屋の窓から飛び降りる。ラクジャやアルク達もアポロンの跡を追うために窓から飛び降りる。


 通常なら飛び降りた時点で徘徊している衛兵に見つかってしまう。だが、アルク達が身に纏っているロープは太陽城の外壁と同じ色をしている為、目立ちにくくなっている。


「アポロン!場所は分からないからお前が先導してくれ!」


「元からそのつもりだ!ついて来い!」


 地面に着いたアポロンは慣れた動きでアルク達を太陽の広場へ案内する。途中で何人かの衛兵とすれ違うが、反応が返ってこない。それどころか生気のない顔をしており、警備などしている状態ではなかった。


「アルク……こいつら……」


「知ってる。けど対処するのは今じゃない。放っておけ」


「わ、分かった……」


 アルク達はは衛兵達が既に操られ、敵の支配下にあっているのを気付いていた。だが、現状では成す術が無いことを自覚しており、無視をするしか無かった。しばらくすると、噴水のある広場に辿り着く。


 アポロンは広場の噴水を一定の間隔で叩く。するとどこからか響くような音が鳴り始める。


「進むぞ。ついて来い」


 アポロンはそのまま噴水の中に入って行く。すると、どんどんアポロンの体は噴水の中に沈んで行き、最後には完全に噴水の中へと沈んでいった。


 それは見たアルク達は多少迷ったものの、ラクジャを先頭に進んで行った。


 外から見たら分からないが、噴水の中央に階段が開いていた。恐らく叩く音で内部を反響させ、階段を隠していた床を移動させたのだろう。


 階段を続く限り降って行くと、見た事のある水路に辿り着く。


「アポロン。もしかしてトルソって奴を知ってるか?宝土竜族の奴なんだが」


「トルソを知っているのか!アイツは反迫害派で貴重な情報収集係でな!常に優秀な情報を持って帰ってくれるんだ!」


 話しながら水路を進んで行くと、アポロンは突然立ち止まり、壁に手を触れる。


 アポロンは壁に触れた手に力を込めて、壁を押し出す。すると、何も無かった壁に扉が現れる。


「これを下ったら基地に辿り着く。進むぞ」


 アポロンはそのまま階段を下り、アルク達も後を追おうとした。その瞬間、階段の下から一筋の光がアルク目掛けて飛んでくる。


 ギリギリの所でアルクは避ける事が出来たが、階段の下から何人かの足音が聞こえ始める。


「止まれ!何故ここに闇の使徒がいる?そのまま大人しくしていろ!おかしい動きをしたら殺す!」


 階段から現れたのはミリス教の聖騎士だった。そして、もう一人の聖騎士がやって来るが、身に覚えのある顔をしていた。


「落ち着け。それにトルソが言っていたろ?ここに来るのは仲間しか居ないって」


「しかし闇の使徒ですよ?まさか闇の使徒も仲間だと思ってるんですか!?」


「そうじゃない。とにかく話だけでも聞こう」


「……分かりました」


 女の聖騎士に宥められた男の聖騎士は渋々抜いていた剣を鞘に仕舞い、階段を下って行った。


「やぁ、アルク。さっき振りだね」


「セイラ……」

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