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7-17 太陽城突撃1

 アルクは襲い掛かって来る聖騎士達を殺さない範囲で攻撃する。だが、殺さない範囲と言っても相当な威力をしており、聖騎士が来ている鎧はアルクの拳によって粉砕している。


(それにしても……数が減らないな……)


 アルクは聖騎士達の数が減らない事に気付く。鎧が砕けるほどの攻撃を受けてなお立ち上がる、襲い掛かって来る。それに加えて、離れた所から攻撃魔法を放つ聖騎士もいる。


 一度体制を整おうとするために、アルクは飛翔しようとするが見えない天井にぶつかる。


「聖域!?いつの間に!」


 見えない天井。それは[光魔法・聖域]によって作られた結界だった。今までは長い詠唱と眩しい光によって[聖域]がいつ発動するのは判断が出来た。だが、今回は詠唱している者も居らず眩しい光も無かった。


「ここはバルト王国の兵士とは違って聖ミリス皇国で選び抜かれた聖騎士達だ。魔法の練度は遥かに高いぞ」


 セイラの言う事は正しかった。アルクと戦い魔法を騎士を守る前衛。中距離で前衛の騎士を援護する中衛。後ろから攻撃魔法を放つ後衛。統率力はとても素晴らしい物であった。


 アルクはこのままだと劣勢になると判断し、風龍剣を取り出す。


「手足の一本や二本は覚悟してもらうぞ!」


 アルクはそう言いながら風龍剣を振る。だが、本来なら出るはずの風の刃が出なかった。その隙を聖騎士達が見逃すはずも無く、大量の魔法がアルクを襲った。


 アルクは自身の身を守る為に魔防壁を発動しようと魔法陣を構築する。だが、構築された魔法陣が崩れ魔防壁が発動しなかった。


 聖騎士達の放った魔法は何の防御もしていないアルクに降り注いだ。アルクに降り注いだ魔法は大量の土埃を作りながら地面に直撃していく。


 土埃が晴れると、黒い翼で身を守っているアルクがいた。だが、防ぎきれなかったのか幾つもの破片がアルクに刺さっていた。


「よりによって[反魔法]を使ってくるか……」


「そりゃそうだろう?お前の魔法の腕がどれ程か私は知っているからな」


 反魔法。それはありとあらゆる魔法効果を打ち消す。その為、相手の魔法陣だけでなく魔道具ですら使えなくなってしまう。


 それに加えて、目の前にいるセイラは反魔法の使い手である。


「そうかよ……じゃあ全力でやってーー」


「アルク!大丈夫か!!」


 そんな声が聞こえた瞬間アルクは上を見る。すると、イレナが勢いよく太陽城を囲っていた[聖域]を突き破り、アルクの前へ降りた。


「イレナ!龍魔力は回復したのか?」


「そりゃあバッチリ!所で目の前の兵士達は全員敵か?」


「そうだ!だが殺すなよ?」


「殺しはしない。殺しはな」


 イレナはそう言うと地面を勢いよく殴り、聖騎士達の足場を崩す。


「中の様子は大体分かった。反魔法の使い手を先に潰す。援護出来るか?」


「もちろん!白蜘蛛も頼んだ!」


「ハイ」


 イレナは魔法陣の構築を邪魔しているセイラを気絶させようと走り出す。聖騎士は突然現れた竜人に戸惑いながら、セイラを守る為に立ち塞がる。


「邪魔だ!」


 イレナは聖騎士達を数人纏めて殴り飛ばす。イレナは龍であり、馬力も腕力も人間と比べて桁違いに高い。


 そして、セイラを守る為にイレナの前に立ち塞がった聖騎士達を全員殴り飛ばし、本命であるセイラを攻撃する。


 流石のセイラもイレナの戦いを見ていた為、防御しないと危険だと判断し、反魔法を解除して防御に回る。


「やれ、アルク!」


[闇魔法・暗黒領(ダークテリトリー)


 アルクは魔法陣を地面に大きく展開する。すると、[聖域]と被るように黒い結界が太陽城を囲む。


 イレナの攻撃を避けていたセイラは突然体が動かなくなり、影から大量の腕が生まれセイラを掴み、拘束した。


 イレナによって殴り飛ばされた聖騎士達を見ると数人は白蜘蛛の糸によって拘束され、残りは影の手によって拘束されていた。


「これは勝ったのか?」


「そうだ。それも誰も死なないで聖騎士を無力化出来た。後はリラの頑張り次第だ。」


 二人は戦いが終わったと思い休憩しようとする。だが、そこへ獣人の衛兵が大勢やって来るが、何も知らない獣人は[暗黒領]に入った瞬間に影の手によって拘束されてしまう。


「そうするんだ?このままだと獣人共がずっと来るぞ?」


「じゃあリラと一緒に太陽城の中に入って観光と行くか?」


「それもアリだな!」


 アルクとイレナは獣人の衛兵を振り払うために太陽城の中へと入ろうとする。


「待て、アルク!お前はここで何をするつもりだ!」


 セイラはアルク達がアニニマで何をするのか一か八か聞く。


「そうだな……それじゃあ貴方にだけ教えますね。俺達がアニニマに来た理由は黒暗結晶もありますが一番の目的は神獣の解放です。それじゃあ!」


 アルクはそれだけ言うと太陽城の中へと入って行った。


 太陽城の中身は流石と言うべきだった。太陽城の中は大理石で作られており、天井に吊るされているランプは黄金で出来ていた。

 

 しばらく太陽城の中を走っていると、衛兵に拘束されて連れられたハリスを思い出す。


(一応手伝ってもらった恩もあるしあるかどうか分かんないけど助けるか)


 アルクはハリスを救出する事を決める。


「イレナ。協力者が捕まってしまってな。助けに行って良いか?」


「別に良いぞ」


「助かる」


 そこで牢獄に続く道がどこにあるのか知る為に、偶然通りかかった獣人を捕まえて聞く。そして、牢獄に続く道が丁度目の前の扉である事を教えてもらった。


 アルクとイレナは警戒しながら薄暗い階段を降りる。しばらく階段を降りると牢獄が見えて来た。


 地下牢は想像よりも大きく、蝋燭を少し掲げるだけで大勢の獣人が捕まっている事が分かる。


「ハリス!どこにいる!」


 ハリスがどの牢獄に入れられているか分からなかったアルクは適当に声を掛ける。


「アルク!?ここだ!開けてくれ!」


 奥の方から捕まった獣人を押し避けながら、牢獄の前までやってくる。


「ハリス。助けに来るのが遅くなって済まない」


「大丈夫だ。隣のは探してた仲間か?」


「そうだ……ここにいる獣人達はなんで捕まったんだ?」


 牢獄に入れられた獣人達を見て、アルクは当初何かしらの犯罪を犯したのかと考えた。だが、太陽城の地下牢は特別な理由でしか入れられない。


 実際にハリスはアルクに協力した事で太陽城の地下牢へ入れられている。


「こいつらは夜狼族迫害に反対してた奴らでな……そうだ!お前にこいつを紹介したいんだ!」


 ハリスはアルクに一人の獣人を紹介するが、紹介された獣人を見てアルクは驚いた。何故ならその獣人が陽獅族であるからだ。アルクは陽獅族の獣人の中性的で長い髪を持っている事から女性だと考えた。


 陽獅族は獣人の中でもトップに立つ部族であり、戦闘能力も知恵もある。そして夜狼族迫害を提案した部族であり。


 その部族が夜狼族迫害に異議を唱えて地下牢に入れられているのだ。


「お前の事はハリスから聞いている。私はナルニア=アポロン。ラクジャ=アポロンの息子だ」


 陽獅族の獣人、アポロンはそう言うとアルク含め周りの獣人は驚く。陽獅族の獣人が地下牢に入れられるならまだしも王族が地下牢に入れられるのは前代未聞だ。


「あ、あんた……いや、あなた様がアポロン様だったのですね。今までのご無礼をお許しください!」


 今まで一緒に地下牢に入れられていた獣人が王族である事を知ると、周囲の獣人達は地面に膝を着いた。


「そんなにやらなくていい!今は同じ夜狼族迫害に異を唱える仲間ではないか」


 アポロンは困りながら地面に膝を着く獣人達を起こそうとする。


「アルク。取り敢えず俺達を地下牢から出してくれないか?」


 ハリスの言葉にアルクは風龍剣を取り出し、地下牢の柵を切り落とす。


 地下牢に閉じ込められていた獣人達はようやく地上へ出れると分かり、歓喜の声を上げる者、長い間地下牢に閉じ込められこれからどうしようか悩んでいる者もいた。


「それで?これからどうするんだ?」


「そうだな……俺はアポロンを連れてラクジャの所に行くつもりだ」


「それなら既に仲間の夜狼族が向かってる。行くなら急いだ方が良いぞ」


「それは本当か!?ハリス、急いで父上の所へ向かうぞ!」


 話を聞いたアポロンは父であるラクジャの下へ急いで向かって行った。


「ハリスも行ってやれ。俺は……色々とやっておく」


「分かった」


 ハリスが地下牢から出た事を確認すると、残りの獣人達に目をやる。


「お前達はこれからどうするんだ?ここを出るんだったら手伝うが」


 ここにいる獣人達は夜狼族迫害に反対していた者達だ。恐らく混乱に乗じて何かしらする筈だ。


「私達は外に居る仲間達の所へ戻りたいです。勝手なお願いですがアポロン様の事をお願いします」


「分かった。イレナ、こいつらを外に出しててくれ。俺は太陽城の中で色々とやっておく」


「色々?まぁ分かった」


 イレナはアルクの頼みを快く引き受け、捕まった獣人達を外へ案内する。


 対してアルクは地下牢を出てからゆっくりと太陽城の中を歩く。通路にはリラがやったのか獣人の衛兵が至る所で倒れていた。


 しばらく歩いていると、3人の獣人がアルクの前に立ち塞がった。


「やっぱり来たか……その身なりとしては族長だな?」


 アルクの前に立ち塞がった獣人達は服装などからして族長だと判断する。


「いかにも。俺は鬼猿族族長のウーコン」


「空鳥族族長、ガルーダ」


「私は月兎族長、ルナワラ」


 3人の所属している部族を聞いて、アルクは面倒な相手が来たと思った。


 何故ならこの3部族は陽喰族から力を奪った中心の部族だからだ。


「今更族長どもが何のようだ?もしかして夜狼族を捕まえに来たのか?それにしちゃあ対応が遅いが……三人で酒でも飲んでたのか?」


 アルクの言う通り族長達の対応が遅すぎる。突然の襲撃に準備が遅れのか。それとも夜狼族であるリラよりアルクを目標にしているか。


「まぁ俺達の役目は力の確認とお前の始末を任されているだけだしな」


 どうやらアルクを待つ為にわざとリラを無視していたようだ。


 それに加えてウーコンは気になる事を言っていた。


(力の確認……もしかして陽喰族から奪った力を一度も使った事がないのか?)


 いや。そんな事よりも一つ気掛かりな点がある。それは空鳥族族長についてだ。前に空鳥族領で出会った族長はコアと呼ばれていた。だが、今はガルーダと呼ばれる黒い空鳥族だ。


「空鳥族族長は代替わりでもしたのか?」


「空鳥族族長は今も昔も僕だ。貴様が出会ったのは僕の影武者だよ」


 ガルーダはそう言うと背中の翼から羽を一枚毟り取り、剣のように次第に大きくなる。


「念の為に聞くが戦わないと言う選択肢は――」


「「「無い!」」」


 三人の族長はタイミング良く言うと、一斉にアルクに襲いかかる。


 鬼猿族のウーコンは槍のよう武器。空鳥族のガルーダは剣のような羽。月兎族のルナワラは足でアルクを仕留めようとする。常人なら間違いなくこれでやられるであろう。


 だが、アルクは三人の攻撃を全て見切るだけでなく反撃もする。


 三人に反撃することに成功するが、アルクはまだ油断しない。何故なら族長達は陽喰族から奪った力を隠し持っている。それに加えて獣人族が陽喰族から奪った力を使っている所を見たことが無い。

 

 ウーコンは体を起こすや否や直ぐにアルクに襲い掛かる。鬼猿族は高い機動力と長い手足による攻撃が得意だ。そして、全体的に鬼猿族は長い手足から必然的にリーチの長い武器を使うようになっている。


 リーチの長い槍から繰り出される素早い突きをアルクは最小限の動きで回避しながら、再び向かってくるガルーダとルナワラを警戒する。


 アルクはこれ以上戦いを長引かせるのは得策ではないと判断し、先にウーコンを仕留める事にした。


 風龍剣の風の刃でガルーダとルナワラを牽制しつつ、ウーコンの懐に潜り込もうとする。


「ウーコン!逃げろ!」


 アルクのしようとする事を瞬時に察知したルナワラはウーコンに逃げる様に指示をする。だが、指示を下すまでは良かったが、ウーコンはルナワラの指示を無視してアルクを迎え撃った。


 ウーコンは格闘戦に邪魔になると判断したのか槍を投げ捨て、アルクと格闘に挑む。ウーコンは自身の力を信じるが、相手は始祖神龍により鍛えられた人間。結果は始めから決まっていた。


「……次」


 アルクは目の前で気絶しているウーコンを見下ろしながら冷たい声でそう言う。今までは三人でアルクを抑えられていた。だが、一人が戦闘不能となった事で一気にアルクが有利となった。


(このまま力を使わせないで終わらせる!)


 未だにどのような力を発揮するのか分からない族長の力を見るべきなのはアルクは知っていた。だが、今はそれをやっている時間が無い。


 アルクは目にも止まらぬ速さでガルーダとルナワラとの距離を詰めて、攻撃をし続ける。


「ルナワラ!合わせろ!」


「分かってる!」


 ガルーダとルナワラは協力してアルクの攻撃を凌いでいた。だが、凌ぐだけで反撃をする隙が無い。


「ガルーダ。一つ提案がある」


 ルナワラはアルクに対抗出来る案をガルーダに教える。その案としてはガルーダの羽を使ってアルクの視界を狭めた後に、ルナワラの全力の蹴りを喰らわせる事だった。


 しばらくアルクの攻撃を凌いだ後、ガルーダは作戦通り羽を散らしアルクの視界を狭める。その瞬間、ルナワラの全力の蹴りを放つ。だが、前方に高密度の魔力をガルーダとルナワラが感じ取る。


[炎魔法・炎ノ怒(プロミネンス)]


 アルクは二人を巻き込む様に巨大な火の玉を放つ。巨大な炎を留まる事を知らずに二人を押しながら太陽城の壁へと押し付ける。その瞬間、爆発を起こし太陽城の壁に大きな穴を開けた。


「良し。行こう」


 勝利を確信したアルクはアポロンとハリスの後を追いかけた。

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