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7ー9 誘拐

 会議室に案内されたセイラと翔太達は突然の獣人の王の登場に驚いていた。それに加えて獣人の王だけでなく獣人の全部族の族長も集まっていたのだ。


 セイラ自身も外交官との話し合いが始まると思っていた。


「どうした?椅子に座ってくれないと話し合いが進まないぞ?」


 ラクジャ王が椅子に座る様に催促する事で、セイラ達は椅子に座る事が出来た。


「それにしてもセイラ嬢に会うのは久し振りだな!」


「お久し振りです、ラクジャ様。突然の訪問をお許し下さい」


 セイラはそう言うと頭を下げる。セイラは騎士である前に一国の姫でもある。


「大丈夫だ!来た理由としては闇の使徒アルクの事か?」


「それもありますが別の用もあって来ました」


「別の用?」


「はい。別の用とは闇の鉱石、黒暗結晶についてです」


 セイラはラクジャ王と族長達に黒暗結晶について話し始める。セイラの話を聞き終えた獣人達は顔を暗くしていた。


 当たり前だ。自分の暮らす国に闇が広がる元凶である鉱石が出現する。これを知って叫ばない辺り流石族長とも言える。


「そうか……確かにいつ出現するか分からない限り早めに来るのは正しい判断とも言える」


「はい。なので限定的で良いので獣人王朝アニニマでの活動をお許し下さい」


 セイラはそう言い、再び頭を下げる。


「セイラ嬢。そんな簡単に頭を下げないでくれ。もちろんこの国での活動は許す」


「本当ですか!?」


「ああ。でも入らないで欲しい所が三つある。一つは陽獅族領の中心だ。そこにはこの国の機密情報がある。二つ目はこの森だ」


 ラクジャ王は机に広がられている地図に指を刺す。そこは森だった。


「ここは危険な生物がウヨウヨいるから入らないで欲しい。三つ目は帝国付近だ。流石に他国の騎士を他国の国境付近で活動させれば色々と問題がある」


 ラクジャ王はそう言うと、セイラ達は今まで抜けていた考えてが埋まっていく。


 確かに別の国で機密情報がある所はもちろん、他国との国境近くで活動していた場合、戦争の準備をしているのかと勘違いをさせてしまう。


 そして、立ち入り禁止の区域に入り、他国の騎士を死なせなとなれば獣人王朝アニニマが非難の的となる。


「分かりました。それではその三つを聖剣部隊にキツく言っておきます」


「理解が早くて助かるよ。それで?セイラ嬢の横にいる者達が例の召喚された勇者達か?」


「はい。ですがこの者達は争いが無い世界から召喚されたので戦闘経験が少ないです。それでも一般兵とやり合える程には成長しています」


「そうか……提案があるんだが良いか?」


「提案ですか?」


「そうだ。提案の内容としては勇者達をこちらで訓練させる事だ。そうすれば闇が出現したとなれば前よりも戦える筈だ。セイラ嬢と同じ方法でな」


「確かに……それも良いですね。お前達はどうする?」


 セイラはラクジャ王の提案を翔太達に聞く。セイラ自身は何人か反対するだろうと考えていたが、意外にも全員がこの提案に乗る気だった。


「そうか!この提案に乗ってくれるとはありがたい!それじゃあ鬼猿族族長の所で訓練すると良い!後は頼んだぞ!」


 ラクジャ王は額に鬼の様な角が生えた猿の獣人に話しかける。


「あいよ……訓練場へ案内してやる。わっちについて来い」


 鬼猿族の族長がそう言うと歩き出し、翔太達も急いで後を追い掛けて行った。


「他の族長達もミリス教の者達の目的は分かっただろうから帰っても大丈夫だぞ!」


 ラクジャ王は残っている他の族長達にそう告げると、族長達は続々と席を立ち、それぞれの族領へ帰って行った。


「セイラ嬢はどうする?このままミリス教の奴らの所に戻るか、久しぶりに俺と戦うか?」


「そうですね……久しぶりに会いましたし戦いましょう!」


 こうして、突発でセイラとラクジャ王の模擬戦が始まった。


―――――――――――


 獣人の王の補佐である梟の空鳥族の獣人に見つかったアルクは自身の身を隠す為に、建物と建物の狭い空間に隠れていた。


 アルクは一番警戒していた梟の獣人に早い段階で出会ってしまい、失敗したと考えていた。


「まさかこんな早い段階で梟の獣人に会うとは……やっぱり一人でも協力してくれる奴が居れば楽なんだが……」


 そこでアルクは冒険者時代に仲良くなった獣人を何人か思い出す。


(確か前にアニニマで活動してる獣人の冒険者が居たんだが……誰だっけな?)


 アルクは昔に知り合った獣人を思い出そうとするが、アニニマで活動している獣人が少なく、絶望する。


(このままだと本当に力任せでやるしか無くなるぞ……どうすれば)


 アルクは頭を抱えると後ろで冒険者が通る。


「おい、ハリス!アニニマに来たのは良いけどどうするんだよ?」


 聞き覚えのある名前が聞こえて、反射的に振り返る。すると、そこには銀狼族のハリスが通り去ろうとしていた。


 ハリスは鷹の爪団のリーダーであり、かつて一緒にゴブリンに占領された村で共に戦った仲である。


 アルクはそれを好機だと思い、行動に身を移す。


 まずはハリスが一人になるまで、ハリスの後を勘付かれない程度に尾行する。


 そして、ハリスが一人なった瞬間に、ハリスの視界を奪った上で気絶させる。


 だが、流石にこんな派手な事をすれば誰であろうとも違和感に気付く。


「きゃー!!人攫いよ!」


 そして、近くにいた女の獣人がそう叫び、周りの視線が一気に集まる。


「ハリス!」


 ハリスのパーティーメンバーはそう叫びながら、アルクに攻撃を仕掛ける。だが、相手よりも先にアルクは周囲に煙玉を放ちハリスを抱えて何処かへ去って行った。

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