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6ー48 光の龍

「おらぁ!」


 ルドはガイアに渾身の一撃をお見舞いする・だが、ガイアの異常成長した鱗によってルドの拳が止められる。


「セラシーン!」


「分かってるわ!」


 ルドの声より早くセラシーンは竜人の姿で、ルドに振り下ろされる拳を跳ね返す。


[龍の拳(ドラゴンフィスト)]


 ルドは拳に龍魔力を込めガイアに放つ。通常ならそれに当たった敵は体内に大量の龍魔力と衝撃を与えられ内部から破裂する。だが、ガイアには効果が無く拳でルドの攻撃をぶつけ合う。


「闇よ!我が意に従え!」


 ガイアは周囲に解き放った闇を巧みに扱い球体になり、ルドの周囲を取り囲むように集まる。そして、その闇は一斉にルドへ高速で襲い掛かる。


 だが、その闇はセラシーンの水によって全て切られる。


 ルドは攻撃の手を緩めず再びガイアへ攻撃を仕掛ける。


 いくらガイアの鱗が硬くなっている。だが、壊れる事は変わりないのをルドは知っている。すると、ルドの考え通りにガイアが覆っていた腕の鱗にヒビが入り割れる。


 ルドはガイアの鱗が割れたのを見逃さずに、鱗が割れた部位を狙って高温の炎を放ち焼こうとした。


 だが、


「兄上!避けろ!」


 セラシーンの叫びと共にルドの背中が熱くなる。ルドは後ろを見るとそこには骨の剣を掴んでいたガイアの尻尾があった。


「お前には俺の隠し技をまだまだ教えていなかったな」

 

 ガイアの隠し技。それは尻尾の伸縮性だ。ガイアの尻尾は普段折りたたんでいるため短く見える。だが、本来の長さはガイアの龍の姿を軽く越していて三倍の長さとなっている。


「次はこっちから攻めて……あ?」


 ガイアは攻撃を仕掛けようとしたが何かに気を取られる。それはルドとセラシーンもそうだった。


 何故なら遠くで高濃度の闇を感じ取ったからだ。そして次の瞬間、ガイアの目の前に誰かが現れる。


 それは何者かによって半身を吹き飛ばされたウルカハだった。


 普通なら死ぬ状態の怪我だったが、闇によって出血死は免れていた。


「ガイア様……少しだけ闇を分けていただけないでしょうか」


 ウルカハは自身の闇だけでは治療をするのは無理だと分かっていた為、黒暗結晶の闇を全て取り込んだガイアから闇を分けてもらおうとしていた。


 すると、ウルカハに闇を分けるのかウルカハを鷲掴みにする。


「ガイア様?」


「非常に残念だ。心から申し訳ないと思っている。だがこれが自然の摂理だ。悪く思うなよ?」


 そして、ウルカハを鷲掴みにしたまま口を開く。


「ま、まさか!いやだ!こんな所で!誰か!誰か助けてくれ!」


 ウルカハは最後の抵抗として何度もガイアの手から抜けようとする。だが、ウルカハの抵抗も空しくガイアの口の中へと放り投げられる。


「王よ!どうか!どうかお助げぇーー」


 何者かに助けを求めようとするウルカハだったがガイアは口を閉じる。そしてガイアから骨が砕け肉が擦り切れる音が聞こえる。


 そしてガイアはウルカハだった物を飲み込む。


「ははは……やはり元々持っている闇とはまた違うな!」


 ガイアはそう言うといつもと違う雰囲気の闇を出す。


[闇魔法・黒王の光]


 そして、ルドとセラシーンへ黒い光を放つ。突然の事でルドとセラシーンは魔法を防ぐことが出来ずに視界が黒に染まってしまう。


「セラシーン!なんだこの魔法は!」


「分かんないけど……気を付けて!」


 ルドとセラシーンは来るであろう追撃に身構えるが何も来ない。これには魔法を放った張本人であるガイアでさえも困惑していた。


「なんだ?ウルカハの記憶ではこの後に苦しんでいたはずだ……まぁ良い。ここでお前達の力を奪ってやろう!」


 ガイアは更に自信を強くするためにウルカハから吸収した力である「触れた相手の力と魔力を奪う」を利用してルドとセラシーンの力を奪おうとした。


 だが、


[聖級闇魔法・邪神の大剣(ロキ・アズガルド)]


 遠くから大量の魔力と闇が迫りくるのをガイアは感じ取り、動きを急いで止める。すると、ガイアの目の前に闇の大剣が通り去る。


「くらええええええ!!」


 そして、ガイアへ黒い何かが飛びつきガイアをルドとセラシーンから離す。


「お前達!大丈夫か!」


 ポイントワープを利用し、一瞬でルドとセラシーンの所へ移動したアルクは何が起こったのか分からずにいた。  


 相変わらずガイアは禍々しい闇と圧倒的な龍魔力を放っていたが、ほんの微かにガイアからウルカハの気配を感じていた。


「食われた」


「ん?何が食われたんだ?」


「ウルカハが食われたんだよ」


 ルドはアルクにそう言うと困った顔をする。何故ならウルカハの持っていた「触れた相手の力と魔力を奪う」がガイアの物になってしまったからだ。


 ウルカハはどんな力を持っていたのか何も知らないルドとセラシーンに説明する。


「アイツそんな危険な力持っているのか」


「所でアルク。ファルカとグレイシスはどのに行ったか知らない?」


「アイツらはあ……と……危ない!」


 アルクはガイアの魔法が迫っている事に気付き、魔法を一刀両断する。


「だからアイツには絶対触れるなよ!分かったか!」


「おう!」


「分かったわ!」


 アルクはルドとセラシーンと協力してガイアを攻撃する。唯一、力と魔力を奪われないアルクがガイアと近接戦をして、ルドとセラシーンは魔法でアルクの援護をする。


 アルク自身ガイアの力と魔力を奪う魔法も能力もない。だが、黒暗結晶の闇を取り込んでいるなら話は別だ。アルクの中に居るもう一人の人間、アレスが黒暗結晶の闇を吸収する能力を持っている。


 そして、ガイアは黒暗結晶の闇のお陰で強くなっている。つまり黒暗結晶の闇をすべて吸収すればガイアは弱くなる。


「人間風情が!舐めるなよ!」


 ガイアは自分よりも劣っている種族であるアルクが相手になった事に憤り、力任せに拳を振り下ろす。


(力任せの拳……単純で助かる)


 アルク目掛けて振り下ろされた拳は剣など使わずに手捌きだけで防いだ。


 そしてガイアの中にある黒暗結晶を吸収するために、剣をガイアの胸に突き刺す。


(勝った!)


 アルクはそう思った瞬間、アルクの視界が暗転した。周りを見るが何もない。それはまさに何度か訪れたアルク自身の精神に程近かった。


「アレスか?」


 アルクは居るであろうアレスに声を掛けるが何も返ってこない。だが、アルクはとある事に気付く。


 それは黒い空間の中で動いていた。


 アルクは警戒しながらその黒い何かに近付く。そして、その黒い何かはアルクに飛びついた瞬間霧となって消えた。


「アルク!何をしている!」


 ルドの叫びにアルクの視界は元に戻る。そして次の瞬間、上から重い衝撃をくらい、地面へと叩き落とされる。


 ガイアは地面に叩き落とされたアルクに追撃として、口から黒い炎を放つ。だが、セラシーンは水の盾をアルクの前に出し、アルクを守る。


「邪魔をするな!」


 ガイアはアルクよりも先に力と魔力を奪えるルドとセラシーンを相手にしようとするが、アルクの魔法により中々ルドとセラシーンに近づけない。


 アルクは再びガイアから黒暗結晶の闇を奪おうとするが、アルクが何をしたいのか理解したガイアは中々アルクを近づけさせないようにする。


 だが、それもアルクの計画の一つであった。本来なら一度に多くの闇を吸収したかった。しかし、警戒しているガイアに同じ方法は通じないと知ったアルクは少しずつ闇を吸収する計画へと移り変えた。


 ガイアは封印から解けたばかりなのか動きがルドとセラシーンに比べ比較的遅い。そのお陰でガイアの動きに無駄が多い。


 アルクはそれを狙いガイアに触れ、少しずつ闇を吸収していた。


「ガアアアアアアアアア!!」


 ガイアは一か八かの賭けで周囲に闇を大量に放出し、自身の身を隠す。それはルドやセラシーンは勿論、アルクもガイアの姿を見失ってしまった。


「まずい……ッ!セラシーン!!」


 アルクはここで力と魔力を奪う相手はルドでなくセラシーンと気付く。何故ならセラシーンは機動性を重視した結果未だに竜人の姿だ。


 つまり掴みやすい。


 そして、アルクの予想通りガイアはセラシーンを掴んでしまう。


「セラシーン!」


「遅いわ!」

 

 ガイアはもうセラシーンの力と魔力を奪ったのか、セラシーンを投げ捨て今度はルドの力と魔力を奪う為に仕掛ける。


[風刃]


 ガイアの手がルドの首を掴みかけた瞬間、ガイアの腕は風の刃によって切断される。


「僕だよクソ野郎が」


 ガイアの腕を切断した本人であるファルカは右手にイレナとグレイシス、放り投げられたセラシーンを掴んでいた。


「そんな塵共邪魔そうだな。我が消してやろう!」


 ガイアはファルカに黒い炎を吐く。


「「させるか!!」」


 ルドとアルクはファルカを守る為にファルカの前まで飛び、ガイアの黒い炎を受け止める。


 いくらガイアから闇を吸収したとはいえほんの少しに過ぎない。それに加えてセラシーンから奪った魔力も上乗せされ、さらに炎の威力が増している。


 その為、ルドとアルクは次第に押されていく。


「光よ!我が意に答えよ!」


 そんな声が抱えた瞬間、アルクとルドを守るように光の障壁が出現し、ガイアの黒い炎から守る。


「ほう……土壇場での覚醒。面白い」


 ガイアの視線に目を向けると、そこには光の翼を生やしたイレナがいた。

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