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6ー47 黒龍戦争11

 ウルカハと対峙していたアルクとファルカは相手の変化に驚いていた。


 何故ならウルカハが身に纏っている闇はより一層濃くなり、鱗の硬度が段違いに上がっていた。


 アルクは剣をウルカハに当てようとする。だが、その剣はウルカハの闇は切ることが出来ても鱗を切ることが出来なかった。


「ファルカ!あいつを切ることが出来ねぇぞ!」


「知らないよ!それはお前が使うのが下手なだけでしょ!」


 ウルカハは言い争っているアルクに向けて骨の剣を振る。


 アルクは嫌な予感がし、剣を振り炎の刃を飛ばす。すると、炎の刃は何かに当たり大爆発を起こす。


「どけ!アルク!」


 ファルカは巨大な手でアルクをどかし、大量の風の刃をウルカハに向けて放つ。


 だが、どれもウルカハの鱗と闇によって塞がれる。


 ウルカハは剣構えた後、一瞬でアルクとの距離を詰め、剣を振った。


 だが、ウルカハの力が弱まっているのか力が入らずにアルクに押し返される。


「ファルカ!なんだか分かんないが今は力が弱い!このまま押し切るぞ!」


 アルクの一言でファルカは一瞬で距離を詰めてウルカハを殴り上げる。アルクのファルカの動きを読み、空中でウルカハを待っていた。


[アレキウス神滅剣・神降ろし]

 

 アルクはそのまま叩きつけるように上に上がってきたウルカハに剣をぶつける。


 すると、何かにひびが入る音と共にウルカハは勢いよく地面に叩きつけられる。


 そのままアルクとファルカはトドメを刺そうとウルカハに近づく。だが、その瞬間ウルカハの体から高濃度の闇が放たれる。


[闇魔法・黒雷]


 ウルカハは迫ってくる二人に黒い雷を放つ。だが、アルクは剣を避雷針代わりにして身を防ぎ、ファルカは風で雷を払う。


 アルクは先程までのウルカハの持っていた闇と、現在の闇が全くの別物だと分かるとアルクは急いで距離を取る。


「ファルカ!今すぐそいつから離れろ!」


 ファルカはウルカハを殺そうと迫る。だが、ウルカハはニヤッと笑い魔法を発動する。


[闇魔法・黒王の光]


 その瞬間、アルクとファルカの視界が暗転し、その次に激痛が全身を走った。


 ウルカハからある程度距離を取っていたアルクは魔法を最小限で抑えることが出来た。だが、ウルカハと至近距離にいたファルカは魔法をもろに喰らってしまい気絶してしまう。


 そして、ファルカはウルカハに覆いかぶさる形で地面に倒れ込もうとする。だが、ウルカハはファルカを両手で押し返す。


「今の闇……誰の闇だ?」


 アルクは変化したウルカハの闇に付いて聞く。


「それはお前が一番知っていると思うが……な!」


 ウルカハは高速で飛行しアルクへ剣をぶつける。だが、アルクはウルカハに触れるのは危険だと判断し、全て避ける。


(この闇……懐かしい……)


 アルクはウルカハから放たれる闇にどこか懐かしさを感じていた。だが、避けるのにも限界を感じ反撃しようとする。


 すると、


「アルク!そいつに触れるな!」


 どこからかグレイシスの叫び声が聞こえ、アルクは素直にそこ声に従い、魔法でウルカハを離す。


「アルク!そいつは触れたものから力と魔力を奪う!」


 アルクは声を聞こえた方向を向くと、イレナに抱えられたグレイシスがいた。


「奪う……そうか」


 アルクは何が呟くと闇を解放し、片翼を展開する。


「ファルカ。こいつは俺に任せてガイアの所にでも行ってこい」


 アルクの突然の提案にファルカは文句を言おうとする。だが、アルクから放たれる殺気と闇の圧に負けてしまう。


 ファルカは、ここは素直に従うべきだ、と判断して手合いのグレイシスとイレナを連れてその場を離れる。


「お前一人で俺を殺せるとでも?」


「ああ。グレイシスのおかげで何も考えずに殺せる」


「やれるもんやらやってみろ!」


 ウルカハはそう叫ぶと、アルクから力と魔力を奪おうと迫る。対してアルクは動かずにウルカハを受け止める。


 本来ならウルカハに触れた時点で力と魔力を奪われてしまう。


 だが、アルクから力と魔力を奪うことが出来ない。むしろウルカハの力と魔力が奪われている。


「な!?離せ!離せ!」


 ウルカハは想定外の出来事に動揺し、無理矢理アルクの手を振り解き距離を取る。


「良いことを教えよう。闇は奪う事を得意としてる。特に格下の相手から」


 アルクはそう言うと口角を上げて笑う。そして対照的にウルカハからは笑顔が消えていた。


「お前の変化した闇……誰の闇だ?薄すぎる」


 薄すぎる。アルクの一言にウルカハは声を上げる。


「薄い?薄いだと!?闇の王から頂いた闇を!」


()()()から頂いた闇?この程度の闇が?お前は何も知らないんだな」


 アルクは闇の王が持っている闇の事を知っている。いや、知らされたのだ。アルクの中にいる闇、アレスから。


「ふざけるな!ふざけるなぁ!」


 ウルカハは自身の怒りを糧として闇を増幅させる。


「殺す!殺してやる!」


 ウルカハはそう叫ぶと図体に見合わない素早い動きでアルクを攻撃する。だが、全てアルクの手によって塞がれ、力と魔力が奪われてしまう。


 だが、アルクの目的はウルカハの力と魔力を奪う事ではなかった。


 アルクの本当の目的はウルカハの中にあるグレイシスから奪った龍魔力であった。


 ウルカハと戦っている間、微かにグレイシスが持っていた龍魔力を感知していた。だが、ウルカハの力や魔力は奪えてもどうやって奪えば良いのか分からなかった。


「ちくしょう!ちくしょう!」


 ウルカハは再び魔法を放とうとする。


「仕方ない。奪えるもんは奪えたし殺るか」


 アルクは今までウルカハから奪った力と魔力を全て使い魔法陣を構築する。


[闇魔法・黒王の光]


[聖級闇魔法・邪神の大剣]


 ウルカハは黒い閃光。対してアルクは巨大な闇の大剣をウルカハに振る。


 本来なら閃光であるウルカハの魔法が早いが、ウルカハが放った魔法は全て闇の大剣によって塞がれてしまう。


「良い加減死んどけよ!」


 アルクはそう叫ぶと闇の大剣をウルカハに当てる。すると衝撃で近くにあった禁域の一部が吹き飛んでしまった。


 アルクは本当にウルカハを殺す事が出来たのか確かめる為に、ウルカハが死んでいるであろう所まで降りる。


 だがそこにはウルカハの代わりに転移石があった。


 つまりウルカハはアルクの魔法が当たる直前に転移石を使用してどこかへ逃げたと言う事だ。


 アルクはウルカハがどこへ逃げたのか探るべく、周囲を探知魔法で探そうとした。


 すると、ルドとセラシーンがガイアと戦っている方面から巨大な闇の柱が現れた。


 その闇の柱は空高く聳え立ち、雲を突き抜ける程だった。


 アルクはここで死にかけの竜人を探すのは得策でないと判断し、ルド達がいるであろう闇の柱へ向かった。


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