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6-43 黒龍戦争7

 黒龍ガイアと向き合う炎龍ルド。アルクはルド達を信用し、守りの手が少ないであろう黒暗結晶を浄化する為に向かった。


「ふん!その様な矮小な姿で我とやり合うと?」


「仕方ないだろう?ここで龍の姿になれば仲間をも蒸発させてしまう」


「貴様が周囲の被害を考えるとはな……」


「言っただろ?生き物は成長するもの、だ!」


 ルドは隠していた龍魔力をすべて解放し、炎をガイアに放つ。だが、ガイアにとってこの程度の炎は取るに足らないものだ。


「やあああああ!」


 ルドの炎を払おうとするガイアにセラシーンは水の龍を作り出し、ガイアに向けて放つ。


「手伝うぞ!」


 ガイアに飛ばされたグレイシスは息を切らしながらも前線に戻り、セラシーンに合わせるように攻撃する。


 正面からは胸の傷を狙った水の龍による攻撃。後ろからは背中の古傷を狙った氷の拳。普通の生き物であれば成す術なく簡単に死んでしまう攻撃だ。


「この程度……なんてことない!」


 ガイアは二人の攻撃をまともに喰らう。だが、ガイアに怪我どころか鱗に傷一つ付いていない。


「は!?なんで!前はこれでやれたのに!」


 グレイシスはガイアに傷一つ付ける事が出来なかった事に驚いていた。かつてガイアと戦っていたルドやセラシーンも同じだった。


「何を驚いている?言っただろう?生物は成長する物だと」


 ガイアの言葉を聞いたセラシーンは違和感を感じていた。何故なら封印されていたあの空間はあらゆる事象が止まっている。


 つまりあの空間では成長する事があり得ないのだ。


「まぁ我の為に動いてくれた使徒が居るからな」


 ガイアはそう言うと、アルクによって折られた剣を瞬時に再生し、魔力を込め近くに居るグレイシスを切ろうとする。


 グレイシスはガイアの剣を受け止めようとするが、セラシーンによってガイアの剣の軌道が逸れる。


 すると、木が生い茂っていた森が一瞬にして広範囲に消し飛んでいく。


「危ないでしょうグレイ!少し前にあの剣に込められた魔力が危険だって察知したでしょう!」


グレイシスは復帰する時に感じた禍々しい魔力の正体がガイアの両手剣に込められた魔力である事を知る。


「グレイ。私と協力してアイツから武器を奪いさるのが優先事項よ。もしあれが振られてしまうと被害が……」


 セラシーンはまだ地上に取り残されている兵士とイレナを見る。


「分かった。やろう!」


 グレイシスとセラシーンは龍魔力を解放し、体の一部を龍に戻す。


「ここは吾が最初に行く。お前達はこやつらを安全な所に移すといい!」


「一人で大丈夫なの?」


「安心せいセラシーン!それに吾一人で勝つつもりはない。時間を稼ぐだけだ」


「分かったわ。それじゃあこれを……」


 セラシーンはルドに触れる。すると、薄い水の膜がルドの周囲を囲う。


「これである程度の傷は勝手に治るわ……頑張って」


「おう!」


 ルドはそう言うと、ガイアの前まで飛行する。


「ルドよ。我にとってお前は今も昔も可愛い一人の弟だと思っている。だからお前に提案をしたい」


「断る!」


 ルドはガイアの提案を聞く前に断る。ルドにとってガイアが何を言おうとしたのか理解していた。


「何故だ?()()にとっても悪い話では無い筈だ」


「ああ。昔の吾だったら貴様の提案を受け入れていた筈だ。だがいくらなんでもやり過ぎだ!貴様がした事!忘れたとは言わせないぞ!」


 ルドはそう言うと、昔の事を思い出す。かつて黒龍ガイアは暴力的で戦いを好む龍であったが国を滅ぼす程の非道な事はしなかった。


 だが、闇の王との接触により隠されていたガイアの本能を剥き出しにし、そしてそれを増幅そのせいで黒龍は国を滅ぼすなどの暴挙に出たのだ。


 そして元々ガイアと最も仲の良かった龍であるルドは何度か戦いを挑み、お互いを高め合っていた。


「やりすぎ?何故だ?我は自身の本能に忠実なだけだ」


「そうか……どうやらもう無理な様だな」


 ルドはそう言うと、収納魔法から一本の白い剣を取り出す。そして、その剣に魔力を込めると白い炎が剣を纏い始める。


 ガイアは再び両手剣に魔力を込めるが、今度は黒い炎が両手剣を纏う。


「はあ!」


 ルドとガイアはほぼ同時に剣を振ると白い炎と黒い炎が混じり合い大爆発を引き起こす。ルドはまだ煙が生じていた正面を突っ走り、ガイアとの距離を詰める。


「良いだろう!来い!」


 ガイアはそう叫ぶと両手剣を再びルドに向かって振る。ルドは持っている剣でガイアの両手剣を受け止める。


 二匹の剣が交差した事により衝撃で近くの雲を消し去る。


「矮小な姿でこの力!面白い!」


 鍔競り合いの状態でガイアは尻尾を使いルドに叩きつける。だが、ルドはガイアの行動を先読みしていたのか巧みな体使いで鍔競り合いの状況から抜け出し、ガイアの尻尾を弾く。


 ガイアは龍の姿のせいなのか全ての動きに対して鈍い。だが、ルドは竜人の姿になっているお陰で素早い動きが可能になっている。


 ガイアはルドに対して何度も攻撃を仕掛けるがルドは何度も避け、反撃でガイアの鱗に傷を付ける。


(おかしい……いくらなんでも硬すぎる)


 ルドはガイアの急速な鱗の硬化に戸惑いを感じていた。龍にとって鱗の硬化は相当な時間を費やす必要がある。

 だが、ガイアは封印され成長そのものが出来なくなっていた筈だ。


「兄上!少し上に行って!」


 セラシーンの声が聞こえた瞬間ルドは急いで上へ上がる。すると、ルドが居た位置に氷と水の龍が通り、ガイアへ直撃する。


「セラシーン!グレイシス!避難は終わったのか?」


「終わったわよ!それにルルに頼んで街の結界強くしてもらったわ!だから全力を出しても大丈夫よ!」


 すると、ルドはニヤッと笑い龍魔力を全身に纏う。すると、高温の熱に包まれやがて炎に包まれる。


「嘘でしょ?グレイ!急いで防御壁を!」


「分かってる!」


 セラシーンの声にグレイシスは従い、それぞれ防御壁を展開する。そして、次の瞬間大量の熱波が周囲に放たれる。


 そして、ルドの姿は次第に大きくなり、本来の姿である白い龍へと変わって行った。


「がああああ!」


 ルドは短い雄叫びを上げるとガイアへ突撃していく。


「セラ姉さん!私達も早く加勢しないと!」


「無理よ。もし割って入ろうものなら兄上に燃やされるわよ。それより周囲の森が燃えないように工夫を……危ない!」


 セラシーンはそう言いグレイシスを抱き寄せる。すると、そこへ黒い炎が過ぎ去る。


 グレイシスは竜人の魔力を感じ取り見上げる。空中に黒い点を見つけるとグレイシスはその正体がガイアの使徒であるウルカハだと気付く。


「邪魔をさせるか!」


 グレイシスは迫りくるウルカハを正面からぶつかり合う。


「どけ!」


「どくわけないだろう!セラ姉さん!結界を!」


「分かってるわ」


 グレイシスの言葉と同時にセラシーンは水の檻を生成し、グレイシスとウルカハを閉じ込める。


「兄上の邪魔はさせないわ。グレイ。面倒だけどお願いね」


 セラシーンはグレイシスにそう言うと、ガイアと戦っているルドの下へ向かう。ルドとガイアは激しい殴り合いをしているせいか衝撃波が様々な所へ飛んでいる。


「楽しいな!ルドよ!」


「なら貴様だけそう思っていろ!」


 ルドは戦いを楽しみ興奮状態であるガイアに向かってそう言うと、その図体に見合わず小さく、繊細な魔法陣を口の周りに展開する。


「その程度の龍魔法、我が気付かないと思っているのか?」


 ガイアはそう言うと魔力を流し[魔法消去(マジックキャンセル)]を発動し、ルドの口の周りに展開されている魔法陣を崩そうとする。


 しかしガイアの[魔法消去(マジックキャンセル)]が何者かによって防がれる。


「良くやった!セラシーン!」


「あれ?私は何もやってないのだけれど……」


 セラシーンはルドが何を言っているのか分からなくなっていた。


「はぁ……はぁ……気を付けてくれ……」


 声が聞こえた方向を向くと体に包帯を巻いているイレナが居た。


「イレナ!貴方はまだ安静にした方が……」


「休んでる暇は無いんだ!早くアルクの元へ行かないと!」


「アルクならもう黒暗結晶の方は行ったわ!行くなら早く!」


 セラシーンはそう言うとルドと同じようにイレナに触れ、回復魔法を施す。


 イレナは感じてい痛みが消えるのを確認すると、アルクを手伝う為に黒暗結晶の元へ急いで進んでいった。


「何をしているガイア?お前達の力の源である結晶を守りに行かなくても良いのか?」


「結晶か?そんなものは我には無用になったぞ」


 ガイアはそう言うと体から闇を解き放ち、その闇から魔物を作り出す。ガイアが作り出した魔物達はルドを見るや否や襲い掛かる。


 ルドは煩わしいと考えると大量の水が魔物達を洗い流す。


「兄上は気にせずに戦ってくれ。小さいのは私がやるからね」


 セラシーンはルドに向かって言うとルドはニヤッと笑い、ガイアとの戦いに集中した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 黒暗結晶が存在する禁域の洞窟にたどり着いたアルクは目の前で起こっている出来事に驚いていた。


 何故なら、


「そんな……闇が……無い?」


 本来黒暗結晶に宿っていたはずの大量且つ高濃度の闇が消えていたのだ。すると、タイミングを見計らったかのように洞窟の隙間から大量のダークスライムが湧き出始めた。


「やられたか……まぁ良い……全力で片付ける!」

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