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6-41 黒龍戦争5

 グレイシスとファルカがウルカハと接敵した頃、兵士達は死に物狂いでダークスライムを撃退していた。


「怯むな!戦い続けろ!」


 指揮官らしき兵士は他の兵士を鼓舞しながら前線で戦っていた。壁の下では接近戦が得意な竜人で構成されており、壁上では龍頭砲などの兵器の操作、魔法を得意とする竜人で構成されている。


「危ないガルル!避けろ!」


「え?」


 防衛線に参加していたガルルは背後から近づく魔物に気付かずに攻撃を喰らってしまう。だが、近くに居た兵士のお陰で致命傷には至らずにいたが、大量に血が出ていた。


「大丈夫か!まずを血を止めろ!」


「先輩……後ろ……」


 先輩と呼ばれた兵士はガルルの治療をしようとしたが、ガルルの言葉と共に背後から冷たい気配を感じる。


 そこでガルルの治療を行っていた兵士は判断を間違えたとすぐに分かった。わざわざ戦場の真ん中ではなく少し離れた所で治療をするべきであった。


「ああああああああああああ!」


 魔物は無慈悲に兵士の背中に爪を立て、背中を引き裂いた。ガルルは死を覚悟し目を瞑る。だが、何かが潰れる音が聞こえた。


 いつまで経っても痛みを感じないガルルは意を決し目を開ける。するとそこに居た筈の魔物は潰れたのか死体が四散していた。そしてガルル達の前には血や黒い液体で体や髪が汚れた青い髪の竜人が立っていた。 


「あらあら。酷い傷ね~。私に任せて!」


 青い竜人はそう言うとガルルと兵士に触れる。すると、ガルルや兵士の背中に付けられた傷がどんどん治って行く。


「あ、貴方は……もしかして水龍様ですか?」


「そうよ~。セラシーンって呼んで。私はまだまだ戦うけど……貴方達は絶対安静よ。兄上。この二人を上へ連れてって欲しいの~」


 セラシーンは壁上に居るであろう者に声を掛ける。すると、壁上から褐色の肌を持ち白と赤色の髪を持っている竜人が降りて来る。


「この人達酷い怪我をしているのよ。だから上へ連れて行ってくれない?」


「別に良いが……お前が進んで戦うとは珍しいものだな!」


「ええ!だって深海だと既に力の関係が知れ渡ってるから皆進んで挑んで来ないのよ~」


「そういう事なら了解した!思う存分戦うが良い!」


「ええ!それにしても兄上が進んで戦わないなんて……何を考えているのかしら?」


「なーに。力の温存だ!」


「そうなの?それじゃあ私は満足するまで……殴り殺しまくるわよ!」


 セラシーンはそう言うと、ダークスライムと戦っている兵士達の援護や魔物の殲滅の為に前線へ進んでいった。


「どうだ?吾の自慢の妹は?見た目にそぐわず中々の戦いぶりだろぅ?」


 ガルルと兵士は霞む目でセラシーンの戦いぶりを見る。炎龍の言う通り見た目に反して拳で魔物を蹂躙していく。


「怪我をしてる人は一か所に集めてほしい……の!」


 セラシーンは話しながらもオークに擬態したダークスライムを握り潰していく。セラシーンの話を聞いた兵士達はダークスライムの攻撃をやり過ごしながら怪我をしている兵士達を一か所に集める。


「これで全員なのね?よーし!行くわよ~!」


 セラシーンは魔法陣を一瞬で構成し、怪我をしている兵士達を囲むように展開する。


「そ~れ~」


 と、セラシーンの掛け声とともに魔法を発動させる。すると魔法陣の中に集められていた兵士達の怪我がみるみる回復していく。


 元来水龍セラシーンは治療を得意とする龍であった。しかし彼女が幼い頃、兄であったルドの戦いに魅入られた結果、今の様な戦い方になってしまった。そしてそれと同時にセラシーンの中に眠っていた龍としての闘争本能も呼び覚ましてしまった。


「セラシーン様!まだまだ魔物が大量に……」


 兵士達は止めどなく湧いてくる魔物を目撃し、絶望したような顔をする。だがそれとは対照的にセラシーンは顔を輝かせていた。


「貴方達は休んでていいわよ~。後は私に任せて~」


 セラシーンはそう言うと湧き続けるダークスライムの下へ突撃していった。



ーーーーーーーーーーーーーーーー


「とりゃあ!」 


 ファルカは遥か上空でウルカハとの戦闘を繰り広げていた。ファルカの幼い見た目に反して力強い攻撃でウルカハを押していた。


「なんだ?やっぱり敗北者であるあいつの使徒でもこの程度なのか!」


「鳥風情が……舐めるな!」


 ウルカハは自身の主人である黒龍ガイアを貶された事に憤ったのか、闇を体に纏い反撃する。


「お前がやりたいことはお見通しだ!」


 ファルカはウルカハの反撃を避けると、ウルカハの懐に潜り込み左肩をえぐり取る。


「そりゃあ!」


 そしてそのままウルカハの顎を殴り脳震盪を引き起こそうとする。だが、先祖返りの影響で全身の筋肉が増幅したウルカハは脳震盪を引き起こさなかった。


 ウルカハは油断しているであろうファルカを掴もうとする為、腕を引き延ばすがファルカは腕にしがみつき関節技を仕掛けようとする。


 だが、ウルカハはニヤッと笑いもう一つの腕でファルカを掴む。


 ウルカハに掴まれたファルカは相手が何をしようとするか分からないでいた。だが、ウルカハが急降下を始めるとともに、ファルカは相手が何をするのか理解した。


(こいつ!このまま僕を地面に叩きつけるつもりだ!)


「慌てているようだな!流石の龍でも竜人の姿でこの高さで落ちるのは危険の様だな!」


 ウルカハは完全にこれでファルカを仕留めようとしていた。だが次第に落下の速さが遅くなり、最終的に完全に空中に静止した。


「僕を誰だと思ってるの?風を操る龍なんだよ?」


 その瞬間、ファルカを掴んでいた腕がいきなり切り刻まれる。


「それにしても今のは危なかったな……でもそんなんで簡単に僕を殺す事が出来たらきっと僕の配下達は苦労しなかった筈だよ」


「はぁ?何を言ってやがる?」


「僕が兄上達からなんて言われているのか知ってる?」


「知るか!そんなの!」


「『最も暴力的な龍』だよ」


 すると、ファルカの体の周りに強風が纏わりつく。


「風を纏ったぐらいでなんだ!」


 ウルカハは収納魔法から黒く染まった大剣を取り出し、ファルカに向かって振るう。


 だがウルカハの大剣はファルカの周囲に吹いている強風にって弾かれる。


 そして、ファルカは胴体がガラ空きになっているウルカハに向かって手を伸ばす。すると、ウルカハにファルカの手が触れていないにも関わらず、胴体に傷が入る。


 ファルカはそのまま攻撃を続けようとするが、体の芯から嫌悪感を感じる上を見上げる。


 すると、空中から謎の巨大な黒い物体が迫り来る。ファルカは避けようとしたが避けた場合、下で戦っている兵士達や兄姉達が巻き込まれてしまう。


「クソが!」


 ファルカは体の一部を龍化し黒い物体を受け止めようとする。本来なら龍の姿で受け止めたいが、龍の姿になってしまうと余波で周囲に被害をもたらしてしまう。


「久しいな!愚かな弟よ!」


 と、そんな声が聞こえた瞬間、ファルカは周囲の被害を考えず急いで龍の姿になる。


「来やがったな!このクソトカゲ!」


 ファルカは黒い物体に向かってそう叫ぶと受け止める姿勢から殴り返す姿勢へと体勢を変える。


 ファルカに迫った黒い影、そしてファルカが「クソトカゲ」と呼ぶ者。それは他でもない黒龍ガイアであった。


「愚か!」


 ガイアはその図体に見合わない動きでファルカの攻撃を避け、殴り返し、地面へ落下させていく。


「黒龍様。お手を煩わせて申し訳ありません……」


「気にすることは無い。それに我が直接生み出した魔物共が殺させてな。それの様子を見に来ただけだ……そろそろ腕を治したらどうだ?」


 ウルカハは切り刻まれた腕に自身の闇を回す。すると、切り刻まれ千切れかけていた指や腕に付けられた腕が治っていく。


「それでこの後の予定は?」


「せっかくここまで来たんだ。どうせならここですべてを終わらせよう」

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