2ー1 学院
その日学院は騒がしかった。
夏休みが終わり新学期が始まるのが原因かもしれない。
しかしもう一つはスキンティア学院に平民でありながら編入してくる人がいるという事もある。
「グラウス様!聞いてください。この学院に平民の分際で編入してくる生徒がいるんですよ!」
「そうか、まあ気にする事じゃないよ」
と、グラウスは言った。
すると教室のドアが開く。教師らしき人物が足音を鳴らしながら教壇に立つ。
「はい、皆さん席に着いて下さい。今日はこの学院の第二学年Sクラスに編入生が来ました。それじゃあ入って下さい」
最初に先生らしき人がそう言うと、扉から生徒が入って来た。
容姿は白髪に赤目で身長は165cmはある青年。
「皆さん初めまして、国王推薦で入りました、アルクと言います。苗字はありません。よろしくお願いします」
「苗字がないと言う事は平民ですか?」
と、生徒の一人が聞いてきた。
「まあそうですね」
「質問は後にして、アルクは窓際の空いてる席に座って下さい」
教師がアルクにそう言うと、アルクは空いてる席に座った。
夏休み明けだったので授業はやらず簡単な説明をした後解散となった。
「おい、平民どんな不正を使ってこの学院に入った?」
さっそくアルクに対して不満がある生徒が話しかけて来た。赤髪赤目で身長が170ありそうな生徒が聞いてきた。
だがしばらく無視をしていると、
「おい、平民。グラウス様がお前に声をかけたんだぞ。ありがたく思え」
と、グラウスの取り巻きが言ってくる。
「いや、不正なんて使ってませんけど」
「ふん、よくもそんな見え透いた嘘を」
「そうだ、お前みたいな薄汚い平民がこの学院に入れる訳が無い」
「まあいい私は寛大な心を持っている。もう一度聞くぞ。どんな不正を使った?」
「だから、使ってませんよ」
「そこまで言うなら決闘をしようじゃないか」
そうグラウスが言うと周りが静まり返った。
「なんと、グラウス様が平民に決闘?」
「なぜ決闘を?」
「貴様が不正を使ったかを見極めるためだ」
「やはりグラウス殿はあの平民が不正を使ったと見破いていたのか」
「まあお前が決闘を受けるかどうかはお前次第だ」
(全くなんだよこの国の貴族は?なんでもかんでも決闘決闘)
アルクは今日まで決闘の多さに心の中でうんざりしていた。
だが、ここ最近寮に篭りっきりで体を動かしていない事を思い出す。
「決闘か……良いですよ。やりましょう」
と、アルクは快く快諾した。
「そうか話が早いな。では放課後訓練所で待っているぞ」
グラウスはアルクに向かってそう言うと教室を後にした。
――――――――――
学院の授業が終わり放課後。
アルクはグラウスが言った通り訓練所に着いた。
すると観客が多かった。
おそらく誰かが言いふらしたのだろう、平民と貴族が決闘するぞと。
「ちゃんと来たか。その威勢は認めてやろう。しかしお前には勝機は無い。まあ見せしめには丁度いいか」
と、グラウスは言い、ルールを決めた。
武器は刃抜きされた模擬刀、勝利条件はどちらかに致命傷に似た攻撃をすること。
「それではこれよりグラウス様とアルクとの決闘を始める!」
と審判が言った。
「それでは始め」
ついに決闘が始まってしまった。
どうしようとアルクは戸惑っていた。今までのアルクなら開始と同時に攻撃をしていた。だが、今回の相手はアルクと同い年であり、実戦経験が少ない生徒であった。
いつも通りの力で勝てばいいのか?
それとも貴族を立てる為にギリギリの決闘にするか迷っていた。
そんなことを考えてるうちにグラウスは雷魔法サンダーボルトを唱え始めた。
アルクはいつもの癖で、グラウスの詠唱に反応して模擬刀をグラウスの腹に叩きつけた。
突然のアルクの動きに今まで騒いでいた生徒達は静まり返った。
グラウスは摸擬刀で打ち込まれた腹を押さえながら、アルクを睨んだ。
「貴様!呪文を唱えてるうちに攻撃するとは!」
「はあ?そりゃあ剣士を前に呪文を唱えたら、攻撃して下さい、と言ってるものじゃないか」
と、アルクは当然のことを言った。
すると、今まで黙っていた生徒達が次々と口を開き始める。
「おい、あいつ決闘の常識も知らないのか?だれかあの無教養の平民に教えてやれよ」
と、観戦していた一人の生徒が言った。
「仕方ない。じゃあ僕が教えてやろう。貴族との決闘で呪文を唱えているときに攻撃するのは無礼なんだよ」
「そうなのか?そうか、それは済まないことをした」
アルクはグラウスに謝り距離を取る。
「よし、呪文を唱えてもいいぞ」
「クソが……平民が貴族を舐めやがって!」
と、グラウスは呪文を唱えた。
[雷よ我に力を貸、敵を打ち滅ぼせ、初級魔法雷弾]
グラウスが呪文を唱え終わると初級魔法をアルクに放った。
だがアルクはそれを切った。
「な?ふざけるな!なぜ模擬刀で魔法を切れる?」
「はぁ?そもそもこの程度の魔法で俺を倒せるとでも思っているのか?」
「なんだと!」
「なぁ、もう終わりにしていいか?」
「ふん、そう調子に乗るのはそこまでだ僕には剣もある」
グラウスはそう言うと剣を構え、アルクとの距離を詰め攻撃を仕掛けてくる。
「どうだ僕の剣術は、貴族しか習うことの出来ない剣術だ!」
と、グラウスは言っていたがアルクは模擬刀で全て避けた。
「な、なぜ一発も当たらない?」
「相手の間合いを覚えれば避けるのは簡単だ」
「平民が舐めるな!」
グラウスをそう言うと構えを取った。
(この構えは……魔剣流か……)
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魔剣流
世界的にも有名な剣術であり、魔法で中距離から遠距離、剣術と魔法の合わせ技で近距離と言った幅広い範囲の攻撃が可能になる。
――――――――――――
[魔剣流・魔斬]
グラウスは模擬刀で空を切ったがアルクは警戒を解くことは無く構えていた。
するとアルクの何歩か手前で違和感を感じ、勘で横に避けた。
その瞬間、アルクの居た場所に見えない斬撃が通ったのを感じ取ることが出来た。
「危なかった……」
「な!よ、避けただと!?」
グラウスは目の前で起こった事に驚いたが、アルクは冷静を保っている。
「それじゃあ俺もやってみるか……」
アルクはそう言うと剣を構えた。
「平民の剣術などどうせお粗末なものだ!」
と、観戦していた生徒が言ったがアルクは無視をした。
アルクは大きく踏み込み、グラウスの懐に潜り込み剣戟を挑んだ。
始めはお互い互角であったが、次第にアルクはグラウスを押していった。
「おい、平民がグラウス殿を押しているだと?」
「いやそんな訳がない。たまたまグラウス様の体調が優れない筈だ」
観戦している生徒はそう言っているがグラウスは体調は良い。
「平民が舐めるな!」
グラウスはそう叫ぶと力任せに剣を振ったが空を切った。
「グラウス……終わりにしよう」
と、アルクは言い。
[剣術・斬・八星]
アルクが放った八つの斬撃がグラウスに当たった。
「クソ……この僕が……へい……みんに」
と、グラウスの意識が無くなったのか倒れた。
「グラウス戦闘不能よってこの決闘アルクの勝利」
と、審判が言い決闘が終わった。




