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6-39 一時の休息

 アルクはイグゾースとルルを集め、防衛作戦の修正を行なっていた。


 だが、今までの黒龍の軍勢の予想外の動きにアルクは嫌気を刺していた。そこでアルクはとんでもない提案をする。


 それは次の防衛でアルクとイレナは敵陣を突撃して、ウルカハと黒龍の撃破、そして黒暗結晶の浄化の作戦を提案する。


「待てアルク。その作戦だと失敗した時のリスクが余りにもデカ過ぎる」


 イレナの意見にはイグゾースも頷く。


「だよなー……でもこの調子だとアイツら地面を潜って襲ってくるかも知れないんだぞ?だったら早めにやっとかないと」


「それではアルクよ。龍様を二体引き連れてはどうだ?」


「龍を二体も?そうしたらドラニグルの防衛が手薄になるかもしれないんだぞ?イグゾースはそれを分かって提案したのか?」


「もちろんそれも把握してる。だがそうでもしないとあなた達が余りにも危険すぎる」


「そうだが……ああ!ダメだ!眠すぎる!」


 アルクはイグゾースの言葉に反論しようとするが、睡魔のせいで正常な思考が出来ていない。


「クソあいつら……真夜中に襲ってきやがってよ……」


「アルク。お前は先に寝てていいぞ。私達はある程度寝なくても大丈夫だから」


「そうか?それじゃあ後は頼んだ……」


 アルクは元気のない声を上げながら、アルクは重い足取りで睡眠を取るために部屋に戻った。


「それじゃあイグゾース。作戦の事についてもう少し話そう」


「了解し……あの……」


 イグゾースは会議室へ強大な存在が近づくのを感じた。そして、会議室の扉が開かれるとグレイシスやファルカ以外にも新たな竜人が二体いた。


「おお!主が新しい妹とやらか!」


 茶色の肌を持つ赤い竜人はそう言いながらイレナの下へ歩いて行く。


「貴方は……炎龍であるルドですね?」


「いかにも!それより気安く兄と呼んでくれ!お前は吾の妹なのだからな!」


 ルドはそう言うと豪快に笑う。


「もしかすると貴方は姉であるセラシーンですね?」


 イレナはもう一人の青色の竜人へ話しかける。


「そうよ。初めまして。私の事は姉でもセラ姉と呼んでもいいわ。後敬語は無し!せっかくの家族なんだから!」


 セラシーンはイレナを指さしながらそう言う。そして、最後にファルカがイレナへ自己紹介をする。


「初めましてだな!僕は……知ってると思うけどファルカだ!一応お前の兄となってるから気を付けるように!」


 ファルカは嬉しそうにイレナに言う。実際イレナが生まれるまでファルカは末弟として兄や姉から色々と言われていた。


「ファルカ。その言動だと始めて見る者はイレナが姉だと思うわよ」


 グレイシスはニヤニヤと笑っているファルカに向かって言うと、ファルカはグレイシスを睨む。


「わざわざ言う必要ある?」


「まぁまぁ。姉弟喧嘩は良いけど程々にしてね……所でイレナ。貴方と居るはずの人間はどこに行ったの?」


「人間……アルクの事か!アルクならもう寝たぞ」


 イレナはアルクが寝た事を伝える。


「あらそうなの?疲れ溜まってるなら少しだけでも和らげるつもりだったのに……」


「それなら問題無いと思う。お母様から疲れを和らげる方法を教わってると思うから」


「そう?それなら良いんだけど……」


 セラシーンはそう言うと未だに口喧嘩しているグレイシスとファルカを止める為に向かう。


 ルドは赤い竜人の長であり国王でもあるイグゾースと話をしていた。


「お前がそうか!どうやら中々やれる体をしておる!」


「そ、それはありがとうございます」


「まぁ色々と話をしたいがまずはどの様な状況なのかファルカでも分かる程度に説明をしてくれ!」


 イグゾースは龍達にこれからの作戦やアルクの考えた作戦を伝える。アルクの作戦を聞き終えるとルドは豪快に笑う。


「イレナと奴で敵陣へ突撃すると!これまた凄い作戦を考えたな!」


「うーん……短期戦なら良いんだけどねぇ……流石に危険すぎるわよねぇ~」


「そうなんだよセラ姉。だから私の作戦だとある程度防衛して相手の戦力をある程度削る。その後に兄さん達を何人か連れて反撃するつもりなんだ」


 作戦を聞いていた龍達であったがファルカはしびれを切らしたのか机を勢いよく叩く。


「だらだらと話が長いよ!こんな長い話してる暇があったらルド兄さんの炎で敵が居そうな所を攻撃すれば良いんじゃないの?」


 ファルカの言葉にルドは手を叩く。


「確かにその通りだな!だがイグゾースの話だと今は暗いせいで敵が何処に居るか分からないそうだが?」


「それなら龍眼を使えば良いだけの話じゃないの?」


 龍眼とは純粋な龍しか扱えない眼であり現時点で使えるのはアルクやイレナ以外の龍達である。そして龍眼を発動すればありとあらゆる生物の熱を感知することが出来る。


「それは悪手よファルカ。私達でさえ龍眼を発動するのに大量の龍魔力を使う」


「グレイシス姉さん……でもアイツらが朝まで待ってくれるとは限らないよ?」


「その為に私達が来たんでしょ?」


「それもそうだけど……分かったよ」


「そう。良い子ね」


 グレイシスは渋々納得したファルカの頭を撫でながらそう言う。


「変わらずお前達二人は仲が良いんだな!」


「当たり前よ。何せ私にとってたった一人の弟だもの」


 ルドはある程度龍達の考えが纏まると会議室を出ようとする。


「兄上?どこへ?」


「取り敢えず外の様子を見るだけだ!安心しろ!朝になるまでは炎は出さないからお前達はくつろいでいると良い!」


 イグゾースはそう言うと会議室を出て、城壁の上へ向かった。


「くつろげって……ってかお腹空いた!ご飯食べたい!」


 ファルカはそう言うとファルカの腹から音が鳴る。


「確かにファルカの言う通りお腹が空いた。今思えばドラニグルに一刻も早く着くためにずっと飛んでたものね。セラ姉はどう思う?」


「私もお腹が空いたわね~。恐らく兄上も少なからずお腹が空いていると思うわよ」


「それでは今から準備しよう。ルド様の分も届けておく」


 イグゾースはそう言うと龍達を食堂に案内するために会議室を出た。


ーーーーーーーーーーーーーー

 禁域の洞窟で黒暗結晶にもたれかかっている黒龍ガイアは閉じていた目を開ける。


「それでウルカハよ。襲撃はどのような状況となった?」


 黒龍ガイアは暗くなり警戒が手薄となったドラニグルへ侵攻した事を帰って来たばかりのウルカハに聞く。


 ウルカハは更に先祖の姿へ近づいたのか見た目は更に変化していた。


「はい。上手く行って三枚の城壁の内、二枚を破れました。それにしても少ない兵力であそこまで破れたとは……この魔物共も中々やりますね」


「ああ。でも今はまだ成長段階だ。ゆくゆくは竜人以上の力を持ち、我の忠実な兵士となる」


「そうですですか……それでこの後の作戦は?」


「作戦?そんなものはない。朝になるのと同時に我らのすべてを使ってドラニグルを破壊する。お前もその時まで休憩するといい」


「分かりました」


 ウルカハは背中を向け、ガイアが休んでいる洞窟を出る。


(それにしてもやはり我の弟と妹が来たか……ふん!()()だけで我を止められると思うなよ!)


 ガイアは自身の体から闇を放ち後ろにある黒暗結晶へ吸わせる。


「我の闇を喰らい新たに生まれよ」


 ガイアの闇を吸った黒暗結晶は黒く輝くと、そこから新たな魔物が二体生まれる。だが、見た目は闇の魔物やウルカハが作った魔物と違って見た目が龍そのものであった。


 そして二体の魔物はガイアを一目見ると膝を地面に着いた。


「お前達には我の腹心である弟と妹と戦ってもらう。安心しろ。お前達は我直々に作ったのだ。力に自信を持つといい。分かったらどこかへ行け。我は寝る」


 闇の魔物達はガイアの言葉に頷くとゆっくりと洞窟を出た。


「それにしても身内がたったの二体しかいないのか?だが奴らは擬態するのが苦手だったはず……まぁ良い。アイツらでは我は止められない」


 ガイアはそう言うと黒暗結晶の闇を吸収しながら朝の襲撃に備えて眠りに着いた。

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