6ー36 黒龍戦争1
一匹の龍が空を優雅に飛んでいた。全身は白いが赤い線が頭から尻尾まで伸びている龍。それは世間的に炎龍、または赤龍と言われる生き物だ。
炎龍はとある者の命令によりドラニグルへ向かっていた。
「まったく……母上は龍扱いがひどいな……」
「その通りだ!兄上!」
突然声を掛けられ、炎龍は周囲を見渡すが誰もいない。そして、下を見ると水面を泳いでいる龍が居た。
「む?その声は……セラシーンではないか!お前が深海から出るとは珍しいな!」
炎龍はそう言うとゆっくりと水面ギリギリまで落ちていった。
「兄上は元気そうでなにより……それより兄上も母上からドラニグルに向かえと言われたのか?」
「ああ。それで黒龍が目覚めたと入れたんだが……最初は信じられなかった。だがこの濃い闇と龍魔力は奴しかいない」
「やっぱり……ところで新たに妹が生まれた事を知っているか?」
セラシーンは炎龍にそう言うと、炎龍は驚いたのか口から少量の炎が漏れた。
「知らないようだな……新たな妹が生まれたんだが母上と同じ光龍みたいだ」
「光龍だろうが戦闘経験が乏しければ力の持ち腐れだ」
「兄上は厳しいな」
「優しさと言ほしい。それにまたあの時代が来る可能性もある」
「言ってることも分かるが……それより残り二体来るらしいが誰が来るか知っているか?」
「確かファルカとグレイシスが来るはずだ」
「そうかそれ以外は来ないのか?」
「ああ。残りの弟妹は遠いところにいるらしい」
すると炎龍とセラシーンは昔に感じた事のある懐かしい嫌悪感を感じた。
「兄上。この気配は……」
「間違いなくガイアが目覚めた……急ぐぞ!」
「承知!」
炎龍とセラシーンはそう言うと更にスピードを上げ、ドラニグルへ向かった。
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ドラニグル王都防衛の為、前線に防衛用の要塞で兵士達は準備をしていた。
「お前達!早く配置に付け!敵は待ってくれないぞ!」
竜人の指揮官は黒いスライムの迎撃を準備する兵士にそう言う。既にドラニグルの王都の前まで大量の黒いスライムが地面を覆っている。
「それで兵器の方はどうなっている?」
指揮官は後ろに置かれている龍の頭の形をした巨大な大砲を見る。その兵器の名は龍頭砲と言い竜人の魔力と魔石を利用し大爆発を起こす弾を打ち上げる大砲だ。
「はい!兵器の方の準備は整いました!ですが残りの弾薬が……」
「輸送分はどうだ?」
「輸送分の弾薬も五個しか……」
「……仕方ない。あるだけ十分だ。お前達!こっちで魔力を充填してくれ!」
「「はい!」」
指揮官に呼ばれた竜人は龍頭砲の弾になる魔石に魔力を込め始める。
「残りの奴は配置に付け!ここで奴らを食い止めるんだ!魔法の用意をしろ!」
指揮官の指示の下、竜人の兵士達は魔法を唱え始める。
[[[疑似龍魔法・龍の火球]]]
兵士達が放った魔法は黒いスライムの大群に直撃し大爆発を引き起こす。だが消滅した黒いスライムより生き残っている黒いスライムはまだ多い。
「次、龍頭砲!用意!撃て!」
轟音と共に龍頭砲は発射し、先程の魔法同様に大爆発を引き起こす。
「待っている暇はない!各自魔法を撃って奴らの侵攻を遅らせろ!」
兵士達は各自自由に魔法を撃ち魔物の侵攻を遅らせるが、段々と前線要塞へと近づいて行く。そして遂に魔物が前線要塞の壁を登ろうとした時、炎の壁が生成される。
「燃えろおおおおおおおお!」
と、声が聞こえた瞬間、大量の炎が魔物へと降りかかる。
「何してる!早く魔法を撃って一匹でも多く減らせ!」
空中から声が聞こえ、兵士達が空を見上げると白髪の少年がいた。
「あれは……し、使者様だ!始祖龍様の使者であるアルク様だ!」
兵士達は神龍の使者であるアルクが応援に来た事に対して喜ぶと、アルクは剣に大量の炎を纏い魔物の群れへ突撃する。
「お前達!使者様に見習って魔法をどんどん撃て!」
アルクが来た事により下がっていた士気は段々と盛り上がる。そして大量にいた魔物は少なくなり、侵攻していた魔物は後退を始めた。
「下がった……魔物が下がったぞ!」
防衛戦が終わり勝った事を知った兵士達は喜びの声を上げる。
アルクは急いで前線要塞へ降りてとある事を言った。
「お前達!急いで王都へ戻れ!前線は大きく後退するそうだ!」
アルクの言葉に喜んでいた兵士達は静かになる。そこで指揮官はアルクに質問をする。
「使者様、何故王都へ下がるのでしょうか?次の侵攻も同じように迎え撃てば良いのではないでしょうか?」
「確かに言う通りだ。だが相手は闇から生まれた奴らだ。闇は常に変化している。今こうしている間にも闇は膨張を続け、魔物達はそれに順応しようとしている」
アルクは闇の性質について兵士達に話すが理解している兵士は少ない。
「あー……簡単に言うと戦況が常に不安定と言う事だ」
アルクが兵士達に分かる様に言うと納得する兵士が現れた。
「つまり物資の補給が不安定な前線より、補給が確実な王都の近くで迎撃するんですね!」
「その通りだ!だから早く戻れ!」
アルクの言葉と共に兵士達は前線要塞に置いてある兵器や物資を抱える分だけ抱え、王都へ戻った。




