6ー31 黒龍の使徒
ウルカハに飛び込んだリラは、そのまま攻撃をすると思いきや、白蜘蛛により張り巡らされた糸で急旋回をした。
それに加え、気で身体能力を向上させたリラの動きはとても素早く、ルルやイグゾースは目で追うのがやっとであった。
だが、元祖帰りをしたウルカハは素早く動き、素早く攻撃をするリラに何も動じずに立っていた。
そんなウルカハを見たリラは一度攻撃をやめ、ルル達の方へ寄って行った。
「クソ……鱗と鎧が硬すぎる……」
リラは自身の拳を見ると、拳から血が流れていた。
「リラ安心しろ。アイツは私がやる」
イレナはリラの頭を触りながらそう言うと、短く呪文を唱え、龍の翼とは少し違う光の翼が現れた。
ウルカハはそんなイレナを見ると、広角を上げ、イレナ目掛けて突撃してきた。
イレナの光は人間の光と少し違い、龍魔力が混じっている。イレナの光は人間の光と比べると、魔力量が多く光魔法の威力が高くなっている。
「そうだ!龍とは元来戦いを望む種族だ!本能に従え!理性など捨ててしまえ!」
ウルカハはそう叫びながら剣をイレナに向かって振るう。イレナは光で生成した剣でウルカハの攻撃を受けながら、反撃する隙を伺っていた。
ウルカハは攻撃しながら口に魔力を溜め始める。すると、左腕で光を放ち、イレナの気を逸らせる。
そのうちにウルカハはイレナの懐に潜り込み、となる呪文を放つ。
[龍魔法・龍の息吹]
イレナの懐に潜り込んだウルカハは、至近距離で巨大な炎を放つ。だが、イレナは光をウルカハの周囲に集中することにより、自身への被害どころか周りの被害を防いだ。
(落ち着け、落ち着け……相手は戦いに夢中だ)
イレナは自身に流れている龍の血が求めている闘争心を抑えながら、戦っていた。
元祖帰りの影響で本能で戦っているウルカハに対して、イレナは理性を保ちながら戦っていた。
だが、イレナはこの戦いで何が物足りなさがあった。
「なぁイレナ。今のお前が感じている事を教えてやろうか?」
「何の話をしている?」
「とぼけるな。今のお前にとってこの戦いは何が物足りないんだろう?」
「ほう。何でわかったんだ?」
「分かるに決まっている。今の俺は元祖帰りで龍に極めて近い。だからお前が感じている物足りなさを理解できてるんだ」
「じゃあ言ってみろ」
「良いだろう。今のお前が感じている物足りなさ。それは戦いを楽しまない事だ!」
「戦いを楽しむ?」
「はぁ……もういい。お前が龍種であることに期待していたが無駄だったようだ」
ウルカハはため息をつきながら呟くと、闇に耐えられていないのか胸を抑えていルルと、それを守るイグゾースを見る。
「先に……弱い奴からやる事にしよう!」
すると、ウルカハは反転し、ルルとイグゾースを殺そうとする。ウルカハの動きに気付いたイグゾースは大剣を構え、体中に魔力を流す。
「死にぞこないが……舐めるな!」
イグゾースはそう叫ぶと全身に炎を纏い、ウルカハを迎え撃つ。だがウルカハはイグゾースにどこか似た雰囲気を感じる。
「はああああああああ!」
元祖帰りで筋力が増加したウルカハとただの竜人であるイグゾースでは圧倒的な差があった。にも関わらずイグゾースはウルカハと衝突してなお、そこに立っていた。
「どけぇぇぇ!」
ウルカハは予想外の出来事に動揺し、イグゾースを殺そうと躍起になる。だが、イグゾースに剣は中々届かずにウルカハは焦ってしまう。
「イグゾース!下がって!」
リラはイグゾースにそう言うと、ルル達との距離を取らせるために全力で蹴る。だがウルカハは空中で体勢を立て直し、再び攻撃をするために走り出す。
だが、それはイレナの魔法とアレキウス神滅剣によって邪魔されてしまう。
「ゴミ共が……邪魔を……するな!」
ウルカハはそう叫ぶと、地面に広範囲の黒い魔法陣を召喚し、闇魔法を放とうとする。
[闇魔ーーー]
[闇魔法・黒雷]
すると、ウルカハではない誰かが発動した闇魔法がウルカハに命中した。
「この闇は……アルクめ。やっと来たか」
「なんだイレナ?一応全力で追いかけてきたつもりなんだがな」
黒い翼を生やしたアルクはゆっくりと地下空間を降りながら、イレナの問いに答える。
「にしてもここは闇が濃いな。お前達!大丈……ばなそうだな」
アルクはルルとイグゾースの様子を見ると、ルル達の周囲を魔力で覆う。
「さてと。あの竜人はと言うと……なんか面倒臭そうな見た目になってんな」
アルクは頭を抑えるウルカハを見る。
「闇を顕現に加えて元祖帰り。中々強くなってるじゃないか!まぁ黒龍が目覚める前に早く殺した方がいいな」
アルクはそう呟くと短く呪文を唱え、黒い片翼を生やした。
「全力で行く!イレナ!ついて来い!」




