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6ー29 膨張する竜暗

 禁域の中心にある黒暗結晶の浄化の為にアルクと別れたイレナ達。イレナは黒暗結晶に近づいているせいか、黒龍に近づいているせいか気分が悪くなっているのをイレナ自身感じていた。


 するとイレナ達は見覚えのある所へ到着した。


「ルル。ここって……」


「はい。前に一度ここに来たんですが……無い?」


 前に一度アルク達が禁域の中心にある洞窟に行ったとき、洞窟は崩されたがそこにあった筈の黒暗結晶が無くなっていた。


「イレナ様……これはまずいのでは……」


「そうだね。あれを見つけない限り周りに闇が巻き散らかされるだけだ……」


 イレナは急いで自身に飛行魔法を施すと、空へ飛び黒暗結晶を探そうとした。だが、そこでイレナはとある事を思い出す。


(あれ?あの竜人と黒龍はどこにいった?)


 イレナが黒い竜人と黒龍の事を思い出した瞬間、見えない何かによって飛行魔法を強制的に解かれ地面に落とされた。


「神龍の娘、イレナ。竜人の国の巫女。そして国の王イグゾース。お前達にはここで死んでもらおう」


 黒い竜人の声が辺り一帯に響くとイレナ達の足元の地面が割れ、巨大な地下空間へ落下していった。


「ふぅ。ルル、イグゾース!大丈夫か!」


「イレナ殿!こちらは大丈夫だ!ルルも怪我はしていない!」


 イグゾースの報告に安堵したイレナは地下空間の周りを観察する。すると、巨大な地下空間の周りの壁が黒い鉱石で囲まれていることに気付く。


 イレナが周りの壁の黒い鉱石の正体が黒暗結晶であることに気付くと、突然吐き気を催した。


「イレナ様!大丈夫ですか?」


「大丈夫……と言いたいところだがまずいな。ここは黒暗結晶によって作られた闇で充満してる。ここに長居すると体が崩壊する危険性がある」


「そ、そんな!では急いでここを!」


「簡単出ればいいけど……ほら。目の前にいるよ」


 イレナがそう言い、ルルとイグゾースは前を見る。すると、そこには黒い竜人だけが居た。


「前ぶりだな竜人。黒龍はどこに隠した?」


「イレナ。黒龍様をそんな簡単に出すわけがない。それにあの方はまだ目覚めていないからな」


「待て。何故私の名前を知っている?」


 前に一度禁域に入り戦っていたころ、アルクは何度かイレナの名前を叫んだことはあった。だが神龍の娘であることは一度も口に出していない。


「知っているに決まっているだろう。黒龍様は何でも知っている。そう言えばあの時は自己紹介がまだだったな。俺の名前はウルカハと言う。イグゾース。お前は多少はこの名前に覚えがあるだろう?」


「ウルカハ……そんな……ありえない。奴は50年前の竜人だ!それに奴は闇に触れたことにより死刑にした筈だ!」


 イグゾースの言葉にイレナは驚く。もし先程の話が真実ならば蘇った事になる。


「そうだ。あの時の俺は禁域に封じられた闇に触れたせいで死刑となり死んだ。けど俺は成功したんだ!八ツ首の禁呪に!」


 ウルカハの言葉にイグゾースとルルは動揺した。


 ウルカハが言った八ツ首の禁呪とは、500年前のドラニグルで初めて確認された魔法だ。その魔法を発動するには自身の魂を八等分にする。そして何ならかの理由で自身が死ねば八等分にした魂のどれかに意識が移され蘇る。


 当時のドラニグルは八ツ首の魔法を非道徳的魔法と認定し、禁呪として扱った。


「ところで光に一番触れているであろうイレナ。俺の闇の濃さはどうだ?」


 ウルカハはイレナにそう言うと、闇を周囲に巻く。


「嘘だろ?いくら黒暗結晶の近くに居たからってあまりにも……ウッ……闇の膨張があまりにも早すぎる!」


イレナはアルクの持っている闇とウルカハの闇を比べる。アルクが持っている闇はゆっくりと、だが着実に闇が濃くなっている。


 だが、ウルカハの闇はいきなり濃くなっている。


「今の俺は気分が良いから教えてやろう。俺は黒龍様の使者となった事であの方の力の一片を貰った。そのお陰で俺の闇の膨張が早まったのさ!」


 ウルカハの話を聞いたイレナは焦っていた。前に一度戦った時は黒龍の使者にはなっていなかった。


 だが、黒龍の使者となったウルカハの力は未知数となってしまった。


「さぁ!黒龍様が完全に目覚めるまで俺を楽しませてくれ!」


 ウルカハはそう叫ぶと口角を上げ、イレナ達へ突撃していった。


 イレナはウルカハを撃退しようとしたが、先にイグゾースが大剣を振り、ウルカハを迎え撃つ。


「遅い!」


 だが、ウルカハはアルクでさえ受け止めきれなかったイグゾースの大剣を片手で弾き飛ばし、ガラ空きとなった鳩尾を殴る。


 イグゾースが地面に膝をついたのを確認したウルカハは、残すと厄介になるであろうルルを仕留めようとする。


 だが、足が何かによって固定されているのか動かない。ウルカハは足を見ると、イグゾースの手がウルカハの右足を掴んでいる。


「いい加減に落ちろ!」


 ウルカハはイグゾースを気絶させようと頭を殴ろうとするが、イレナの剣によって止められる。


「私を忘れるなよ!」


「ハ!忘れるわけ……ねぇだろ!」


 ウルカハはイグゾースの手を払うと、一直線にイレナへ突撃していった。

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