6-28 新たな闇の魔物
アルク達を襲った黒い魔物はカルカと激しい戦闘を繰り広げていた。
「いい加減に……くたばれ!」
そんな叫び声と共に巨大な雷が一点に落下する。すると、カルカは上空にまた別の魔物の魔力を感じ取り上を見上げる。
だが、そんな動きも無駄だったように何かが黒い魔物へ落下し、黒い魔物を潰した。
カルカは黒い魔物が潰れ、魔力が無くなったことに安堵した。
だが、カルカは同じ黒い魔物の魔力と竜人の魔力を感じ取り警戒した。
「誰だ!黒い魔物と同じ魔力だが竜人の魔力も感じられる……答えろ!お前は誰だ!」
カルカの問いに突然現れた生き物は何も答えずに、土埃が収まるまで黙っていた。
そして土埃が収まるとそこには歪な黒い鱗を持つ竜人らしき者が立っていた。
(黒い鱗?まさかこいつが使者達の言っていた黒い竜人?)
カルカは警戒し、周囲に薄い雷の網を展開した。
しかし、黒い竜人は何も喋らずにゆっくりとカルカに寄っていく。
そしてカルカの展開した薄い雷の網の目の前までやって来ると、細長い腕を横に振る。
すると、雷の網は四散しカルカが無防備になる。そんなカルカに黒い竜人は瞬きの間に目と鼻の先まで高速移動する。
カルカはその瞬間に猛烈な死の感覚が迫り、目を瞑る。
だがいつまで経っても痛みを感じない。
カルカは目を開けると、黒い竜人はカルカを覗いたまま何も動かない。
すると、黒い竜人は口を初めて開く。
「お前は薄い」
黒い竜人はそれだけ言うと、再び飛翔しどこかへ飛び去ってしまった。
カルカは命が助かったと理解したのか腰が抜けて、地面に座り込む。
「ふぅ……俺ももう年だな。にしても何だったんだ?今の奴……待てよ……アイツが飛んだ方向……まずい!」
カルカは黒い竜人が飛んだ方向を思い出す。それ方向はアルク達が進んでいった方向である事を確信すると急いで黒い竜人の後を追って行った。
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アルクは離れていてもカルカと戦っていた黒い魔物の魔力が消えた事を感じ取った。だが、それと同時に闇と何かが混じった生き物の気配を感じ取る。
「何か来る……だけど初めて感じる魔力だ。なんだ?」
アルクは立ち止まり謎の魔力が感じ取る方向を見ていた。
「アルク?何してるんだ?早く行かないと黒龍が目覚めてしまうぞ」
「分かってるが……イレナ。お前が先導して先に行っててくれ。新手の様だ」
「そうか。まぁお前なら行けるだろう」
「任せろ」
イレナはそう言うと、ルル達を連れて禁域の中心へ先導していった。
アルクは急速に迫って来る謎の生き物をおびき寄せるために、魔力をわざと多めに周囲に解き放つ。
すると、予想通りに急速に近づいてくる謎の生き物は周囲に放たれたアルクの魔力に釣られ始めた。
(この魔力……あの黒い竜人と似ているが何かが違う)
アルクがそう考えているうちに急速に謎の生き物が迫り始め、肉眼でも黒い何かが見えるようになる。アルクは迎撃の為に剣を取り出す。
(何が起きるか分からない。最短で仕留める)
アルクは体を捻り始める。
[アレキウス神滅剣・塵風]
謎の生き物とアルクが直撃しようとした瞬間、アルクは前方一体に巨大な鎌鼬を起こし、全てを削いだ。
だが、謎の生き物は予想以上に高いのかアルクの剣が刃こぼれてしまう。
そして、アルクは目の前に落ちてきた謎の生き物の正体が何なのか理解した。
「おい……お前も闇の魔物かよ。魔力が竜人に似ているの奴に作られたせいか」
アルクによって攻撃された闇の魔物は土埃を立てながらゆっくりと立ち上がる。
だが、アルクの攻撃を受けたのか身体中の甲殻と右目、右腕が千切れていた。
闇の魔物はアルクを見ると雄叫びを上げ、アルクに迫って行った。
アルクは闇の魔物の攻撃を全て避け、残る左腕を切り落とす。
「生まれたばかりのお陰か動きが単調で助かる。奴に闇の魔物を生み出す事が出来たのは予想外だったが理解がイマイチだったな」
アルクはそう闇の魔物に言うと、剣を闇の魔物の胸に刺す。
「お前の闇。利用させてもらうぞ」
アルクはそう言うと、闇の魔物に込められている闇を吸い出し始める。
『アレス。浄化は頼んだぞ』
『なんだ?余計なの吸ってきやがったな。まぁ俺のやることは変わらないがな』
『後は頼んだ。あと多分黒暗結晶の闇を吸収すると思うからそれの浄化も頼んだぞ』
『了解』
アルクは自身の闇であるアレスに、闇の魔物から吸収した闇の浄化を頼むと、急いでイレナ達の後を追って行こうとする。
「使者殿!」
「ん?この声は……」
聞き覚えのある声の方向を振り返ると、そこにはカルカが居た。
「カルカ!そっちは大丈夫だったのか?」
「はい。私は大丈夫ですが……ここで黒い竜人は見ませんでしたか?」
「黒い竜人……あ~。あいつなら俺がもう殺した」
「殺した……さ、さすがです」
「取り敢えず早く合流したいが……途中でお前が連れた兵士達と別れたんだが見てないか?」
「見ていませんな。まぁあいつらなら大丈夫です。私が保証します」
「そうか。さぁ行くぞ!」
「はい!」
アルクの言葉と共にカルカは返事をし、イレナ達の後を急いで追って行った。




