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6ー22 長達

 アルクの居る牢から離れ執務室に戻る途中、アルクの処遇について討論した記憶を思い出す。


 あの会議はイグゾースにとっても無意味に近いものであったが、一つイグゾースにとって分かった事があった。


(この国がいつまでも前に進めないのはいつまでも自身の身の安全しか考えない馬鹿どもだな……)


 会議中にアルクの処刑を主張していたのはドラニグルが出来た時に関わった貴族の殆どであり、使者として扱う考えを主張していたのは革新的な考えを持つ貴族が殆どだ。


(近いうちに保守派の貴族たちの勢力を削る必要があるが……先に禁域の件が先だ)


 イグゾースはそんな事を考えながら自身の執務室に戻った。


ー-------------


 竜人の兵士により牢に入れられたアルクは禁域で起こった出来事を確認するため、始祖神龍であるクラシスに魔力を流していた。


 だが、ドラニグルとクプ二村へ距離が大きく開いており、魔力を届けるのに時間が掛かっている。


『ル……アルク?』


 アルクの頭の中に女性の声が聞こえるのが分かると、禁域で起こった出来事を簡潔に話す。


『そう……封印が予想より早いわね……』


『封印……やっぱり俺が言ってた巨大な影が黒龍で良いんだな?』


『そうよ』


『それでどうする?昔のあんたでも殺すことが出来なかったんだろ?』


『ええ。でも行けるかもしれない』


『なんで?』


『あの封印は無理矢理抜け出そうとすると自動的に闇を無くすように仕込んである。それがうまく作動すると貴方の方が闇の濃度が上になるわ』


『そうか……それにしてもまだ村から出れないんだな』


『当り前よ。だって主神様と結んだ契約を破ってしまったもの』


『ふーん……契約を破った代償はクプ二村に縛られるって事か?』


『契約の内容までは知る必要はない』


 すると、何者かに妨害されたのかアルクの送っていた魔力が途切れ始める。


『なんだ?誰かに妨害されてる!?』


『そろそろ限界の様ね。でもこれだけ聞いて。奴は今力が格段に弱ってる。だから……………』


『クラシス?おい!』


 どうやらアルクの流した魔力が途切れ、クラシスとの交信が切れた様だ。


(交信が切れたか……やっぱりあの黒い影は黒龍だったのか……まずいな。クラシスからは黒龍の存在は聞いた事はあるがどんな力があるのかは一切聞いていない)


 アルクは禁域で見た黒龍の事を思い出すが、何も黒龍について良い記憶が見当たらない。


(やっぱりまだ黒い影は完全に目覚め切っていないんだな……まぁ黒龍については明日解放された時にでも聞いた方が良いな。今は寝よう)


 アルクは牢の隙間から見える外の景色で夜という事に気付いたアルクは明日の為に寝る事にした。


――――――――


 翌日、目を覚ましたアルクは牢の中で兵士達が来るまで待っていた。


 すると、イグゾースの言う通りアルクは兵士達によって牢から出される。


「ん?どこに連れてかれるんだ?」


 アルクは兵士達に連れられていたが、見たことの無い部屋の扉の前に連れてかれる。


(七体の龍が描かれた扉……なんか凄そうか扉だな)


 アルクはそう思うと扉が開かれ兵士達に、中に案内される。


 部屋の中は薄暗く、扉の大きさと不釣り合いな程の広いが、椅子が八つしか無い。


 兵士達はそのままアルクを近くにある椅子に座らせる。


「今から竜人達が来ますのでお待ち下さい」


 兵士はアルクに言い、一礼するとそのまま部屋から出る。


(七体の龍が描かれている扉に八つの椅子……ダメだ。意味が分からん)


 しばらく扉について考えていると、扉が開く初めて見る竜人がいた。


(白い竜人と青い竜人?)


 部屋に入った竜人は人間の様に見えるが、鱗がイグゾースの様な赤ではない。


「貴様があのお方の使者か。弱く見えるが……」


 白い鱗を持つ竜人はそう言うと、青い鱗を持つ竜人が割って話す。


「見た目だけで判断するのは得策じゃ無いと思うぞ」


「そうか。それで他の者はまた来ていないのか?」


 白い竜人はそう言いながら椅子に座る。


 部屋が薄暗いせいで顔が良く見れなかったが、アルクの近くの椅子に座る事により、顔を見る事が出来た。


 しかし、アルクは白い竜人の顔に身に覚えがあった。


「え?クラシス?」


 白い竜人の顔は始祖神龍であるクラシスと瓜二つであった。


「クラシス?初めて聞く名だが……そんなに似ているのか?」


「はい。全く同じです」


「そうか。一度会ってみたいものだな」


 白い竜人はアルクの言葉を聞くを微笑む。


 すると、


「こいつか?老害どもが言っていた闇の使徒とか言う奴は?」


 と、水色の竜人が青い竜人に話しかける。


「兄者。言葉に気を付けろ。どこかで聞かれてるかも知れないんだぞ?」


「なんだ?青よ?ビビっているのか?」


「そうではない……だが……」


 青い竜人と水色の竜人が話していると、イグゾースが緑色の竜人と茶色、黄色の竜人を連れて部屋に入ってくる。


 そこでアルクは気づいた事がある。


 それは、七色の竜人がいる事だ。


 恐らく部屋の扉に描かれていた七体の龍は、それぞれが信仰している龍なのだろう。


 すると、緑色の竜人がアルクを良く見る。


「イグゾース殿に呼ばれて来てみれば……確かに強そうだな」


「ウィム。これは実力を試す機会でもあるんだぞ。見た目で判断するんじゃない」


「それもそうだな」


 突然の状況にアルクは戸惑っているが、イグゾースがアルクに説明をする。


「実はお主の処遇は使者として扱い続けるという結果になったから安心しろ。この場は本当にアルクの実力があるのか確かめるために六人の竜人が来ている」


「つまり強さを示せばいいのか?」


「そうだ。だがその方法は……」


 イグゾースは何やら話しづらそうにいた。


 すると、


「この中で一番強い赤いのとやってもらう」


 と、白い竜人がイグゾースの代わりに言う。


「そうだ。ワシとやり合って強さを見せれば良い」


 イグゾースや、他の竜人の言葉を聞いたアルクは驚くのと同時にどこかに楽しく待っている自分がいた。

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