6-17 禁域3
アルク達が洞窟内に入り、一番最初に思ったことは空気が重い事だ。
洞窟を進むごとに空気の重さが重くなっていくのを感じていく。
「ルル。一番奥まであとどのぐらいだ?」
「そう……ですね……あともう少し……あ!あれです!」
アルクはルルが指さした方向を見ると、前回面談で見たのと同じ黒い鉱石を見つけることが出来た。
「白。これが?」
「ああ。間違いなく黒暗結晶だ……早めに処理するぞ」
「分かった」
アルクは黒暗結晶を浄化する為に触れようとするが、透明な壁の様な物のせいで振れることが出来ない。
「ん?ルル。結界を張っているのか?」
「え?特に張っていませんが……」
「ふむ……少し離れろ」
アルクは右手に持っている剣で見えない壁を切ろうとする。
だがアルクの剣は透明な壁に当たらず空を切ってしまう。
「どうなってんだこれ?」
アルクは何も出来ない事に焦っていた。
「白。ここは私に任せてくれ」
「分かった」
イレナはアルクの前に出て、透明な壁に触れようとする。すると、イレナはアルクと違いすり抜けることが出来た。
「ルルもこっちに来て」
「は、はい!」
ルルはイレナの後に付いて行き、イレナ同様透明な壁をすり抜けることが出来た。
「この透明な壁……もしかして竜人以外入ることが出来ない?」
「分からん。お前達も入れるなら入ってくれ」
アルクは後ろに待機している騎士にそう言い、透明な壁の中に入るように促す。
だが、イレナやルルと違い騎士達は透明な壁をすり抜ける事が出来なかった。
「何故私達は通れないんだ!」
騎士達は竜人である自分達が通れない事に驚いていた。
(俺と竜人の騎士は通らなくてイレナとルルが通れる……龍の魔力か?)
アルクは何故ルルとイレナが通れたのか考え、一つの仮説を立てる。
(魔力変換……龍)
アルクはルルや騎士にバレない程度に魔法陣を組み、右手に龍魔力を流す。そしてそのまま透明な壁に手を伸ばす。
するとアルクの予想通り龍魔力を纏わせた右手が透明な壁をすり抜けることに成功する。
だがアルクはイレナ達に付いて行くことは得策ではないと考える。
何故なら人間のアルクにとって魔力変換を介して龍魔力を使うのには大量の魔力を使うからだ。
「白。取り敢えず浄化の件は私達に任せて」
イレナはアルクの考えを察し、浄化の提案をする。
「やり方は分かるのか?」
「ええ。お母さまにある程度教えて貰ってるわ」
「そうか……それじゃ……ッ!来るな」
アルクはそう言うと洞窟を振り返る。
「急いだほうが良さそうね……ルル!行くわよ!」
「は、はい!」
イレナはルルにそう言い、黒暗結晶の元へと走って行く。
「白様。来るとは何が来るのでしょうか?」
「結構な量の魔物が来る。さっさと外に出て片付けるぞ」
アルクはそう言うと、洞窟の外に出る。するとアルクの言う通り大量な魔物が居たが、既に洞窟の外で待機していたリラと白蜘蛛が戦っていた。
「凄い量だ……我らも加勢しなければ!」
二人の騎士は戦っているリラ達を手伝おうと前に出る。
だがそんな騎士達をアルクは止める。
「な、なにを?」
「この程度の量ならあいつらは平気でやれるから心配するな。それより問題は奥に居るやつだ」
「奥に居るやつ?」
アルクの言葉に騎士は森の奥を見てみる。
するとそこにはアルク達を襲った黒いスライムが居た。
「まずいな……さっきよりなんか雰囲気が違うぞ」
アルクは黒いスライムの微かな変化に気付いていた。すると黒いスライムは分裂し始め、十体に増えた。
それに加え分裂した黒いスライムはそれぞれ違う魔物に変形していった。
「お前ら気を付けろ。一筋縄では行かないぞ」
アルクはそう言った瞬間、黒いスライムに魔法を放つ。
だが、アルクの放った魔法は二体の黒いスライムに防がれ、反撃としてグラウンドグリズリーに変形したスライムが突撃してくる。
アルク達は黒いスライムの攻撃を避け拘束をする。
分裂したばかりのスライムは核がとてつもなく小さく見つけ、破壊するには時間がかかる。
「残り九体だ!油断す……る……」
アルクは騎士に警告しようとするが、それよりも先に黒いスライムは騎士の二人を分裂させる為、それぞれ三体ずつに分かれて襲ってくる。
「チ……それぞれ対応しろ!殺す必要はない!拘束するだけで良い!」
アルクはナイフを一番奥に居る黒いスライムに投げ、ワープする。
そのまま黒いスライムを切り刻み、地魔法で拘束する。
「残りは……こいつらか……」
残りの二体の黒いスライムはディエルと人型に変形していた。
それに加え、ディエルに変形している黒いスライムは体の至る所に甲殻が生えていた。
「一瞬で終わらす」
アルクは呟くと力強く踏み込み、先にディエルに変形した黒いスライムの両足両腕を切り落とし、拘束する。
「燃えろ」
アルクは切り落とした両腕と両足を燃やす。
「次はお前だ」
一瞬で拘束された仲間を見た人型に変形した黒いスライムは、恐怖のせいか少し後ずさりをする。
アルクは黒いスライムの隙を見逃さずに人型の黒いスライムを氷魔法で凍らせる。
「残りは……あいつらか」
アルクは黒いスライムとまだ戦っているであろう騎士達を助けるため、向かって行った。




