6ー16 禁域2
アルク達が禁域に足を踏み入れた同時刻、龍が再び目を覚ます。
「この魔力……厄介なのが二匹……まずいな……」
龍はそう言うと、立ち上がり上を見上げる。
上は前と同じように樹木の様に黒い鉱石が生えているが、前と比べ黒い鉱石を通して薄暗い空間が広く見えている。
「本来なら後の戦いで温存しておきたかったが……仕方ない。少し早めるか」
すると龍は全身から闇を放出する。
龍が放出した闇はそのまま上へあがり、黒い鉱石に吸収されていく。
「これで少しは早くなるが……もう少しやってやるか」
龍は闇を放ち続けながらそう言うと、龍は闇を放ち続けた。
ー-------------
アルク達が禁域に入り始め、しばらく経った頃アルクは闇が少しばかり濃くなるのを感じ取った。
「ルル。もしかして今洞窟に近いのか?」
アルクは闇が濃くなった理由が洞窟に近いせいなのかをるるに聞く。
「え?いやまだ遠いですけど……どうしたんですか?」
「いやなんでもない」
アルクはルルにそう言うと、ルルは若干の疑問を残しつつ洞窟に向かおうとする。
すると、
「な、なんだこいつ!?」
と、後ろを歩いていた騎士が叫ぶ。
アルク達は騎士の声に反応し振り返ると、黒いスライムの様なものが騎士の前に居た。
「え?なんだこいつ?」
「白でもこの魔物は見たことないのか?」
「いや。スライム自体は腐る程見た事はあるが……黒は初めて見るな」
アルクはそう言うと、警戒しながら黒いスライムの様な魔物に近づく。
――――――――――――――
スライム
Cランクの魔物に指定されており、弾力のある体に加え非常に耐久力がある。
スライムは切られたとしても無傷であり、切り離された部位から新たな個体が増える。
個体によっては別の魔物に擬態する事が出来る。
――――――――――――――
すると黒いスライムは膨らみ始めたと思いきや、グランドグリズリーに変形していった。
「擬態能力!?」
アルクは剣を引き抜き、スライムの弱点である核を破壊しようとする。
だが核を探そうにも体が黒い為、核を見つける事が出来ない。
(仕方ない。切り刻むか)
アルクはそう考えると、スライムを切り刻もうとするが、アルクの剣はスライムに受け止められる。
「硬い!なんで!?」
アルクは突然の出来事に戸惑っていた。
通常のスライムは体が柔らかく、剣を受け止めるほどの硬さが無い筈だ。
アルクは黒いスライムをよく見てみると、体の一部に鱗の様なものが生えていた。
(魔物の外見を真似るどころか特性まで!?)
スライムは自身が最も強いと感じた魔物に擬態する習性を持っているが、魔物特有の特性まで持つスライムは見たことが無い。
(新種か?厄介だな)
アルクは黒いスライムをよく観察するために一度距離を取ることにした。
「白?どうした?」
「イレナ……新種の魔物かも知れん」
「そんなに危険なの?」
「分からない。スライムの様な性質をしているが……嫌な予感がする」
アルクがそう言った瞬間、黒いスライムは再び形を変え始めた。
「え?また変身するのか?」
アルクは変形している黒いスライムを見つめていると、黒いスライムは人型になった。
すると人型に変身した黒いスライムは剣の様なものを作り出し、騎士に切りかかる。だが騎士は黒いスライムの剣を受け止め反撃した。
身を守るための鱗を失った黒いスライムは騎士の槍を正面から喰らい、腕がちぎれる。
[炎魔法・火球]
アルクは黒いスライムが繁殖する事を防ぐ為に腕を燃やす。
すると、黒いスライムは自身の体の一部を燃やされたのか怒りだし、騎士からアルクに目標を変えた。
「丁度いい。その姿になってくれたお陰で剣が通る」
アルクは黒いスライムの攻撃を避け、切り刻む。
すると、剣を振っているアルクは何か硬いものを切った感覚を感じる。
そのまま黒いスライムは人の形を維持する事が出来ずに崩れ落ちてしまった。
「なんとかやったみたいね」
「ああ。それにしても何だったんだ?コイツ?」
ルルはアルクの言葉を聞きながらとある事を呟く。
「あれ?禁域に結界を張るとき魔物を殲滅してからやった筈……どうやって……」
すると、誰かにルルの肩を叩かれ、振り返るとアルクが居た。
「早く進もう」
「は、はい!」
アルクの言葉に我に返ったルルは禁域に急ぐべく、速足で案内していった。
ー-----------
ルルの案内の下、ようやくアルク達は黒い鉱石が出現している洞窟にたどり着いた。
「なるほど……ここが……」
「白?どうしたの?」
「この洞窟から闇が放たれてるんだ」
「やっぱり……ん?ルル。大丈夫?」
アルクと話していたイレナだったが胸を抑えているルルが視界に入った。
「やっぱりおかしい。これ程の息苦しさ……」
「ルル。やばいと思ったら下がっても構わない。これは危険だ」
「白様……いえ。巫女としてここまで放置させていた私が悪いです」
「そうか。それじゃあ少し助けてやろう」
アルクはそう言うと、魔力をルルや騎士達に流す。すると、その魔力は全身に薄く纏まり始める。
「これで楽になるだろう。行くぞ」




