6-11 協力
ガルルの案内で宿に着いたアルクは、宿の大きさに驚いていた。
宿の大きさは五階建てであり、夜でも分かる程の白い石を使った壁が目立つ。
今までアルクが止まった事がある宿では、二階ほどの小さい宿だった。
(デカ!?……でも金策の為に比較的に安い所だったしな)
アルクは今まで自分が安い宿に泊まっていたかを再実感するのであった。
中に入ると高い天井に大きなシャンデリアが目立つ。
そこでアルクは違和感を感じる。
(あれ?これって……高い宿なんじゃね?)
いくら普通の宿でも五階建てならまだしも中の派手な装飾に違和感を感じた。
「なぁガルル……ここって高い宿なんじゃ……」
「そうだな……俺もアルナさんに教えられた宿に案内したんだが……これはすごいな」
アルクとガルルが話している所に男の竜人がやって来る。
「お待ちしておりました。アルナ様のご紹介にありましたイレナ様でしょうか?」
男の竜人がそう言うとガルルは何か思い出したのか、懐に手を伸ばし一枚の紙を取り出す。
「これアルナさんから渡された奴なんだが……どうだ?」
「確認いたします……ふむ。確認いたしました。イレナ様。部屋へ案内いたします」
「じゃあ俺は俺は自分の家に帰る。また明日」
ガルルはアルクに向かってそう言うと、宿を出る。
「それではこちらへ」
男の竜人がそう言い歩き出し、アルク達はその後を追う。
「ところでなんでアル……白じゃなくて私なの?」
イレナはアルナの招待状にアルクの事が書かれていないか気になった。
「それには分かりかねます。そもそも招待状にはイレナ様御一行としか書かれていませんから」
竜人がそう言うと、アルクはそっとイレナに耳打ちをする。
「多分お前が龍だからクラシスが送って来た使者がお前って事になってるんじゃないか?」
アルクの言葉にイレナはある程度納得する。
「まぁその方が俺にとっちゃ都合がいいから良いと思うぞ」
「分かったわ」
今の状況はアルクにとっていい状態だ。何故なら、周りからイレナは竜人に見え、人間と竜人、獣人が手を組んでる冒険者のリーダーだと思われている。
それに加えて、アルナはイレナが龍であることが知られているので、アルクよりイレナがリーダーだと思ったのだろう。
しばらく竜人の後を追っていると、いつの間にか四階の部屋に着く。
「イレナ様とリラ様の部屋はここでございます。白様と白蜘蛛は向かいの部屋になっております。何か御用でしたら部屋にある水晶からご連絡下さい」
「分かりました。後これ」
アルクは立ち去ろうとする竜人に銀貨を取り出す。
「わざわざありがとうございます。それでは」
と、竜人は銀貨を受け取りロビーに戻って行った。
「それじゃあ俺と白蜘蛛はもう寝るから。それじゃあまた明日」
「了解よ」
イレナはそう言うと、リラと共に部屋に入って行った。
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翌日。目を覚ましたアルクはある程度身支度を済ませ、これからの事について考える。
(アルナが巫女との面談が出来るように話をしてくれるが……まずはそこからだよなー)
昨日のアルナの話で黒暗結晶が発見された禁域に行くには、巫女の協力が不可欠だ。
昨日、アルナは巫女との面談の可能性は低いと言っていた。だが、巫女にとって面談は必ずしなければならない。
それはなぜ?
簡単な話、アルク達はドラニグルが信仰している神龍の使者だからだ。面談をしないという事は神龍の使者を拒絶するようなものだ。
そうしているうちにアルクと白蜘蛛が居る部屋のドアが叩かれる。
「白。起きてるか?」
声の主はイレナだ。
アルクは部屋のドアを開け、ドアの前で待っているイレナとリラを部屋に入れる。
イレナ達が部屋に入った事で、アルクはさっきまで考えていたことについてイレナ達に話す。
「そうか……確かに、アルクの話が正しければ面談はあるかもね」
「そうだ。それにお前は仮にも龍なんだ。それだけでもある程度竜人の対応も変わるだろ」
アルクとイレナが話していると、再び宿のドアが叩かれる。
「白起きてるか?俺だ。ガルルだ」
「入って良いぞ!」
アルクがガルルに向かってそう言うと、部屋のドアを開けガルルとアルナが入って来る。
「どうも皆さん。昨日ぶりです」
アルクはガルルとアルナを座らせるために、部屋の隅にある椅子を取る。
「わざわざありがとうございます。それで早速本題に入るんですが良いでしょうか?」
アルナはそう言うと、アルク達は巫女との面談だと分かった。
「巫女との面談の事?」
イレナは面談の事であるのか、アルナに聞く。
「はい。昨日神龍教の本殿に行って巫女に面談について相談しました。なんとか予定を開けてくれるらしいです」
アルクの予想通り巫女は面談をしてくれるそうだ。
「話は分かったわ。それで面談はいつになるのかしら?」
「巫女様との面談は夜にあります。巫女様も予定がありますので」
アルナがそう言うと、アルクは間に割って話す。
「話はだいたい理解した。俺達は俺達で調査をしたいんだが良いか?」
「それはもちろん。ちなみに昨日渡した腕章について覚えてますか?」
アルクはアルナから渡された腕章を思い出す。
「あの腕章にはワイバーンに襲われない特殊な魔法が組んであります。主に入国してきた人間に付けていただくようにお願いしています」
「え!?この腕章にそんな効果があるのかよ!?
アルナの言葉にアルクは驚く。
アルクにとってワイバーン自体はそこまで脅威ではないが、普通の人間にとってワイバーンは怪物に等しい。
その怪物相手にこの腕章だけで襲われなくなるのはすごい効果だ。
「取り敢えず私は伝えたい事は伝えたので私は帰りますね」
と、アルナはそう言うとアルクの部屋を出た。
アルナが部屋を出た事を確認したガルルは、アルクと話をする。
「まぁ俺は軽く立地を教えるのと監視だな」
「監視?」
「そうだ。だっていくら神龍様が寄こした使者でも警戒した方が良いだろ」
ガルルの言葉にアルク達は納得する。
「分かった。それじゃあ今日もよろしく頼む」
アルクはそう言うとガルルは頷く。
アルク達は急いで身支度を済ませ、朝食を取りガルルと王都の外に出た。




