6ー10 ドラニグル4
ドラニグルに異変が起こったのは今から三か月前。アルクが翔太達を引き取った時期と重なる。
その時に突如ドラニグルのとある場所で謎の黒い鉱石が生え始めた。
最初に確認された黒い鉱石は手のひらサイズの大きさだった。
だが、時間が経つのと同時に大きくなり、今では見上げるほどの大きさになった。
「という事なんだが……この話を聞いてなんか心当たりはあるか?」
ガルルはドラニグルに起こった異変をアルク達に言う。
(黒い鉱石……可能性としては黒暗結晶だと思うが……他にも黒い鉱石には心当たりがある)
アルクはガルルの話から黒暗結晶であるか、別の鉱石であるか悩んでいた。
「それじゃあ私達をその黒い鉱石の所に案内出来るか?」
イレナの言葉にアルナは悩んだ素振りを見せる。
「それなんですがね……場所が悪いんですよね……」
「場所が悪い?」
「場所なんですか……その……禁域なんですよ」
「禁域?」
「はい……私にも詳細は知りませんが禁域には巫女しか出入りが許されてないんですよ」
アルナの言葉にアルクは天井を見上げる。
「そうか……それじゃあ巫女に会う事って出来るか?」
「そうですね……望みは薄いですが面談できるか進言してみます。……あ!あとこれを」
アルナはそう言うと腕章をアルク達に渡す。
「これを付ければドラニグル王都内を自由に歩ける事が出来る。取り敢えず今日はここまでにして後は明日にしましょう。それに皆さんも王都内を見て回りたいでしょうですし」
アルナの言葉にリラは反応する。
「ありがとうございます!ところでアルナさん」
「なんでしょうリラさん?」
「王都でお肉が美味しいお店って分かりますか?」
アルクはリラが大の肉好きである事を思い出す。実際に冒険者の頃、高頻度でアルクとリラは肉を食べていた。
「それなら俺が案内するぜ」
リラの話を聞いたガルルは、案内するように名乗り出る。
「ガルルさん?まだ業務は終わってない筈ですよ?」
「え?でももう夜ですし……それにほら!腹が減ると兵士の士気も下がりますよ!」
「……分かりましたよ」
アルナがそう言うとガルルは嬉しいのかガッツポーズを取る。
「良し!それじゃあ行こうぜ!」
ガルルがそう言うと部屋を出る。
アルク達も荷物を纏めてガルルの後を追う。
「ガルル。これから行く店はどんな所なんだ?」
アルクはこれから行く店についてガルルに聞く。
「これから行く店はアルグールバカラが提供されてる店だ」
アルクはガルルの話を聞くと少し驚く。
何故ならアルグールバカラは牛型のBランクの魔物であり、世界各地に生息している。
だがアルグールバカラは比較的珍しく、アルクも何回か見た事はあるが他の魔物と比べて少ない。
肉は全体的に柔らかいが味が濃く、様々な方法で調理が出来る。
「それなら早く行きましょう!早く早く!」
リラはガルルの話を聞いたのか、アルク達を急かす。
そうしている間に警備隊の支部から出る。
城下町の様子はワイバーンの上から見ていたが、ちゃんと見れていなかった為、アルクは良く城下町の様子を見る。
全体的に町並みは石や煉瓦で作られており、二階建てや三階建ての家が繋がって家と家の間に出来る細い道が出来ないように建てられている。
「なぁガルル。なんでそれぞれの家のドアに違う龍の頭の飾りがあるんだ?」
アルクはそれぞれの家に飾られている龍の頭について聞く。
「あれか?あれはそれぞれの竜人の能力によって決められてる飾りだ。意味は後で教える」
アルクとガルルが話していると、アルクは周りからの視線に気付いた。今思い返してみれば、アルクはまだ仮面を被ったままだったのを思い出し、仮面を外す。
そうしているうちにガルルは店の前に立ち止まる。
「ここだ。入るぞ」
ガルルはそう言うと店の中に入り、アルクはその後を追う。
中は全体的に石が使われており、天井や壁、床だけでなくテーブルも石で出来ている。
すると、女性の竜人がアルク達に近づく。
「いらっしゃいませ!三名ですか?」
「そうだ」
「はい!それじゃあ、あの席へどうぞ!」
アルク達は女性の竜人に案内された席に座る。
「取り敢えず飯は俺に任せてくれ」
すると、ガルルは店員を呼び、どんどん注文していく。
「半分だそうか?」
アルクはガルルの頼んだ注文の多さに金の心配をする。
「安心しろ。ここは高そうに見えて安いんだよ。それに奢るつもりで連れて来たんだ」
「そうか?それじゃあ今日は甘えるか」
しばらくすると、ガルルが頼んだ料理がテーブルに届く。
アルグールバカラの煮込み、アルグールバカラのステーキやスープなどの様々な料理がテーブルに並ぶ。
「これで全部だな。それじゃあ食おうぜ」
ガルルがそう言うと、リラはナイフとフォークを取り食べ始める。
アルクはステーキの一部をバックに隠れている白蜘蛛に渡し、そのまま口に運ぶ。
口の中にはアルグールバカラ特有の濃い味が口いっぱいに広がる。
「ん!確かにこれは美味いな!」
「はい!」
しばらく経つとアルク達は料理を食べ追わり、ガルルと雑談をしていた。
「ところで街中で話してた飾りの意味について教えてくれよ」
アルクは街中で見た様々な龍の頭の飾りについての説明を促す。
「ん?あー、能力だっけか?アレは竜人の色について決められているんだ。例えば赤い竜人は赤い飾りで青い竜人は青色の飾りが付くんだ。ちなみに俺は何色だと思う?」
「色?」
アルクは竜人の色をあまり知らないためガルルをよく観察する。
すると、アルクはガルルの首にある鱗の一部が黄色である事に気付く。
「黄色か?」
「そうだ!黄色は雷龍の飾りがあるんだ」
「そんで色の違いで竜人になんかあるのか?」
「それはな、得意魔法の傾向があるんだ」
「得意魔法……じゃあお前は雷魔法が得意なのか?」
「そうだ!」
アルクの質問にガルルは答えると、自身でも知らない竜人の特徴が分かり楽しい気分になる。
「そうだ!ガルル、今日俺達が泊まる所って……」
アルクは宿の予約など何もしていない事に気がつく。
「宿の事なら安心しろ。アルナさんが既に取ってくれた」
「本当か!それは助かった」
「まぁ飯を食い終わったら宿に案内するつもりだったがな……そろそろ出ても良いか?」
ガルルはアルク達が夕飯を食べ終わるのを確認すると、代金を支払い宿に案内する為、店を出た。




