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6ー9 ドラニグル3

 竜人の国には神龍を祀る為の大聖堂がある。その中に一人の女性が片膝を着いていた。


「巫女様」


 一人の男の竜人が祈りをささげている竜人の女性に跪いた。


「神龍様のお告げは聞こえましたでしょうか?」


「はい……神龍様はこう言っておられました。これから世界に闇が広がる。その為には神龍様が送って下さった新たな龍種と一人の人間と手を組みなさいと。任せられるかしら?」


 巫女は振り返り男の竜人に言う。巫女は白い服を着ているが腰に赤、青、緑、黄、茶、白の装飾品がある。

 

「お任せください。それでは下々の者達に伝えましょう」


 男の竜人がそう言うと大きな扉を開け、外に出た。


(神龍様。貴方が送り込んでくれた者達は本当に安寧をもたらすことが出来るのでしょうか?)


 巫女は考え事をしていたが祈りに集中するために、考えを振りほどいた。



ー-----------------------

 

 ガルルにより取調室に案内されたアルクは椅子に座っていた。


「おーい白。またせ……どうしたんだ?仮面なんか被って?」


 アルクは冒険者の白で行動をするつもりでいるので、収納魔法から口無しの仮面を取り出し、被っていた。


 入国制限をしていたドラニグルは幸いなことにアルクの顔や白の正体がまだ広がっていない為誤魔化す事が出来ていた。


「仮面か?人前に出ると緊張するからな。緊張しないために仮面を被ってるんだ」


「そうか。それじゃあ色々と聞くぞ」


 ガルルはそう言うと、紙を机に置き、筆を執りアルクの前に座る。


「そんでもってな。そもそもの話どうやってドラニグルの王都まで来れたんだ?魔物はまだしも中はワイバーンが飛び回っているというのに……」


 竜人の国ドラニグルは広い森に囲まれていて、国土の真ん中に王都があり、それを広い範囲で囲むように小さい町がある。


 国境付近では魔物が生息しており、王都に進むたびに魔物からワイバーンが出てくるようになり密猟者を撃退してくれる。


 だがワイバーンも気まぐれであり、侵入者を見かけても気分次第で見逃すこともある。


 そのせいで密猟者が減ることが無く、遂にこの問題を限界に感じたドラニグルの王が入国制限を設け、出国入国に必ず手続きをしなければならなくなった。


「それならクラ……神龍様の命を受けてここまで飛んで来たんだ」


「え?人間のお前が?」


 アルクの言葉を聞いたガルルは信じようとしなかった。


「そうだ。後仲間もいるんだが……知らないか?竜人と獣人の二人組なんだが」


 アルクは一緒に飛んできたイレナ達の事をガルルに聞く。

 

「その報告はまだ来ていないな……まぁお前の言っている二人組を見つけたら取り敢えず報告する」


 ガルルがそう言った瞬間部屋のドアが叩かれる。


「ガルル。ちょっと良いか?」


「先輩?良いですよ」


 ガルルの返事と共に竜人の騎士と白い服を着た竜人が入って来る。


「先輩と……この人は?」


「こいつは神龍教の方でアルナだ。どうやらこの人間に用があって来たらしい」


「こいつって……一応竜人教の教徒なんだが……」


「別にいいだろ?」


 先輩とアルナが話し終わるのを確認したガルルは立ち上がり、椅子に案内する。


「分かりました。どうぞこちらへ」


「ああ。ありがとう」


 ガルルの案内によりアルナは白の前の椅子に座る。


「突然ですまないね。改めて言おう。私は竜人教の教徒であるアルナだ。よろしく」


 アルナはそう言うと手を伸ばす。


「俺は白と言う。よろしく頼む」


 アルクは差し伸べたアルナと握手をする。


「ふむ。良い手だ。相当な場面を踏んだと伺える」


 すると、再び部屋のドアが叩かれ、一人の竜人が入って来る。


「突然失礼します。報告をしたことが……あれ?この方は?」


「そんな事よりも報告を」


「はい!王都外で竜人と獣人の二人組、そして魔物を捕まえました!」


「え?それって……」


 竜人の報告にアルクは心当たりしかなかった。


「それって白が言ってた仲間じゃないか?ここに連れて来てくれ」


「わ、分かりました!」


「それじゃあ俺もアイツの案内が終わった事だし持ち場に戻る」


「はい先輩。お疲れ様でした」


 ガルルの言葉に竜人は返事をし、急いで戻った。


「お前って意外と偉い立場に居るのか?」


「まぁな……お?来たみたいだぞ」


 アルクはガルルの意外な立場に驚いていると、イレナと白蜘蛛を抱えたリラが部屋に入って来る。


「おー!意外と早く会えたな」


「ようやくって……アル……ムッ!?」


 イレナは行方不明だったアルクの名前を言おうとすると、白蜘蛛の糸によって口を防がれる。


「イレナさん。仮面を被ってる時は白って呼んでください」


「え?まぁ分かった……今まで何処にいたんだよ?」


 リラにアルクの冒険者の名前を教えられたイレナは言い直し、今までアルクが何処にいたのかを聞く。


「どこって……最初はお前達を探そうとしたが王都に行って再会した方が早いと考えたんだよ。実際早く会えたろ?」


「それもそうか」


「取り敢えず隣座れよ」


 アルクは空いている椅子に座るように促し、リラとイレナは椅子に座る。


「待って下さい……この隠しきれてない魔力……まさか……龍?」

 

 アルナはイレナから放たれている龍種特有の魔力を感じ取る。


「あれ?なんで?もしかして貴方が渡したこれ不良品なんじゃない?」


 イレナはアルクから渡された魔道具を取り出す。


「え?そんな筈ないと思うけど……」


 アルクはイレナに渡した魔道具を取ろうとする。


 すると、


「あ!それはイレナ様!貴方が持ってて下さい!」


 と、アルナは急いでアルク達に言う。


「イレナ様の龍の魔力を感じ取る事が出来たのは私が感じやすい特性だからです。この魔道具はちゃんと動いてますよ」


 アルナがそう言うと、イレナは魔道具を懐にしまう。


「まぁ色々と話したいんですが本題に入りますね」


 アルナはそう言うと、とある事について話し始めた。

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