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6ー8 ドラニグル2

 アルクがドラニグルの森で目覚める前、イレナも森の中で目を覚ます。


「あれ?アルク達はどこに行った?」


 イレナは森の周りを見渡してみると近くで足音が聞こえ、イレナは魔物と思い構える。


「この匂い……やっぱりイレナさんですよね!」


 と、聞き覚えのある声が足音が聞こえた方向から聞こえる。


「この声……リラか?」


「はい!」


 リラは元気よく返事をすると、茂みを乗り越えイレナに近づく。


「無事だったんだな。良かった……ところでアルクと白蜘蛛は知らないか?」


 イレナははぐれたアルクと白蜘蛛について聞く。 


「ごめんなさい。ご主人の匂いは感じ取れなくて……目が覚めて一番近い匂いがするイレナさんの所へ真っ直ぐ来たんです。白蜘蛛の匂いも近い……あれ?」


 リラは話している途中だったが何か気付いたのか、話を中断し手をよく見てみる。


「これは……蜘蛛の糸?」


 リラは自身の手から蜘蛛の糸が絡まっている事に気付く。そして蜘蛛の糸の先をよく見てみると森の中に続いて行く。


 イレナもリラと同様に手から蜘蛛の糸が絡まっている事に気付く。


「リラ。これは白蜘蛛の糸なんじゃないか?取り敢えずこれに従って行ってみるか?」


「はい」


 リラはイレナの提案に頷き、糸が続いて行く方向へ進んでいく。


「やっぱり……どんどん白蜘蛛の匂いが濃くなっていく」


 すると魔物が5体、木の周りに集まっている所にたどり着く。


「イレナさん!あの木から白蜘蛛の匂いがします!」


「分かった!」


 イレナはリラが指差した木を確認すると、収納魔法から剣を取り出し斬撃を飛ばす。


 すると、飛ばした斬撃は二体の魔物の首を跳ね飛ばす。


 イレナ達に気付いた魔物は目標をイレナに切り替えて襲い掛かる。


「ここは私に任せて下さい」


 リラはイレナの前に立ちそう言うと、腰を低くし構える。


(クラシスさんに教えて貰ったこの技で仕留める!)


 リラは自身の拳に氣を纏わせる。


[獣人拳法・狼牙]


 リラは手を貫手にし、最初に襲ってきたコボルトの脳天を抉る。


[獣人拳法・獅子落とし]


 次に襲ってきたゴブリンは懐に潜り込み蹴り上げ、そのまま空中に浮かせる。


 リラは上へ飛び、ゴブリンを踵落としの要領で落とし地面に叩きつける。


 最後の一体の魔物は自分だけで勝てないと判断したのか、襲わないで森の奥へ逃げて行った。


「ウウ……コワイ……」


 と、声がリラの指差した木から聞こえて来る。


 すると、木から白い蜘蛛が降りて来る。


「本当に居た」


 イレナがそう言うと、白蜘蛛はリラ達に気付いたのか周りを見渡しながらこちらに向かって来る。


「アルクシラナイ?」


 白蜘蛛もアルクが居ないことに気付いたのか、イレナ達に聞く。


「実は私達も知らないんだ」


 イレナはそう言うと何か考える。


「どうする?このままアルクを探すか、それとも私達でドラニグルに向かうか」


 イレナの提案にリラは悩み始める。


「本当はご主人捜したいけどあの人なら先にドラニグルに向かってそうなんですよねー」


 イレナとリラが迷っている時、白蜘蛛が間に割って入ってきた。


「アルクニツナゲタイト、ウゴイテタ」


「え?それってどう言う意味?」


「ナンカモノスゴクウエデハヤカッタ」


「それってドラニグルに向かってるって事じゃない?」


「そうですね……それじゃあ私達も急いで向かいましょう!」


 白蜘蛛の報告にイレナとリラは急いでドラニグルの首都に向かう事にした。


 最初はドラニグルの首都がどこにあるか分からなかったが、途中で人を乗せたワイバーンがイレナの達の頭上を飛んだ。


 イレナ達は一か八かの賭けに出て、そのワイバーンの後を追う。


 すると、賭けは成功し大きい城門が見えてきた。


 だが城門は固く閉ざしている。


 それを見たイレナはドラニグルは入国制限を設けている事を思い出す。


「皆。すこし下がってて」


 イレナはリラ達にそう言うと炎魔法を真上に放つ。


 イレナの放った炎魔法は空高くで爆発し、その爆発に反応したのかワイバーンの鳴き声が至る所から聞こえて来る。


「誰だ!お前達は!」


 ワイバーンの鳴き声に紛れ、言葉が聞こえる。 


 声の主はすぐに分かり、空高く飛んでいたワイバーンが急降下し、イレナの前に降り立つ。


「竜人がどうやって外に出た!それによく分からん獣人に魔物まで……」


「私達はお前達の巫女に用事があって来た!」


「巫女様に用事だと?」


「そうだ」


「素性の分からん奴らに巫女様に合わせるわけにはいかない」


 竜人の騎士がそう言うとイレナを指差す。


「それにそこの竜人。お前にはどうやって城壁を越えたか説明してもらわければならない」


「なんだと?」


 イレナは目の前にいる竜人の言葉に若干のイラつきを感じ、攻撃しようとする。


 だが、そんなイレナの行動をリラが止める。


「今は目の前の騎士の言葉に従いましょう」


 リラは竜人の騎士に聞こえないような声でイレナにそう言う。


「どうして?」


「大人しく従えば首都に入れるし、もしかしたら巫女に会えるかもしれません」


 リラの核心のつく言葉にイレナは納得する。


「……分かった」


 イレナは竜人の騎士に向かって戦闘の意思が無い事を示す為、両手を上に上げる。


「大人しくお前の指示に従う」


「ふむ。懸命な判断だ」


 竜人の騎士はイレナとリラの両手に手錠をはめ、白蜘蛛はリラの持っているバックに入っていく。


「変なことは何もするなよ」


 竜人の騎士はそう言うと何か合図をし、城門を開ける。


 城門を抜けるとすぐに街並みが見えてる。山をそのまま利用しているのか進む度に上へ登っていく。


「ここが竜騎団の支部だ。ここでお前達の取り調べを行う」


 竜人の騎士はそう言いながら支部に入り、イレナ達もその後に続いた。

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