6-7 竜人の国ドラニグル
「……あ?どこだ?ここ?」
目を覚ましたアルクは見覚えのない森を見渡していた。
「確か……転移して……あれ?」
アルクは転移した後の出来後の記憶が曖昧であった。
「それに……あいつらはどこだ?」
アルクは一緒に転移したはずのリラ、イレナ、白蜘蛛が見当たらなかった。
「仕方ない……魔法を使うか」
アルクはそう呟くと水晶を取り出し、呪文を唱え始める。
[汎用魔法・記憶投射]
すると、アルクの持っている水晶は水色に光だし、転移している途中のアルク達が写り始める。
汎用魔法・記憶投射
使用者の記憶を水晶を通して映すが出来、忘れた記憶も映すことが出来る。
転移したアルク達はクラシスが描いた魔法陣の上で転移が終わるのを待っていた。だが、ドラニグルに着く直前で魔法陣に亀裂が入り激しい魔力の流れに逆らえず、それぞれ離れてしまった。
「……面倒だが探しに行くしかないか」
アルクはそう言うと[汎用魔法・飛行]を使い空高く飛ぶ。
すると、遠くに崖がありその上に真っ黒な大きい城が建っていた。
(あれは……本で見たことがある。ドラニグルの王城だ)
アルクはドラニグルの城を確認すると周囲に探知魔法を放つ。
「魔物らしい反応は無いな……それにしても本当にあいつらどこ行ったんだ?」
しばらくそんなことを考えながら歩いていると見たことのない木の実を見かける。
「これは……カリュウの実か?」
カリュウの実
赤く全体的に丸いがゴツゴツしている。カリュウの実を口にすれば甘い味が口いっぱいに広がるが、直後に喉が焼けるような痛みが襲ってくる為、食べることは基本的にない。
また、カリュウの実はドラニグルでしか採れない。
「俺は食べないけど龍であるイレナなら食えるだろ」
アルクはそう呟くとカリュウの実を五個ほど採り、収納魔法に入れる。
「ん~。こんな広い国からどうやってあいつ等と黒暗結晶を見つけるんだってよ……あれ?そういえば……そうだ!」
アルクは何か思い出すとそれに向かって火弾を放つ。
ドラニグルの特徴は他の国と比べてワイバーンの生息数が多く、竜人とワイバーンはある程度意志を取ることが出来る。
アルクが冒険者時代の頃は竜人とワイバーンが力を合わせて密猟者や国境を守っているという情報を耳にしたことがある。
そこでアルクは手っ取り早くドラニグルに入るには竜人を誘き寄せる事が手っ取り早いと判断した。
すると、アルクの予想通り空中で火弾が爆発した直後、遠くからワイバーンの咆哮が聞こえる。
「誰だ!お前は!」
アルクの上から声が聞こえ、上を見てみるとワイバーンに跨っている竜人の騎士を見つける。
「丁度良いところに来てくれた。あんたの国の王か巫女と話をしたいんだが……」
アルクは頼み事を頼もうとしたがワイバーンにより放たれたブレスにより中断する。
「何をするんだ!」
「黙れ密猟者め!生きてドラニグルから出られると思うなよ!」
と、竜人の騎士がそう言うと再びアルクにブレスを放つ。
(クソ!話が通じない……どうする?殺るか?……いや。素直に降参して……あ!そう言えば)
アルクは竜人の騎士相手にどう対処すれば良いのか考えていると一つのことを思い出す。
「待て!これを見ろ!」
と、アルクは収納魔法から一つの袋を取り出す。
「な!?それは!」
竜人の騎士がアルクの取り出した袋を見ると驚いた声を上げ、ワイバーンと共に降りてきた。ここで初めてアルクは竜人の騎士の顔を見ることが出来た。
見た目は普通の人間に見えるが目がトカゲの様な目をしており、手にはワイバーンと同じ鱗が微少だがついてる。
「それを渡せ。詳しく調べたい……」
竜人の騎士の言葉にアルクは頷き、袋を投げ渡す。
アルクが持っていた袋はクラシスにより渡された袋であり、中には龍の魔力が込められた魔石が入っている。
「これは確かに龍種の魔力……これをどこで?」
「なんか困った時に使えと龍から渡された奴だ。詳しいことは王様か巫女が知っていると思う」
「そうか……でもこれがある以上信じるしか無いか……お前を国に連れて行って詳しい事を調べる。着いてこい」
竜人の騎士がそう言い、袋をアルクに返すとワイバーンに乗るように促す。
「後それは常に持っておいた方が良い」
「分かった」
アルクは袋を収納魔法に入れるのをやめ、そのまま手に持つことにした。
ワイバーンは竜人の騎士と合図と共に翼を羽ばたかせ飛ぶ。
「そう言えば自己紹介をしていないな。俺はガルル。短いと思うがよろしく頼む」
「分かった。俺は……今は白と名乗っている」
アルクは自分の前を出すか迷ったが、いくら鎖国しているとは言え闇の使徒としての名前は広がっていると考え冒険者の名前にした。
「白?変わった名前だな」
「まぁな」
2人が軽く言葉を交わすと、今まで遠く見えていた王城がすぐそこまで近づく。
「ここがドラニグル……すげぇ……」
遂にアルクは竜人の国ドラニグルの全貌を知る事になる。
ドラニグルはバルト王国と似たように街の周りを囲んでいるが、崖に隣接しているのか王城と城下町までに激しい高低差がある。
「一応お前は警備隊の所に連れて行って説明をする。変な事をしないでくれよ」
「分かった」
アルクは返事をすると、ガルルはワイバーンに合図を出すと急降下を始める。
アルクは舌を噛まないように奥歯を噛み締め目を瞑り、ワイバーンにしがみつく。
「着いたぞ」
ガルルがそう言うとアルクは目を開ける。
すると周りにはガルルと同じ装備をしている竜人の騎士が周りを取り囲む。
「ガルル!お前は何をしている!」
「待って下さい先輩!これには事情があって!」
ガルルは先輩と言われた竜人の騎士に、何故アルクを連れて来たのか説明をする。
「アルク。あの魔石を貸してくれ」
ガルルの言葉にアルクは素直を従い、持っていた魔石をガルルに渡す。
「ほら先輩。これを……」
「な!?この魔力は!この魔石を奴が持っていたのか?」
「はい!実際、奴が取り出したのをこの目で確認しました!」
「……分かった。そこの人間。しばらく取り調べをするからガルルの案内に従ってくれ」
「分かった」
アルクがそう返事すると、ガルルが部屋に案内し始めた。




