表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
125/271

6ー6 別れ

 アルク達が訓練をしてもう四日が経った。アルクは巨大樹の上に登って、月に照らされて眼下に広がる花畑を見ていた。


「やっぱりここに居たのね」


 声をした方向を見るとそこには翼を生やしたクラシスが居た。


「クラシス……」

 

「貴方は本当にここが好きよね」


「ああ。だってこんな綺麗な花畑を見れるんだ」


 すると花畑の至る所が赤、青、緑色に光りだす。


「妖精たちも楽しそうだな」


「ええ……アルク。実はね貴方が予言の青年だって思いたくないのよ」



 

予言の子

 10年前の闇の出現によりある程度経ったとき世界最高峰の占い師が自身の全魔力を引き換えに占い、闇を葬り去る予言の子が現れると占われた。

 そしてクラシスの予知夢ではその予言の子がアルクであると知った。




「え?なんでだ?」


「だって貴方は苦しんだのよ……それにどの時代でも予言の子はとてつもない苦難に苛まれて死んでしまう」


「だから?別に俺が予言の子であるとなんか思っていない。俺は村を壊したゴミを殺すだけだ」


 アルクには十年前のクプ二村崩壊の時から復讐を胸に進み続けてきた。


「それなのに黒暗結晶を浄化するのは手伝ってくれるのね」


「あんたが償いを終わらせないから俺も頑張るしかないじゃん」


「ふーん……」


「所で明日はどうやってドラニグルに向かうんだ?」


「簡単な話転移魔法で飛ばすだけよ」


「え?それって大丈夫なのか?」


 アルクの言う通り今の竜人の国ドラニグルは密猟者の増加により入国制限を設けている。


 もし人間であるアルクがドラニグルに入れば再び追われる身となってしまう。


「巫女に言ってるから大丈夫なはずよ。後イレナも貴方達に同伴させるわ」


「イレナか……まあ人数が多いことに越したことは無いな」


「そうよ。ついでにイレナともう少し仲良くなればいいんじゃない?」


「ん~頑張ってみる」


 アルクがそう言うと立ち上がる。


「俺はもう寝るわ。明日は頼んだぞ」


「任せなさい」


 クラシスが返事をすると巨大樹の上から飛び降り、自身の部屋のベランダへ着地した。


「もうあの時のような自身の弱さに絶望する貴方はいないのね」


 クラシスはアルクが子供の頃を思い出す。


「それでいて不安なの。この先貴方の身にどんな災いが降りかかるのか……」


 クラシスは空に向かってこれからのアルクの進む道を考えながら1日を終える。



 翌日、アルク達は最後の準備として必要な物を収納魔法の中に入れていた。


「そうだ!イレナ。これ持っておけ」


 アルクは収納魔法から白色の玉を取り出しイレナに渡す。


「これは?」


「自分の魔力を隠す魔道具だよ。少なくともお前が龍種である事がバレにくくなる筈だ」


「そう……一応感謝しておくわ」


 イレナはアルクと共に過ごした15日の間である程度警戒心が解けたが、まだ心のどこかでアルクの事を疑っていた。


「リラと白蜘蛛も大丈夫か?」


 アルクは後ろで道具整理をしているリラに声を掛ける。


「大丈夫ですけど……これは何ですか?」


 リラはまだ収納魔法を取得していなかった為バックを持っているのだが、その中に黒い玉を見つける。


「それは氣を回復させる丸薬だ。数は少ないが一応渡しておく」


「ありがとうごさいます」


 リラはそう言うとバッグの蓋を閉じる。


「コレナニ?」


 白蜘蛛はアルクの前に置かれている袋について聞く。


「これは龍の札だよ。これを見せれば巫女に合わせてくれるらしい」


「ヘンナノ」


 白蜘蛛はそう言うとアルクの背中に登る。

 

「準備が出来たら外に来てください!」


 クラシス言葉を聞いたアルクは先に外に出た。


 外には魔法陣を描き終えたのか手に着いた土を払っているクラシスが居た。


「これがドラニグル生きの魔法陣か?」


「そうよ。このぐらいの大きさなら三人と一匹は簡単に行けるわ」


「それは良いんだが……なんか不安だなぁ」


「安心してよ。それにちゃんとドラニグルの巫女に連絡したから」


 アルクとクラシスが話しているとイレナ達が外に出てきた。


「それじゃあみんなここに乗ってね。後はこっちでやるから」


 クラシスが言い終えると、クラシスの指示通りにアルク達は魔法陣の上に乗る。


「それじゃあ転移するわよ」


 クラシスはそう言うと魔法陣に魔力を流す。


「みんな頑張ってね」


 アルクはクラシスの言葉を聞いた瞬間、景色が高速で流れるような感覚を感じる。


 それを感じるとアルクは転移が成功したと感じた。


ー-------------------


 アルク達がクプ二村に着き訓練が始まった頃、翔太達はセイラの指導の下訓練していた。


 始めたばかりの頃は基礎的な体力づくりをしていたが、今は戦闘訓練として兵士達と模擬戦などしていた。


「はぁ……はぁ……」


「ショータもきつそうね」


 膝に手を置き息を切らしている翔太を横目に、セイラは水を飲みながら聞く。


「そうですね……後は刀を使いこなせればいいのですが……」


 翔太の言う刀とは前の戦いでアルクが残していった「黒赤刀」の事である。


 黒赤刀がミリス教に回収されたばかりの頃は闇の使いが使っていたこともあり、ひたすら浄化をしていた。


 そして一週間後、浄化が終わったのか黒かった峰の部分が白くなって翔太の手元にやって来た。


 しかし翔太が黒赤刀を握ってから何度も振っているが、思い通りに使うことが出来ずにいた。


「仕方ないさ。それにまだ呪いが残っているのだろう。私も実際に握ってみたがとてつもなく重く感じたよ」


 セイラはそう言うと翔太に水の入った水筒を渡す。


「これを飲んだら訓練に参加しろよ」


「はい」


 翔太はそう言うと水筒の水を飲み干し、訓練に再び参加した。




 訓練が終わり夕飯を終えた翔太達は眠りに着いていた。


 翔太は気が付くと白い空間の中に立っていた。


「え?なんか白い……」


「それはお前の光が覚醒しつつあるからだよ」


 イーグルは横たわりながらアルクに言った。


 翔太がこの空間に入ったのはこれで二回目だが周りの代わり様に驚いていた。


「そうなんだ……それで光はどのぐらい増えたんだ?」


「ん~まぁまぁだな。でも想定より早く光は使えそうになるからこのまま訓練を怠るなよ」


「分かってるよ……。ところで刀についてなんだけど……なんか知ってる?」


「刀?それってお前が行ってた黒赤刀の事か?」


「うん。なんか知ってる?」


 イーグルは黒赤刀について考えているのか座り直して顎に手を当てる。


「俺は何も分からんな。まぁ適当に魔力でも流せばいいんじゃないのか?」


「分かった。そうしてみる」


 翔太はそう言うと目の前がぼやける感覚に陥る。その瞬間翔太は目が覚めると感じた。


「ん……はぁ」


 翔太は目を覚ますとため息を吐く。


「取り敢えず魔力を流してみるか……」


 翔太はイーグルの言葉通り壁に立て掛けている黒赤刀に手を伸ばし、掴む。


 重さはいつもと変わらず重いが、翔太は気合いでそれを持ち上げ魔力を流す。


 すると、何も反応が無かった黒赤刀が光出す。


 その光を浴びた翔太の中に知らない記憶が送られる。


 それは燃え上がる村だった。そして目の前には黒赤刀を持っている一人の少年。


(助けて!)(みんなを逃して!早く!)(あなただけでも生きなさい!)(仇を取ってくれ!)


「は!はぁ……はぁ……今のは……嘘だ……」


 翔太はさっきの記憶について認めたく無かった。


 翔太が聞いた声と景色。


 そして黒赤刀を持った少年。


「あの子は……いや、あいつは!」


 翔太は直感的に気付いた。黒赤刀を持った少年の正体を。


「アルクさん……あんたは……」

 

 翔太はアルクが村の住民を皆殺しにした事を認めなく無かった。

 だがこの記憶はあまりにも鮮明であった。


「止めないと……あの人を……」


 翔太はそう言うと黒赤刀をしまい、もっと強くなるために訓練をするのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ