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6-4 故郷5

 アルクの振った剣がレイリンに振り下ろされるが、レイリンはそれを冷静に見切り反撃をする。


[我流剣術・魔空斬]


 アルクはレイリンの反撃を乗り切ると、剣を振った位置に残っている魔力を発動させ斬撃を発生させる。


 だがそんな攻撃もレイリンは見切る。


「はぁ!?」


 斬撃を避けたレイリンにアルクは驚愕の声を上げる。


 先程の攻撃は不可視の攻撃であり、レイリンに見せるのはこれが初めてだ。


「待てよ……まさか……精霊眼を使ってるな!」


「ほう……よく分かったな」


 レイリンがそう言うと両目から青い炎が現れる。


ー---------- 


 精霊眼

 エルダーエルフにしか使えない魔眼であり、始祖精霊と契約することにより初めて使える。精霊眼を発動すると目から青い炎が発生するのが特徴だ。


 性能としては空気中や生物の体内に流れる魔力を感知、流れを先読みと言った未来予知に近いことが出来るようになる。


 

ー-----------


「あんた卑怯だぞ!」


「卑怯?何を言っておる?殺し合いに卑怯も何もないじゃろ」


「そうかよ……じゃあ俺も遠慮なしにやってやるよ」


 アルクがそう言うと体内に残っている魔力を右目に集める。


「そうか……お前も遂に使えるようになったのだな」


 アルクが右目に魔力を集め終えると、右目の周りに小さな魔法陣が発生する。


「あれは……龍魔法陣?どうして人間であるアルクが……」


 イレナはアルクの右目に現れた魔法陣に動揺する。龍魔法陣は龍種にしか扱えない魔法陣の筈だ。


「イレナよく見ておけ。あれがクラシスの加護を持っている者が扱える魔眼[龍眼]じゃ」


 アルクは目の周りに発生していた魔法陣が小さくなり右目に収縮していくとアルクの右目が赤色の炎に包まれる。


「十年前にお前に神龍の加護が付いてからようやくお主の目が見れるのか……」


 レイリンがそう言った瞬間、アルクは距離を詰め攻撃をする。


 だが、レイリンの精霊眼によって先読みされ反撃されるが、アルクはレイリンの反撃を避け攻撃をする。


 今度はレイリンが攻撃を仕掛けるがアルクはレイリンの攻撃をすべて見切る。


[アレキウス神滅剣・雷轟斬]


 レイリンは剣に雷を纏わせ拘束の斬撃をアルクに放つ。


 だがアルクは動きを先読みしていたのか、レイリンの斬撃をすべて跳ね返した。


「そうか……これが龍眼の力か……」


 レイリンは龍眼を解放したアルクの強さに驚愕していた。


「なんだ?龍眼を見るのは初めてか?」


「そうじゃ……何度かクラシスと戦っていたが龍眼は初めてじゃ」


「そうか。じゃあ龍眼について教えてやるよ」


 アルクは龍眼の力についてレイリンに教える。


ー-----------


 龍眼

 始祖神龍の加護を持ったものにしか使えない魔眼である。

 

 魔眼を発動する条件は人間の場合、自身の魔力の半分を消費し、消費した分の間使える。普通の人間ならば5秒も持たずに終わってしまうが、龍であるイレナを超える魔力量も有しているアルクだからこそ使える魔眼だ。


 性能としては空気中と生物の熱を感知することが出来、熱の動きにより未来予知に近い力を持つことが出来る。


ー-------------



「おいおい、これだと先読み対決じゃねぇか」


「先読み対決……残念じゃったなアルク。先読みならワシの方が一枚上手……じゃ!」


 レイリンは力強く踏み込むと、アルクとの距離を一瞬にして詰め、切り上げる。


 だが、龍眼を解放したアルクの先読みにより簡単にレイリンの攻撃が避けられる。


「油断するなよ」


「え?」


 すると、避けたはずのアルクの体に大きく切り傷が発生する。


(は?どう言うことだ?)


 アルクは龍眼の熱感知によりレイリンの攻撃を先読み、避けた筈。


「龍眼は熱感知により相手の動きを読むことが出来る。じゃが魔力を直接見る事が出来ない。それは知っておるな?」


「ッ!まさか!」


 アルクはレイリンの言葉に気付き、レイリンの剣を見る。すると、レイリンの剣には剣の数倍の大きさの魔力に包まれていた。


 アルクにはレイリンの魔力を見るのに時間が掛かるが、レイリンの精霊眼では剣の周りに青い煙が写っている。


「なるほど……龍眼対策か……」


「そうじゃ。だって今のお主は魔力の流れを完全に断ってて先読みできないもん」


「逆に言えば熱の動きしか見れない俺にとっちゃ天敵なんだよ」


 アルクはそう言いつつ今度は身体強化を施しレイリンを攻撃する。


 レイリンは魔力の流れ、アルクは熱の流れの先読み対決を始める。


 お互い激しい攻防を繰り返し、その余波が離れて見ているイレナまでに届く。


「嘘……こんなに離れてるのに斬撃が届くの?」


 イレナはただ見てるだけにはいかず、戦いで飛んでくる無数の斬撃を避けていた。


「そんな物か?アルク!」


「まさか!」


 レイリンの挑発にアルクは乗り、剣に魔力を纏わせる。


[アレキウス神滅剣・陽光断ち]


 アルクは高速且つ広範囲の一閃をレイリンに放つ。

 

 レイリンは魔力の流れにより先読みをしていたが、想定していたよりの遥かに広い斬撃により思考が一瞬鈍り、受け止めてしまう。


「取った」


 アルクはレイリンの隙を逃すわけもなく、上から詰めてレイリンに剣を振る。


[精霊魔法・元素化]


 レイリンは魔法を唱え、アルクの剣が当たる。だがアルクの剣はそのままレイリンを切れずにすり抜けてしまう。


 アルクはレイリンの姿を龍眼なしに見ると、レイリンが煙になっていた。


「ふぅ……今のは流石に危なかった」


「ッチ……でも何気に精霊魔法を見るのは今のが初めてだな」


 アルクはレイリンと過ごした二年間を思い出す。何度かレイリンと戦ったが一度も精霊魔法を見たことが無かった。


(まずいな……精霊魔法について何も知らないから対策法が分からない……)


 アルクは精霊魔法に対して知識が無かったため、どうすればいいのか分からなかった。


「安心せい。わしの使う精霊魔法は[元素化]だけじゃ。だからビビらず来い!」


「分かった。じゃあ……行くぞ!」

 

 アルクはレイリンの言葉を信じ、今度は全身の魔力を解放する。


[独自身体強化術・羅刹]


 アルクは龍眼に加え身体強化を施す。


「これは……そうか。完成していたのか」


 レイリンは瞬きをする。すると、一瞬でレイリンの視界がアルクの魔力に覆い隠される。


 そのままレイリンはアルクの魔力により、アルクを見失ってしまう。


「グゥ!」


 レイリンは背中に鋭い痛みを感じたと思うと、すぐに熱くなる。


「面白い……来い!」


 レイリンは精霊眼を解除し、自分自身の目でアルクを迎え撃つ。


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