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6ー3 故郷3

 剣を構えお互いの準備が出来たことを確認したレイリンは、戦いの合図を言った。

 

 先に仕掛けたのはイレナの方で[アレキウス神滅剣・次元斬]で斬撃を放つが、アルクは最小限の動きで攻撃を避ける。


[アレキウス神滅剣・雷轟斬]


 アルクは剣に雷を纏わせ左右、上下、前後に移動してイレナを攻撃する。だが、イレナはアルクの動きを予想して、アルクの攻撃を防いだ。


「まぁそうだよな……」


 アルクは相手が龍種という事もありある程度の能力は自分より上と考えていたが、アルクの予想通りであった。


「そこだ!」


 イレナはずば抜けた動体視力と反射神経を駆使し、アルクの攻撃を避け反撃を腹に放つ。


「どうした?そんな物なの?」


 イレナの反撃を喰らったアルクは腹を抑えながらイレナを見る。


「まさか。これが本気とでも?」


「本気を出したら?」


「んー……別に良いか……」


 アルクはそう言うと全身に魔力を巡らせる。それを見たイレナは驚いたのか後ずさりをする。


「ありえない……人間の身でありながら私よりも……いや……お母様より……」


 イレナは人間であるアルクの身から放たれる魔力量に驚いていた。


 イレナは瞬きをする。だが、イレナはそれが悪手だとすぐに気付く。

 なぜならさっきまで目の前にいた筈のアルクがいないからだ。


 イレナはアルクを探そうと周囲を見渡した瞬間、首に強い衝撃を感じ、そのまま気絶した。


「ん?もう終わりか?」


 レイリンは意外と早い決着に呆けていた。


「だって本気出せって言われたから……」


「まぁ過ぎたことは仕方ない……それにイレナならすぐに起きるじゃろ」


 レイリンの言った通り、イレナは目を開けて周囲を見渡した。


「アルク……さっきのはなんだったの?」


「それはーー」


「わしが説明する。さっきのはアルクが考えた独自技能じゃ」


「独自技能!?それであんな事出来るんですか?」


「普通は出来ない。もし普通の人間がやろうものなら直ぐに魔力欠乏を起こし死んでしまう。だが魔力量が異常に多いアルクだけが出来る代物じゃ。アルクの独自技能は全身に大量の魔力を流し、動体視力や反射神経、筋力を大幅に上げる」


 レイリンの説明を聞いたイレナのアルクの底無しの魔力量と技術に驚く。


 またそれと同時にレイリンと神龍が言っていた「アルクの方が強い」は事実だと知った。


「そうだ。師匠に一つ頼みたいことがあるんだ」


「む?なんじゃ?」


「師匠にリラを鍛えてほしいんだ」


「あの娘にか?」


「そうだ。俺は獣人について詳しくない。でも長生きしてるあんたなら獣人についてある程度分かるだろ?」


 レイリンは顎に手を当て考えていたが渋々頷いた。


「まぁいけるじゃろ」


「それじゃあ明日から頼めるか?」


「大丈夫じゃ」


 レイリンが答えるとアルクは振り返り巨大樹を見る。


「あれだけは何も変わらないな……」


 アルクはそう言うとリラ達のいる巨大樹へ帰って行った。


「師匠……」


「どうした?」


「アルクは言ったどれ程の絶望を味わってたんですか?」


「それはわしでも分からん……でも言える事は十年前の惨劇でアイツは確実に変わった……でも安心しろ。お前も強くなれる」


「それを聞いて少し気が楽になりました」


 イレナはそう言うとアルクと同じように巨大樹へ帰って行く。


「スイナ、ケンイ……お前達の息子は確実に強くなっておる」


 レイリンは虚空に向かって言うと巨大樹へ帰って行った。



ー-------------


 アルクとイレナが戦いを始めた頃、リラは神龍と話をしていた。


「まずはちゃんとした自己紹介からね。私はクラシス・ノヴァ・ホワイト。クラシスって呼んでほしいわ」


「私はリラです。獣人で夜狼族です。これからよろしくお願いします」


「うんよろしく。突然だけど貴方には今よりももっと強くなってほしいの」


「そうなんですか?」


「ええ。貴方はこのままだと闇と戦う所かアルクの足を引っ張ってしまう……そこに居るホワイトスパイダーもそうよ」


「でもどうやって訓練するか分からなくて……」


「それは大丈夫。なんせここには長生きしているレイリンや私がいる。恐らくあの子はある程度ここに滞在すると思うからその間に貴方とあの子を強くする……辛いけど付いて来てほしいわ」


「分かりました。ご主人も頑張って来たんです。私も頑張ってご主人の役に立ちます!」


「その意気よ。訓練は明日からやるから今日は休んどいて」


 クラシスそう言うと巨大樹に穴が開き、そこからアルクとイレナとレイリンが入ってきた。


「神龍……ああ!ダメだ!クラシス。しばらくここに居ることになったからよろしく頼む」


「分かってるわよ……夕飯を食べた後貴方達に話があるから待ってて欲しいわ」


「分かった」


 クラシスは夕飯の準備をするため料理場に向かって行く。


「所で左腕はどうするの?」


 と、クラシスは切断され無くなっていたアルクの左腕について質問をする。


「確かここに魔封じの赤布があっただろ?それを使って左腕を作るさ」


「分かったわ」


 クラシスは収納魔法から赤い布を取り出し、アルクに渡す。


「これが魔封赤布……初めて見ました」


 イレナは魔封じの赤布を見ながらそう言う。


「貴方の場合は使う必要もなかったしね」


 クラシスがそう言う。


 するとアルクは左腕の切断面を傷つける。アルクはそこから流れた出した血を魔法で手の形に形成する。


 そしてそのままの状態で左腕に魔封じの赤布を巻き付ける。


 そうする事で擬似的に左腕を作り出した。






 夕飯を取り終えた6人はクラシスの言う通り、部屋には戻らずに食卓にいた。


「クラシス。話とはなんじゃ?」


 レイリンは食後の酒を飲みながらクラシスに聞く。


「ええ……もう知ってるかも知れないけど闇が活性化している」


「今更?」


 アルクはクラシスの報告に困惑している。


「ちょっとアルクは黙ってて……それともう一つ……黒暗結晶が世界中に出現する予知夢を見たわ」


 クラシスの言葉を聞いたイレナは驚きのあまり机から身を乗り出す。


「ついになんですね!?」


「ええ。というかその内の一つはここに居るアルクが浄化したわ。だから残りは七つ」


「それで?それはいつ全部現れるか見えたのか?」


「全部は見れなかったわ。でも一つは分かったわ」


「どこに現れるんだ?」


「今から15日後。私が作り出した種族の国、竜人の国ドラニグル。そこに黒暗結晶が現れるわ」


「ドラニグルか……よりによってドラニグルか……」


 アルクは竜人の国ドラニグルと言う言葉を聞くと頭を抱えた。


 近年ドラニグルは増加する密猟者対策として人間の入国を制限していた。


「アルク。そんなに心配しなくていいわよ。だってドラニグルにイレナも一緒に行かせるつもりだし、ドラニグルには私の加護を持っている巫女がいる。貴方たちがドラニグルに行くときに巫女に知らせれば行けるわよ」


 竜人の国ドラニグルは始祖神龍であるクラシス=ノヴァ=ホワイトを信仰の対象として崇めている。


「今回は運よく黒暗結晶は見つかったがドラニグルは簡単そうだな」


「そうね。もしかしたら竜人達も黒暗結晶の捜査を手伝ってくれるんじゃない?」


「うまくけばいいけどな……って師匠聞いてる?」


 アルクは先程から何も言わない違和感を感じ、何をしているのか聞く。


「グー……グー……」


「ね、寝てる……」


「まぁあんだけ酒飲んでたらそうなるわな……」


 アルクはそう言うとレイリンを抱え上げる。


「俺は師匠を部屋に連れて行ってから寝るね。クラシスはリラと白蜘蛛を部屋に案内してくれ」


「分かったわ。リラと白蜘蛛。部屋に案内するわ」


 クラシスはそう言うと、リラと白蜘蛛を部屋に案内した。


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