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6-2 故郷2

 空高く聳え立っている巨大な木を見たリラは余りの高さに驚いていた。


「ご主人……これは何なんですか?」


「これか?これは神龍様の家だ」


「え?今なんて?」


「ん?あー……そう言えば言ってなかったな。この方はは五代始祖神の人柱。始祖神龍本人だ」


 アルクはリラにそう説明をするとリラは気が遠のくような感覚に陥った。


 アルクは当たり前のかのように言っているが、リラや普通の人から見るとありえない状態だ。


 何故なら始祖神は全能神により生み出された存在であり、人前に姿を現すことは基本的にあり得ない。


 だが、アルクやリラの前ではそのあり得ない事が起きている。


「まぁ良い奴だから気楽にしていっていいぞ」


 しばらく巨大な木の目の前に着く。すると、木に穴が開きそこには広い空間が広がっていた。


 アルク達が中に入ると、木の穴が塞ぐ。


「そうだ。神龍様。ついでにリラの部屋も作ってよ」


「分かったわ。どこが…………」


 神龍はアルクの頼みを快諾しリラを見る。すると、神龍はリラを見たまま動けずにいた。


「アルク……あなた……随分と面白い子を連れてきたわね」


「でしょ?」


「しばらくここに残るならレイリンに稽古を受けて貰えば?」


「そうするつもり。てか師匠はどこにいるか分かる?」


「彼ならもう少しでここに着くわ……イレナ……いつまでそんなところに居るの?」


 神龍はアルクと話していると、一人だけ遠くに居るイレナに声を掛ける。


「何でもないです。気にしないでください」


「そう?ならいいけど」


 と、神龍がそう言った瞬間アルク達が通った気に穴が開き、髭を生やした老人が入ってきた。


「師匠!久しぶり!」


「なんじゃ?随分と帰ってくるのが早かったの」 


 アルクが師匠と言った人物こそ、アレキウス神滅剣二代目継承者であるレイリン=アレキウスだ。


「それにそこのちびすけ達はなんだ?」


「ああ。俺の仲間のリラと白蜘蛛だ」


「は、初めまして。獣人族のリラです。この子はホワイトスパイダーの白蜘蛛です……」


 リラは緊張しながら自己紹介をすると神龍と同じ様に、リラを見つめたまま動かないでいた。


「ふぬ……中々良いの」


「え?え?」


「こっちの話じゃ。気にしなくて良い」


 レイリンはそう言うと近くにある椅子に座り、手にぶら下げていた酒を飲み始める。


 アルクはそんなレイリンを見ると呆れたようにため息をつく。


「はぁ……まだ昼前だぞ?」


「別に良いじゃろ。それにわしはもう歳じゃ。いつ死んでも良いように酒を飲んで何が悪い?」


「10年前からずっとそれ言ってないか??」


「そうだったか?」


「別に良いけど……そんじゃあちょっと寄るとこあるんで。リラはここでくつろいでくれ」


「分かりました」


 リラはそう言うとアルクは木に穴を開け外に出るが、その後をイレナは追った。


「お前は一体いつまで俺を警戒してんだ?」


 アルクは初めてあってからずっと警戒をしているイレナに質問をする。


「いつまでって……貴方が本当に敵じゃないと判断するまでよ」


「判断って……神龍様と師匠の態度で敵じゃないって分かるだろ?」


「それは……」


「ま。別にどうしようが個人の自由だしな」


 アルクはそう言いながらも歩みを止めない。


「所でどこに行くんですか?」


「みんなの所だよ」


 アルクがしばらく歩いていると、花畑に見合わない真っ黒な廃墟が見えてきた。


「ここは……お母様が立ち入りを禁止している所じゃない……でもここからは闇が作った闇の結界のせいで入れないわ」


「知ってるよ。だってこの結界俺が作ったんだもん」


 アルクがそう言うとイレナは驚いたのか立ち止まったが、アルクは止まらない。


 すると、大きくえぐれた大地が見えるようになり、さらに近づくと黒い結界が覆われていた。


 アルクはその結界に触れると、その結界が破けていく。


「お前はこの中に入った事はあるか?」


 アルクはイレナに質問する。


「入ったことないわ。それに結界やお母様の言いつけを守ってここにはあまり近づいてないわ」


「そうか……だったらついでにお前も入るか?」


「え?……でも……」


「俺に入って良いって言えばいいよ」


「貴方がそう言うなら入るわ」


 イレナがそう言うと、アルクと共に結界の中に入って行く。


 中は真っ黒に染まった廃墟や人間らしき骨が転がっており、黒い結界に覆われているのか薄暗くなっていた。


 アルクと共に入ったイレナは気分が悪くなったのか地面に蹲った。


「う……何なの……ここ?」


「ここは10年前に未知の魔物によって滅ぼされたクプ二村だよ……」


「ここが?……まさかここにあったなんて」


「進むからしっかりしろよ」


「待ってください!どうしてこんな風になったのか説明してください!」


「分かった……ここは10年前に未知の魔物によって襲われた。そいつのせいで村のみんなは皆殺しにされ俺の親も殺された。そこで俺は闇に染まり、力任せに闇を使った……その結果がこれだよ」


 アルクが言い終わると歩き始め、イレナは気分が悪くなりながらもアルクの後を追っていく。


「これは……あまりにもひどすぎる……」


「これでも村の皆の遺体は埋めたんだ。今見えてるのは瓦礫が崩れて切断された手足だけだよ……着いた……」


 アルクが立ち止まり前を見る。するとそこには大量は墓があった。


「まさか……貴方がここに来たかった理由って……」


 アルクは地面に膝を着くと、手を合わせる。


 アルクのしたかった事を知ると、何も言わずにアルクを見守った。


 すると、お参りが終わったのかアルクは立ち上がりイレナの方を見る。


「確かに村がこうなったのは俺が悪い……だからもう被害を出さないようにこうして戦っている。恐らくそのうちに闇の王が完全に目覚める。それまで……」


「待って!闇の王が目覚めるってどういう事?闇の王は大昔の大戦で死んだんじゃないの?」


「実際は死んでいない。大昔の大戦で闇の裏切り者が闇の王を封印しただけに過ぎない」


「そんな……お母様はそのことは?」


「知っているに決まってるさ」


 イレナはアルクの話を聞くと表情を暗くした。


「取り敢えずやることはやったし早くここから出るぞ」


「わ、分かったわ!」


 アルクとイレナがクプ二村の跡地から出ると、レイリンが待っていた。


「あれ?こんなとこに居るなんて……どうしたんだ?」


「なに。しばらくお前と戦ってなかったんじゃ。少しぐらいいいじゃろ」


「良いけど……どれを使うんだ?」


「もちろん……これじゃ!」


 レイリンはそう言うと、収納魔法から剣を取り出す。それを見たアルクはため息を吐きながら剣を取り出す。


「本当に師匠は戦闘が好きだよね…本当にエルフの上位種のエルダーエルフ?」



 エルフ

 森と共に生き精霊と同じ精霊神により生み出された存在だ。彼らの特徴は精霊術を得意としている。

 平均寿命が300年ほど長く、更に200年ほど生きると上位種のエルダーエルフという存在になれる。

 エルダーエルフになれると得意な属性を持つ精霊以外にもほとんどの精霊と契約することが出来る。



「ふん!エルフ全員が戦いが苦手と思うなといつも言っているだろ?」


「分かりましたよ」


 アルクはそう言うと、攻撃をする為にレイリンとの距離を詰める。


[アレキウス神滅剣・速の型]


 レイリンはアルクのバランスの良い攻撃ではなく、素早い神速の攻撃をする。


[アレキウス神滅剣・豪の型]


 アルクはバランスの良い攻撃から、力任せの攻撃となりレイリンと剣を交える。レイリンは神速の攻撃により手数が多いが、アルクの重い斬撃に押される。


「どうしたんだ?もしかしてもう歳で体が重いのか?」


「ほざけ!」


 アルクの煽りにレイリンは言い返しながらも、アルクの攻撃を捌いて行く。


 アルクの視点から見てみると激しい攻防が行われているが、イレナから見てみると静かながら素早い攻防に見えていた。


 しばらくすると、アルクが先に動きを止めた。良くアルクを見るとレイリンの剣がアルクの首筋を捉えている。


「昔と比べて強くなったの」


「本当か?ありがとうよ」


 アルクとレイリンが話している所へ、イレナが近づいてくる。


「師匠。前に私に行ったこと覚えてますか?」


「む?何か言ったかの?」


 レイリンは心当たりがないのか髭を触りながら思い出そうとしていた。


「私よりもアルクが強いと言ったこと忘れたんですか?」


 アルクがクプ二村に着く前にレイリンと神龍が話していた内容を思い出した。


「そうだったな……」


「実際にここで戦ってみて本当にアルクの方が強いのか試した方が良くないですか?同じレイリンの弟子として」


「わしは別に良いと思うが……アルク。お前はどうじゃ?」


「俺も別に良いけど……流石に龍魔法は禁止にしてくれよ?」


「そこは安心して。龍魔法は使わないつもりよ」


 イレナは剣を取り出すとアルクと対峙するように向き合う。


「勝ち負けの判断はわしがする……まぁ常識の範囲内でやってくれ」


 レイリンがそう言うと、アルクもため息を吐きながらイレナに向かって剣を構える。


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