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6ー1 故郷

「クソ……やっぱり片腕だけだと不便だな」


 アルクはそう愚痴りながら魔物を討伐していた。


 翔太達との一件から一週間が経っている。その間にもアルクはクプ二村に向かいながらも魔物に起きている異変を調べながら行動していた。


「ごめんなさい……私のせいで……」


 リラはアルクの左腕を見ると申し訳ない気持ちになり謝る。


「いや。お前のせいじゃないさ。それにクプ二村に着けば俺の左腕もどうにかなる」


「分かりました」


「…………ここは大丈夫みたいだな。しばらくは大丈夫だ。進むぞ」


 アルクはそう言うと再び歩き始める。



 さらに二週間が経つ。


 アルクとリラと白蜘蛛は歩み続け、相当な距離を進んでいた。


 流石にアルク達に疲れの表情が現れていた。


「む……この匂い……お前達!もう少しで着くぞ!」


 アルクはそう言うと、暗い表情をしていたリラと白蜘蛛の顔が明るくなっていった。


「ご主人……もしかして……あれなんですか?」


「そうだ!」


 リラは目の前の景色に絶句していた。


 何故なら滅んだ村と聞かされていた為、廃墟ばかりと思い込んでいたが想像とは真反対で辺り一面綺麗な花畑であった。


「何というか……とてもきれいですね……」


「そうだな……あの方のお陰だ……行くぞ」


「はい!」


 アルク達はもう少しクプ二村に近づく。


 今までは遠くで見ていた為気付かなかったが、クプ二村の周囲には薄い膜が張られている。


「ご主人。これって……」


「安心しろ。これの解き方は分かっている」


 アルクはクプ二村に張ってある薄い膜に触れようとする。


「ッ!誰だ!」


 アルクは上空から感じた事のない魔力を感じ、空に向かって叫ぶ。


「ありえない……この魔力は!」


 すると上空から一本の槍が降って来た。


「お前が……そうかお前が闇か……」


 と、今度は前方から女性の声が聞こえる。


 声の主は白い綺麗な女性であった。


「ありえない……なんでお前から龍の魔力を感じるんだ!?」


 龍の魔力

 それは始祖神龍や始祖神龍により生み出された五頭の龍、そして竜人族の少数しか持つことの許されない特殊な魔力だ。

 そして龍の魔力を使用し放つ龍魔法は大国をも滅ぼすことが出来るほどの威力を持つ。


 だが龍の魔力を持つ者はアルク知る限り始祖神龍と五頭の龍だけだ。


「そんなの知ってどうする?」


「ふむ……それより戦う前に名乗るのはどうなんだ?」


「そうね……良いわよ。私の名前はイレナ。イレナ=ノヴァ。あなたは?」


「待て……お前、今ノヴァと言ったか?」


「そうよ」


「そうか……俺の知らない間に()()()の龍種が生まれたのか」


 アルクはそう言うと、イレナはアルクの言葉に疑問が生まれた。


 何故なら今確認されている龍種は始祖神龍含めて六体。そしてイレナを入れて七体だ。


「何を言ってるの?龍種は私含めて七体だけよ?勉強不足じゃない?」


 イレナはそう言うと収納魔法から剣を取り出す。


「まぁ良いわ!貴方も剣を抜きなさい。流石に無抵抗な相手を殺したくはないわ」


 イレナはそう言ったがアルクは考え事をしていた。


(俺が知らない間に新しい龍種……と言う事はあの二人は何か企んでいるな)


 アルクは考え事を止めるとイレナと同じく収納魔法から剣を取り出す。


「行くわよ」


 イレナは腰を低く構える。アルクにはその構えに見覚えがあった。


[アレキウス神滅剣・神滅ノ刃]


 イレナは勢い良く踏み込むとアルクとの距離を詰め、刃を振るう。


 だがアルクは冷静にイレナの剣を避け、そのまま蹴りを放つ。


「どうした?遊んでやる……よ!」


 アルクはそのまま離れた距離を詰め直し攻撃をするが左腕が無い為、攻撃に隙が生まれてしまう。

 イレナはその隙を見逃さずに反撃をする。


[アレキウス神滅剣・高圧水斬]


 と、アルクは剣から高圧な水を発生させイレナに攻撃をする。


[アレキウス神滅剣・剣域]


 アルクは攻撃技に対しイレナは防御技を使う。

 

 そして一瞬の間だけイレナは驚いた顔をしていた。


 アレキウス神滅剣は選ばれた者にしか受け継ぐことが出来ず、世界で使い手の少ない剣術でもある。


「どういう事?なんであなたもこれを……駄目だわ。貴方は危険だわ」


 と、イレナはそう言うと口の周りに小さい魔法陣が発生する。


「私の全力で……あなたを殺す!」


 イレナはそう言うと、口の周りに発生している小さな魔法陣の輝きが増すのと同時に圧倒されるほどの魔力をアルクは感じ取った。


「この魔力……まさか!ここで使う気なのか!?」


「そうよ!これしか使えないけどあなたを殺す事は出来る!」


[闇よ。我が意に従え!]


 アルクは闇を解放すると空中に魔法陣を描く。


「お前達も俺の後ろに来い!」


「は、はい!……それにしてもこの魔力は何なんですか?こんなに威圧感のある魔力……」


「アイツ龍魔法を使うつもりだ!クソ!」


 イレナは龍種しか扱えない龍魔法を放とうとしていることにアルクは気付き急いで魔法陣を描いている。


 龍魔法は下手したら大国を一瞬にして焦土にすることが出来る危険な魔法だ。


 すると、イレナの口の周りにある魔法陣から大きな衝撃波を出し、アルクを捉える。


[龍魔法・龍の火球(ドラゴボール)


 イレナは龍の魔力から作り出された火の玉をアルクに向かって放つ。


(いまだにこの魔法は完成出来ていない……それに跳ね返しても被害が出る。ならば反らさせる!)


[重力魔法・重力湾曲(グラビティシャムール)


 アルクは魔法陣を発動されると、アルクの周囲の景色が歪み始める。


 そのままイレナの放った魔法はアルクに向かっていったが、軌道が逸れて上空に行き、そのまま大爆発を起こした。


「え!?なんで!?」


 イレナは自分の魔法が外れる事が予想外だったのか驚いた声を上げた。


「イレナと言ったか?お前に龍魔法はまだ早い。そもそもまだお前は全てが未熟だ」


「貴方に何が分かる!」


「お前に見せてやろう……アレキウス神滅剣の本気を……」


「何を言ってるの?」


[アレキウス神滅剣ーー]


 アルクは剣に魔法陣を発動させると[闇魔法]を纏わせ、更に今身に纏っている闇を剣に移す。


[我流……]


「貴方達!いくらなんでもやり過ぎよ!」


 と、アルクとイレナの間の上空から声が聞こえ、リラが上を見上げると白龍がいた。


「え?だってあなたの差し金じゃ?」


「確かに迎えに行けとは言ったけど殺し合えとは言ってないわよ……」


「待ってくださいお母さま!もしかしてこいつが私の兄弟子何ですか!?」


「それしかないじゃない……それにしてもいきなり龍魔法を感じ取ったから来てみれば……私をあまり驚かせないでよ」


 白龍はそう言うと光だし人の形になった。


「悪かったよ。俺は薄々あんたの差し金じゃないかと思ってたんだが……」


「まぁ良いわ。取り敢えず……お帰りなさい」


「うん。ただいま」


 白龍はそう言うとアルクに近づき、抱き寄せる。


「後ろに居るのが仲間?随分と可愛いわね。歓迎するわ」


 白龍はそう言うとクプ二村に張ってある結界の一部を開け、中に入って行く。


「お母さまはそう言ってるけど私はまだあなたの事を信用してないわ」


 イレナはそう言うと白龍の後をついていった。


「ご主人……今のは……」


 リラと白蜘蛛は白龍を目にしてからずっと体が震えていた。


「詳しい話は中に入ってからにしよう」


 アルクはそう言うと中に入って行き、リラと白蜘蛛はアルクの後ろをついていった。


 中は外から見た光景と同じ一面花畑だったが、一つ違う点があった。


 それは、


「あ!アルクだ!おかえり!」


「久しぶりね」


「あんなに小さかったのにこんな大きくなって」


 と、背中に羽が生えた小人がアルクの周りに集まっていく。


「ただいま。お前達は変わっていないみたいだな」


「当たり前よ!貴方達人間とは違って寿命がとても長いのよ!」


「そうか……今はちょっと忙しいからまた後でな!」


「「「はーい」」」


 アルクは羽の生えた小人に手を振ると再び歩き始める。


「ご主人……今のって妖精ですか?」


「そうだ」


 妖精

 それは人々に恩恵や力を与えてくれる。

 だが、小人に生えている羽は高い薬や装飾に使われる為密猟が多々起きている。

 そのせいか100年前から人前に姿を現す機会がが大きく下がり、滅多に会う事が出来なくなっている。



「着いたな」


 アルクはそう言い上を見上げる。


 そこには今まで見た事の無い巨大な木が聳え立っていた。


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