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5-40 新たな師匠

 光翼騎士団のミーユ支部に連れてこられた翔太達はそれぞれ尋問を受けていた。


「それでは聞くが……レンジ。なぜお前達は闇の使徒であるアルクと行動を共にしていたんだ?」


 尋問をしていた兵士は蓮司に聞く。


「最初は訓練の一環として行動をしてました。最初はSランクの冒険者だと思ってたんですか……」


「そうか……それではショータ。奴はこれまでに怪しい行動をしたことはあったか?」


「怪しい行動ですか……」


 翔太は兵士の言った怪しい行動を思い出そうとしたが、特に思い当たる節は無かった。


「無いですね……でも訓練はきつかったです」


 兵士は翔太と蓮司の言葉をメモしながら他に質問をする。


「それじゃあリカ。奴はお前達はどういう風に扱っていた?」


「扱いですか?訓練が無い時は戦闘についてのアドバイスや魔法を教えて貰ったぐらいですね」


「そうか……そう言えば奴の仲間らしき獣人について何か知ってるか?」


「リラさんですか?」


「ふむ……あの獣人はリラと言うのか……それで?何か知ってるか?」


「そうですね……聞いた話だと奴隷って言ってました」


「そうか……貴重な情報を感謝する。お前達はこれから軽く体の浄化をして貰って今日はここで過ごしてもらう」


 兵士はそう言うと部屋を出て、翔太達だけとなった。


「それにしてもあの人だったんだね」


「うん……全然気づかなかったね。でも今お前ばそうだよね」


「確かに……でもあの時近くに居たのに何も出来なかったな~」


「翔太。あれは仕方ない。気にしない方が良いぞ」


「分かってるよ蓮司……でも何も出来なかったのが本当に悔しくて」


「じゃあ待って翔太。気絶してた私達はどうなるの?」


 梨花はそう言うと、蓮司はそれに反論などし暗くなっていた空気が明るくなった。


 すると、翔太達が居る部屋の扉が開くとセイラが入ってきた。


「やぁ。楽しそうだね」


「セイラさん!どうしたんですか?」


「今浄化の準備が整ったから呼びに来てたんだ。ついてきてくれ」


 セイラはそう言い歩き出すと、翔太達も急いで立ち上がりセイラについて行った。


「それにしても君達も災難だったね。闇の使徒とこんな早くに戦うなんて」


「アルクはどれだけ強いんですか?」


 セイラの言葉に続いて雪はセイラに質問した。


「そうだね……私よりも強いよ。学生の時に戦いをしたが勝てなかったよ。ところでシエラはどうだった?半年前に学園を卒業してから一度も会えてないんだ」


「シエラちゃんは元気でしたよ」


「シエラちゃん……そうか。手紙に書いてあった友達とは君達の事だったんだな」


 しばらく歩いていると広く明るい部屋に着いた。


「ここで浄化をするが……ユキ。お前は私と一緒に来てくれ。お前達はここで待機してろ」


 セイラはそう言い、雪を連れ部屋の奥に行く。


 すると、セイラは地面に触れると大きな魔法陣が翔太達を囲む。


「ユキ。お前は私と同じように魔力を込めてくれ」


「は、はい!」


 雪はセイラの言う通りに魔法陣に魔力を込めると、セイラは呪文を唱える。


 魔法陣は白い煙を出すと翔太達に触れるように動くと、煙は消える。


「浄化は取り敢えず終わった。これから――」


「少し良いかな?」


「え?レイラーさん!?」


 扉が開き、そこには光翼騎士団の団長であるレイラー=ブラウンが居た。


「どうしたんですか?こんなところまで来て」


「ちょっとね。召喚者達はどういう者か気になってね……ふむ……これは面白いね。特に赤色の髪をした少年……少しばかり目覚めてるな」


「目覚めてる?」


「こっちの話だ、気にするな……良し!セイラ今度はお前がこいつらを教育しろ!」


「はぁ?」


「だって君強いし問題ないかなって」


「それならあなたの方が適任でしょ?」


「俺は純粋に忙しいからな。新兵のお前ならまだ対して大きい仕事もないし丁度いいだろ?」


「分かりました……えっと……今日から君達の先生になったが……一応聞くがアルクはどんな訓練をしていた?」


 セイラの質問に翔太達はある程度答えると、アルクの訓練の難易度の高さに頭を抱えていた。


「予想はある程度していたがここまでとは……どうする?奴の訓練のままやるか私の方法で訓練するか」


「僕はどっちでも良いです」


「俺も強くなれるならいいけど……熊鉄は……」


「俺か?俺も別にいいぞ」


 熊鉄はそう言うと、翔太は熊鉄の態度に違和感を感じた。


「ふーん……てかなんか変わったな」


「あ?気のせいだろ?」


「そう?じゃあセイラさん。これからよろしくお願いします!」


「ああ。よろしく頼む」


 そのまま翔太達はセイラと別れ、その日を終えた。


――――――――――


 その日の夜、翔太が眠りに着いた時、再びあの時と同じ暗い空間に居た。


「あれ?ここは……確か……」


「はぁー……何でここに来るんかね?」


「誰だ!」


 翔太は声のした方向を見ると、寝転んだ白い服を着た中年の男性が居た。


「俺が誰だって?そんな物知ってどうなる」


「だって……ここは僕の中……」


「ん?あ~確かにそうだったな。お前の中に居るんだから言わないといけないよな。面倒だな」


 白い服を着た男はそう言うと立ち上がり、翔太と向き合った。


 寝転んだせいで身長は良く分からなかったが、立ち上がってみると190はありそうで、痩せ型だ。


「俺の名前はイーグルだ。不思議な事に転移の際に俺がお前の中に入っちまったみたいだな?」


「それはどう言う事だ?」


「そうだった。お前は異世界人だからこう言うのは良く分からないのか……この世界の人間は光を持ってる。お前もそれは知ってるだろ?」


 イーグルの言葉に翔太は頷く。実際、訓練所に居た時よく訓練として訓練兵が翼を生やしていた。


 そして、アルクに関しても色は違ったが黒い翼が生えていた。


「まさか……光はお前みたいな奴から力を借りてる事か?」


「そうだ!いやー理解力があって助かるよ〜」


 イーグルはそう言い喜ぶと翔太と肩を組む。


「出来ればお前に光を渡したいがまだお前には無理なんだよー」


「なんで?」


「だってお前は外から来たんだぞ?まだこの世界に完全に慣れてないのに、俺の光をやったらお前の体はボロボロになっちまう」


 イーグルの話を聞き、翔太は気になる事を聞く。


「じゃあ闇の使徒アルクはどうなんだ?」


 闇を解放したアルクは闇の使いとは違い片翼だった。


 イーグルの話を聞き、翔太はアルクの事を自分と同じ異世界人だと考えた。


「あいつは……純粋に闇が体に追い付いてないだけだな。でも闇があってもアイツは純粋に強い」


「そうなんだ……お前の光を使えるようになるのにどのぐらい掛かる?」


「そうだな……短くても一年は掛かるね」


「そ、そんなに!?もっと早くなる方法はないのか?」 


「あるわけないだろ?俺だって光を使えるようになるのに10年使ったんだ。そんな簡単に光を使えるようになればどれ程楽な事か……」


 イーグルはそう言うと翔太はどうすれば光を早く取得出来るか考え始めた。


「あ!でも一つ方法はあるぞ」


「それはなんだ?」


「単純に魔力の濃度が高い所に行って体を慣らす事だな」


「それだけなの?」


「そうだ。光や闇ってのは自分の持ってる魔力とはまた違うもう一つの魔力みたいな物みたいだからな」


「そうなの?」


「知らん。俺の師匠から聞いた話だからまだ理解してない。でも魔力の濃度が高い所に行った結果、自分の魔力の内臓量が増えただけじゃなくて光の使用時間も伸びたから、もう一つの魔力って自分で納得させてる」


「そうなんだ……オッケー。やってみる」


「おう。頑張れよ」


 イーグルがそう言うと、翔太は意識が遠のき起きると感じた。


―――――――――


 翔太が起きると光翼騎士団ミーユ支部の兵舎で寝ている事を思い出した。


 外では兵士達が訓練をしているのか、威勢の良い声や金属が叩かれてる音が聞こえる。


「おーい!起きる時間だぞ!起きろ!」


 と、廊下から威勢の良いセイラの声が聞こえ、寝ぼけていた翔太だったがセイラの声のお陰で完全に覚醒した。


「起きたら朝飯だ!その後にさっそく訓練をするぞ!」


 セイラの言葉を聞いた翔太達は何となく嫌な予感を感じた。


 しばらくすると翔太の嫌な予感は的中し、アルクといた時と同じようなキツい訓練が待ち受けていた。

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