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5-39 救援

「お前達!早く急げ!」


 と、隊長らしき兵士が後ろで追いかけている兵士にそう叫ぶ。


「ところでセイラ様……本当にあなたも付いてくるんですね」


 隊長の横にはバルト王国の姫であるセイラが居た。


「ああ。それにあの人に追い付く為の手段だと考えてる。ついでに闇を追い詰める」


「そうですか……お前達!もうすぐ闇が検知された所に着く!準備をしろ!」


 セイラのいる騎士隊は少し前に黒暗結晶の反応を検知した。


 そこで今日、浄化を計画していたが黒暗結晶の反応以外に闇が二つ増えた事で緊急事態だと判断し、黒暗結晶へ急いで向かっていた。


「隊長!」


「なんだ?」


「私ならここから闇の使徒を狙えるかもしれません」


 と、一人の魔導士が隊長に提案する。


「そうか。ならばもう少し前に進んだら連絡をする。その時に魔法を撃ってくれ」


「分かりました!」


 隊長は提案をして来た魔導士以外に二人ほど騎士を待機させるようにした。


 そして隊長の指示通りに残りの兵士達は黒暗結晶へ向かう。

 すると、一人の冒険者が闇の使徒らしき人物が戦っているのを確認する。


「セイラ様。あいつが闇の使徒アルクで間違いありませんか?」


 隊長はセイラに確認を取る。


「違う……でもあいつがアルクではなくても闇の使徒である事に変わりは……待て……あいつは……白血鬼!?」


 セイラは闇の使徒と戦っているのが白血鬼である事に気付く。


 白血鬼はSランク冒険者白の別名であり、闘技大会の時に白血鬼の正体はアルクである事を思い出す。


(でも何で闇の使徒である筈のアルクが仲間と殺し合いをしている?)


 セイラは考えていると闇の使いの攻撃でアルクの被っていた仮面が砕けてしまう。


「な!?あいつは……闇の使徒アルク!?」


 遂に隊長や兵士達にも白血鬼の正体がアルクである事が知れ渡ってしまう。


 すると、アルクが闇の使いの胸に剣を刺し、そのまま黒暗結晶へ手に触れる。

 それを見た隊長は遠くに待機していた魔道士に魔法を撃つ様に命令する。


 魔道士の言葉通り魔法はアルクが居た所に的確に落下したが、魔力を検知できたのかアルクは避ける。


「避けられたか……仕方ない。お前達!覚悟を決めろ!行くぞ!」


「「「「「おおおおおおおお!!!!」」」」」

 

 隊長の掛け声の後に兵士達は気合を入れる為に叫び、アルクに戦いを挑む為前線に進んで行った。




――――――――――――


 アルクは森の茂みから続々と兵士が現れるのを確認すると、リラと白蜘蛛を呼び逃げようとする。

 

 だが、兵士達は逃亡を許してくれる事はなく、[光魔法:聖域(サンクチュアリ)]でアルク達を閉じ込める。


 すると、1人の兵士がアルクとの距離を詰め、剣戟を挑む。


「セ、セイラさん!?」


 剣戟を挑んだ人物とはセイラであった。


「はあ!」


 セイラは剣を勢いよく振ったが、アルクに見切られ空振りしてしまう。


「アルク。お前が何をしたいのか分からないが取り敢えずお前を捕まえる」


「いや。俺を捕まえたら何も言う暇も与えずに殺されるでしょ」


「それは知らん。教会に言え」


 セイラはそう言うと再びアルクと剣戟を始める。


 その内に他の兵士は白蜘蛛の糸によって拘束されていた翔太達を助け出す。


「大丈夫でしたか?勇者様」


「はい。でも……僕達はどうすれば……」


 翔太はそう言うと、1人の兵士は慌てた声を上げる。


「どうすれば?何を言ってるんですか!勇者様がやる事は一つ!目の前に居る闇の使徒を殺す事でしょ!?」


 兵士はそう言うと、他の兵士と共にセイラの援護をする為に戦いに向かう。


 だが、外から見ればアルクとセイラの戦いはレベルが高く、介入する暇がない。


 兵士達はそれを自覚しているのか、無理に戦いに介入するのではなく、魔法でセイラの援護をしていた。


「どうしたアルク?お前の実力はそんな物か?」


 アルクとセイラの戦いは直ぐに変化が起こり、アルクが劣勢となった。


「これは……まずい……ッウ!?」


 アルクは体に異変が起きるのを感じると、体が硬直してしまった。


 セイラはそんなアルクの隙を突き、左腕を切断する。


「あああああ!」


 アルクは痛みに怯みながらもセイラとの距離を取る。


「動くな!」


 この場に初めて聞く声が聞こえ、声が聞こえた方向を見るとリラが拘束されており、喉にナイフが押し当てられていた。


「待て!何をしているんだ!?」


 セイラはリラを拘束している女性に話しかける。


「ミリス教の信者が闇以外を拘束するのは違反だぞ!」


「いいえ。確かに闇以外を拘束するのは違反です。しかしこの獣人は闇の使徒の仲間。つまり拘束をする必要はあるのですよ」


 リラを拘束している女性はそう言うと、セイラは黙ってしまった。


「待て。そいつは関係ない。関係ない奴は巻き込むな」


「本当にこの獣人が無関係かどうか信用出来ません……そうですね……こちらの二つの条件に従ってくれるなら解放をしますよ」


「内容次第だ……」


「そうですか……では最初に今貴方が持っている剣をこちらに渡しなさい」


「どうしてだ?」


「その剣は神の鉱石と言われているレッドクリスタルで作られた剣。本来なら勇者が持つのに相応しい剣なのですよ」


 女性が言い終わるとアルクは収納魔法から黒赤刀を取り出す。


「これを渡す前に二つ目の条件を言ってもらおうか」


「いいでしょう。二つ目の条件は貴方を拘束する事です。そうすればこの獣人は解放しましょう」


「そうか……」


 と、アルクは言うと黒赤刀を持つ。


「避けろ!」


 セイラが言うのより先にアルクは黒赤刀をリラを拘束している女性に向かって投げる。


 ギリギリの所で避ける事は出来たが、黒赤刀にポイントワープが仕込まれていたのかワープし、リラを救出した。


「待て!」


[闇魔法:黒霧]


 アルクに迫る兵士達にアルクは魔法を放ち、周囲を混乱させる。


「白蜘蛛!来い!」


 アルクは木の上に隠れていた白蜘蛛を呼び、捕まえると空を飛ぶ。


[闇魔法:黒点(ブラックホール)


 そのまま聖域に黒い穴を開け、聖域から脱出する。


 だが、聖域の外にも兵士が何人か待機していたが、外に居る兵士の殆どに翼が生えていた。


「ヤッベ!」


 アルクは外にいる兵士が光翼騎士団と判断し、逃げることに集中する。


『アレス!聞こえるか!まだ処理終わってないのかよ!』


『今やってる!我慢しろ!』


 アルクは自身の闇であるアレスに黒暗結晶から取り込んだ闇がどうなっているのかを聞く。


 アルクが黒暗結晶を見つけたばかりの頃、アルクの闇であるアレスがとある提案をした。


『黒暗結晶の闇を取り込め。そうすれば闇を静まらせる』


 アレスの言う通りにアルクは黒暗結晶の闇を取り込んだが、アルクの予想以上に闇の容量が大きかったのか体が異様に重く感じていた。


 アルクはナイフを三本取り出し、三方向にナイフを投げ、黒霧を放ちながらアルクは飛行のスピードを上げる。


 アルクの計画通りに、突然の煙幕に光翼騎士団はアルクを見失っていた。


 そのまま、ナイフをポイントワープで回収しながら完全に身を隠すことに成功する。


ー--------------


 アルクは急いでセイラによって切断された左腕の応急処置をする。


「ご主人……ごめんなさい……私のせいで……」


 リラは自分の失態によりアルクの左腕と大切にしていた黒赤刀を無くさせた事に責任を感じていた。


「安心しろ。左腕はしょうがないとして黒赤刀はアイツらにどう足掻いても使いこなせない物だ……それにしても神の鉱石か……本当に何も知らないんだな……」


「どうしたんですか?」


「何でもない。それよりも黒暗結晶の存在を確認する事が出来たからとある所へ向かう」


 アルクはそう言うと、左腕の血が止まったのを確認し魔力を隠すために特殊なコートを被る。


 リラにも魔力を隠すコートを渡すと歩き始めた。



ー-------------


 アルクが聖域から脱出してからしばらく経ち、翔太達は治療を受けていた。


「幸いにも骨には何も異常が無いですね」


 と、リラを拘束していた女性が蓮司にそう言った。


「ありがとうございます……えっと……」


「ウィーヤと言います」


 ウィーヤと蓮司が放していると、隊長がが翔太達の方へ歩み寄って来た。


「君達が教皇が呼んだという勇者達かな?」


「は、はい……」


「これからお前達を光翼騎士団の支部に連れて行って軽く尋問をする」


 隊長から放たれた言葉に翔太達は驚いた。


「待ってください!何で僕達が?」


「何でって……お前達は闇の使徒であるアルクと行動していたんだ。尋問をするには十分な理由だろ?」


「そんな……」


「私からも頼む」


 セイラも翔太達にそう言い、頭を下げる。


「貴方は?」


「私はバルト王国第一王女であるセイラ=スキルニング。シエラの姉だ」


 セイラがそう言うと、翔太は渋々頷く。


「君達も頼むよ」


「わ、分かりました……」


 梨花はそう言い、蓮司と雪も頷く。


「お前は……そうか……お前がシエラの言ってたクマテツと言う奴か。お前も来い」


 セイラがそう言うと、馬車が翔太達の前に止まる。


「これに乗れ。そうすれば騎士団の支部に連れて行って軽く尋問する」


 隊長がそう言い、翔太達が馬車の中に入った事を確認すると馬車を走らせた。


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