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5-37 闇との邂逅

 翔太達との戦いが終わった白は、翔太達を治療し自宅へ移動させた。


「ご主人様!?」


 リラは翔太達の怪我を見ると、白をソファーに座らせる。


「ん?なんだよリラ?」


「良いから!戦いだとしてもさすがにやりすぎですよ!」


「そうか?お前だってある程度俺の訓練に付いて行けただろ?」


「それは私が獣人だからです……それにあの人達はまだ戦いに慣れてないんですよ。殺し合いはまだ早いです!」


「そうか……分かった。ある程度考えてみる。そんじゃあちょっくら森に行ってくる。翔太達を頼んだぞ」


 白はリラにそう言うと、家を出てミーユの近くにある森へ向かった。




 白が家を出て行ってから一時間程経つと、翔太達が目を覚まし、リビングへ入って来た。


「あ!おはようございます!体の調子は大丈夫ですか?」


 リラは翔太達にそれぞれ体の具合と怪我に付いて聞いたが、体の不調を訴えなかったのでリラは大丈夫だと判断した。


「ところでご主人様との訓練どうでしたか?」


 リラは白との訓練について翔太達に聞く。


「殺されると思った……てかホントに死にかけた……」


「私なんて白さんにお腹を切られた……」


 雪は白に切られた腹を抑える。


「蓮司は良いよね!気絶だけで!」


「仕方ねぇだろ?あの人の気迫ガチでバケモンだったんだよ!」


「まぁまぁ。あの人相手に仕方ないですよ。私だって何百回も挑んでるんですけど触れる事すら出来ないんですから」


 リラの言葉に翔太達は驚く。翔太達とリラは何度も訓練をしていて、リラの身体能力や戦闘能力はある程度知っていた。


 実際一対一の模擬戦では毎回負けてしまう。


「ですからあまり落ち込まない方が良いですよ」


 リラは励ましの言葉を翔太達に言う。すると、翔太は白が家に居ない事に気付く。


「分かりました……てか白さんは?」


「ご主人様はミーユの近くにある森に向かいましたよ」


「そうなんですね」


「多分今日はもう終わりだと思いますので自由にしてもいいですよ」


 リラがそう言い、翔太達も白の自宅で本を読んだり話し合ったりする。


 しばらくすると、傷だらけの白が自宅へ帰って来た。


「し、白さん!?どうしたんですか!?」


 翔太は傷だらけの白に何があったのかを聞く。


「それは後で話す。先に飯にするぞ」


 白はリラに飯の用意をするように言うと、食材などをリラに渡し自室へ入って行った。


 リラは白から渡された食材で夕飯を作ると、食卓に並べ白を呼びに行った。


「それで白さん。いったい何があったんですか?」


 蓮司はリラの作った夕飯を食べながら、白に何があったのか聞く。


「ああ。それはな……遂に黒暗結晶を見つけたんだ」


「こくあんけっしょう?」


「そうだ……なんだ?もしかして知らないのか?」


「はい……」


「まずはそこからの説明だな……」


 白は黒暗結晶について翔太達に説明する。黒暗結晶とは闇の出現と同時に世界の各地に現れる謎の結晶だ。


 黒暗結晶が現れた地域では黒暗結晶に宿っている闇を周囲に撒き散らし、植物を腐らせ魔物を凶暴化させてしまう。


 それならば早く探せばいいだけの話だけなのだが、黒暗結晶の出現場所と時期は完全に予測が出来ない。


 その為、一度調査に入った場所にいつの間にか出現していた事が何度もあったようだ。


 もし黒暗結晶を見つけた場合はミリス教に知らせて浄化してもらうのが一般的だ。


「それにお前達は勇者って事になってるから、ついでに闇を取っ払って光を入れてくれればそれで良いかなと思ってるんだ」


「それって闇は魔物を凶暴化させるから闇の代わりに光を入れて、魔物の凶暴化を抑えさせる事が目的ですか?」


「ショータ。それもそうだがもう一つある」


「それはなんですか?」


「簡単な話だ。闇の使徒との戦いで浄化した黒暗結晶の光を利用して闇の使徒を殺すことだ」


「どういう事ですか?」


「まぁ細かい話は俺より教会側が一番知ってるだろう…どうする?お前達も来るか?てか来い」


「え?強制……」


「明日の朝、俺が発見した黒暗結晶の下へ向かう。今日は早めに寝ろ」


 白は翔太達にそう言うと、翔太達より先に眠りに着くために自室へ向かった。


 翔太達も白の言葉通りに武器や手持ちの確認を一通りしてから眠りに着いた。


ー-----------------


 翔太が眠りに着いた頃、翔太は夢を見ていた。ひたすら光に向かって走っていた翔太だったが、光は次第に輝きを失い闇へと変わってしまう。


 翔太は何が起こったのか考えようとするが考えることが出来ない。すると、不意に声が聞こえた。


 翔太は耳を澄ませると自分を呼ぶ声が聞こえた。


 翔太は目を覚ますと、雪が翔太の体を揺さぶっていた。


「あれ?雪……あ!今は?」


「まだ大丈夫だけど……急いで準備した方が良さそうだから早めにね」


「分かった!」


 翔太は予定よりも長く寝ている事に気付き、急いで荷造りをする。


 翔太が白の自宅を出た時には既に全員集まっていた。


「ごめん!待たせた!」


「おう……てか寝坊なんて珍しいな。高校でも寝坊しなかったくせに」


「ちょっと気になる夢を見てね……白さんは?」


 翔太は白がどこにいるのか蓮司に聞く。


「ん?ようやく集まったか?」


 白は翔太より遅れて、家の前に集まった。すると、小さな袋を翔太達に渡した。


「これってなんですか?」


「これは一度死を免除してくれる道具だ。知り合いに作ってもらったが……これがあるからと油断するなよ。さて!全員集まったし行くぞ!」


 白はそう言うと翔太達を連れて黒暗結晶が発見された所へ向かう。


「白さん。何でリラさんと白蜘蛛が居るんですか?」


 雪はリラと白蜘蛛が居る事を白に聞く。


「何でって大掛かりな戦闘になるからだよ。それに大掛かりな戦闘にならなくても人数が多い事に越したことはないからな」


 白の答えに加え、雪はリラが狼の獣人だから鼻が効く事を思い出しある程度納得をした。


ミーユの近くの森に着いたが、見た目はどこにでもある普通の森に見えた。


 白は足を止めることは無く森の奥へ進んでいく。途中まではごく普通だったがさらに進んでいくと、空気が重くなってくるのを感じた。


「お前達。あそこを見てみろ」


 白は右斜めを示す。その先には草や花、木が枯れている所があった。


「リラ何か違和感はあるか?」


 白は後ろに居たリラに声を掛ける。


「今のところは……でも血の匂いがすごいしてきました」


「そうか……お前達!ここからは一気に走り抜けるぞ!」


 白はそう言うと、走り始める。翔太達も白に続く。


 すると、今まで森特有の緑が目が痛い程あったが、次第に無くなり始め代わりに紫に変色した草や木が現れ始めた。


 すると、


「グアアアアアア!」


 と、走っている白目掛けてコボルトが飛び出してくる。だが、白は冷静に対処し、どんどん前へ進んでいく。


「お前達!大丈夫か?」


 白は翔太達に声を掛けるが返事が返ってこない・


 白は後ろを振り返ると、コボルトの群れに襲われている翔太達を確認する。


「チッ……仕方ない!」


 白は一度止まり、魔法をコボルトの群れに向かって放つ。


 コボルトの群れは白の魔法に驚いたのか、森の奥へ逃げてしまう。


「お前達!早く!」


 白はそれだけ叫び、再び走り出すが今度はリラが翔太達の近くを走り、白蜘蛛が最後尾を走っている。


 そうしている間にも草木の腐敗が進み、完全に黒色になり枯れきっている所まで辿り着いた。


「お前達!大丈夫か?」


 戦闘を走っていた白は襲ってきたのか、複数体の魔物を全て切り倒していた。


「大丈夫……です」


 翔太は息を切らし、咳をしながら白に答える。


「ここら辺は……大丈夫か……少し休憩するか?」


 白の質問に翔太が口を開きかけると、何者かが翔太の代わりに答える。


「いえ!行きます!」


 それは梨花だった。


「そうか。お前達はどうする?」


「行きます!」


「私も!」


「分かった。ある程度休憩したらまた走るぞ……クマテツ。お前は大丈夫か?」


 白は翔太達の言葉を聞き、後ろで地面に座っている熊鉄に声を掛ける。


「あ?大丈夫だ。行くなら早く行くぞ」


 白達はある程度休憩すると、白は先に走り出し、進路上に居る魔物を倒す。


 その後をリラの案内の下、翔太達が走っている。


 すると、今まで低ランクの魔物の死体が主にあったが、次第に高ランクの魔物の死体が現れ始める。


「皆さん!そろそろ着きますよ!」


 リラがそう言うと、前に白が立っているのが見てた。


「来たか」


「白さん!これは……」


 白に声を掛けようとした翔太だったが、声を掛けるのをやめてしまう。


 何故なら白の前には巨大な真っ黒の結晶があるからだ。


 翔太達は世界の外の人間にも関わらず。黒暗結晶の異質さと心の底からの嫌悪感を感じていた。


「これが……」


「ああ。黒暗結晶だ。安全な内に早くやるぞ」


 白がそう言い、黒暗結晶に触れる。


 すると、突然黒暗結晶は凄まじい勢いで闇を周囲に放つ。


 翔太達はある程度離れていた為、後退りだけで済んだが近くに居た白はある程度吹き飛ばされてしまった。


「なんかネズミが来たと思えば面倒臭いのが来たなー」


 と、白でもない翔太達でもない知らない声が聞こえる。


「レンジ!上だ!」


 白の言葉に蓮司が顔を上げると、目の前に剣が迫ってきていた。


「はぁ!」


 だが、済んでの所で熊鉄が蓮司の襟首を掴み、迫っていた剣から連子を救う。


「あれ?ヤったと思ったのに……まぁいっか」


 と、背中に黒い翼を生やした男が黒暗結晶の上に立つ。


「まさか……これが……」


「ああ。闇だ」


 今、白達の目の前にいるのは闇に侵された魔物などでは無く、本物の闇の使いだ。



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