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5-34 覚悟と建前1

翔太が朝起きると昨日とは違い、外は静かだった。翔太は今日は白が居ない事を思い出すと少し残念な気持ちになった。


(白さんに色々と教えて貰いたかったな)


 昨日の夜、夕飯を取っている時、翔太は白に普段どんな訓練をしているのかを聞いた。だが、白の特訓方法を聞いた時、翔太は頭が痛くなるのを覚えている。


 白は、小さい頃から師匠の下で訓練が始まる前に魔物が大量に居る森に放り込まれることが毎回あった。


 そして、指定された時間通りに無傷で帰還した場合訓練が始まり、もし時間が少しでも遅れた場合、もしくは傷があった場合は再び同じことを繰り返す。


(そんな訓練普通にやったら死ぬぞ)


 翔太は昨日の事を思い出しながら寝室を出て、リビングへ向かう。いつも居るであろうリラだけでなくホワイトスパイダーもリビングにいない。


 すると、テーブルの上に書置きがあり、翔太はそれを取る。


「俺とリラと白蜘蛛は依頼に向かうけど朝飯は既に作ってあるからそれを食べてくれ。後昨日言った通り討伐はDランク以下だけ許可する。それより上は死んでもいいならやってもいい。

 そんじゃあ頑張ってくれ。夜には帰って来るから」


 翔太はテーブルに置かれた書置きを元の場所に仕舞うと、テーブルに置かれている朝食を食べる。


「翔太……おはよう……これは?」


 次に蓮司がリビングへ入って来る。


「朝飯だって。取り敢えずみんな起きたら何をするか相談しよう」


「オッケー」


 蓮司はそう言い、朝飯を食べる。


 しばらく眠気が残っていたが、雪と梨花、熊鉄が起きた頃には完全に目が覚めた。




「それじゃあ今日はどうする?」


朝食を食べ終た雪たちに翔太は今日の予定を聞く。


「どうするって……白さんが居ないから魔物を倒すしか出来ないよね。梨花ちゃんはどうするの?」


「そうね……私も魔物を倒すので良いと思うわよ」


「決まりだね……熊鉄はどうする?」


 翔太達は今日の予定が纏まると、最後に熊鉄に聞く。


「俺か?適当に付いて行く」


「分かった。それじゃあまずは冒険者ギルドに向かおう」


 ある程度準備した翔太達は、リビングに置かれていた鍵を使い、施錠を確認し冒険者ギルドに向かった。




 翔太達が魔物を討伐しに森へ向かって昼になった。


 翔太達が居る森ミル商業都市の北部に位置しはDランク以下の魔物が多く生息している森だ。そこで翔太達は魔物を討伐していた。


「もうお昼だしどうする?一回戻る?」


 翔太は一応リーダー役として蓮司達に聞く。


「ん~……途中でワイルドボアを倒したからさ。ここで食べようよ」


 梨花はそう言うと、蓮司と雪はそれに賛成する。


「それじゃあコムさんから教えて貰った方法で解体しようか」


「待って翔太。解体は私に任せて」


「え?梨花行けるの?」


「うん」


「それじゃあお願い」


 翔太は取り出した短剣を梨花に渡すと、少しぎこちないがワイルドボアの解体を進めていく。すると、あっという間にワイルドボアの毛皮を剥ぎ内臓を取り出し、魔法で血を抜く。


「す、すごいね……」


 そうしている間にも梨花は今度はワイルドボアをそれぞれの部位に切り分けていく。


「終わった!良し!これを焼こう!」


 翔太達は梨花に肉を渡され、それを焼き始める。


ー------------------


 翔太達が昼食を食べている頃、白はワイバーン討伐の為馬車に乗って出現場所へ向かっていた。


「どうだリラ?なんか匂いはするか?」


 馬車に揺られながらリラに聞く。


「ん~特に嫌な匂いはしないです」


「やっぱりあそこしかいないか。おじさん。あの山のふもと……いやここで下ろしてくれ」


 白は馬車を操作している者にここで下ろすように言う。


「そうか?そんじゃあ代金は……」


「これでいいか?」


 白は収納魔法から小石程の金貨を取り出し、馬車を操作している者に渡す。


「お!太っ腹だねぇ!ありがとよ!」


 と、おじさんは言いミル商業都市へ帰って行った。


「それじゃあ例の山へ向かおうか」


 白は飛行魔法を発動し、リラとバックに居るホワイトスパイダーを抱えてワイバーンが発見された山へ向かう。


「んー特に異常はないな。匂いはどう?」


「前の方が少し焦げ臭いです」


「焦げ臭いという事は……居るな。少し早さを上げるぞ」


 白は飛行魔法の速さを上げ、リラの言っていた焦げ臭い所に向かう。


 すると、すぐに森が黒く焦げているのを見つけることが出来た。


「山火事の件はワイバーンに決まりだな……急いで狩りに行くぞ!」


 白はそう言った瞬間、ワイバーンの咆哮が聞こえる。白は聞こえた方向に向かって飛ぶと、ワイバーンとグランドベアが戦っているのが見えた。


 グランドベアが地魔法をワイバーンに向かって放つがワイバーンの鱗に傷が付くことは無く、そのままワイバーンの炎に焼かれて死んでいった。


 白はゆっくりワイバーンの前に降りると刀を抜き、ワイバーンと対面する。


 だが、ワイバーンは白を見た瞬間、ワイバーンは白に怯えたのか空へ飛び、白から逃げようとした。


[アレキウス神滅剣・次元斬]


 白は空を飛ぶワイバーンに向かって、剣を振る。すると、ワイバーンの右翼が切断されそのまま地面に落下していった。


 ワイバーンの鱗や肉はオークションや冒険者ギルドに高く取引されることがある。白もそれを狙っている為、鱗への被害を最小限に抑える為に右翼を切断し、鱗を傷つける事なく仕留めることが出来る。


「リラ匂いを辿ってくれ」


「はい」


 白はリラの案内の下ワイバーンが落下した地点へ向かう。


 ワイバーンの移動方法は飛行の他に翼を足の様に使い後ろ足をと一緒に地面を進むという方法がある。だが、右翼を失ったのか上手く歩くことが出来ずに這いずっている。


 白はそのままワイバーンの首を切り落とし、ワイバーンに止めを刺す。


「終わったし帰るけど……どうする?もう昼だしワイバーンの肉食ってみるか?」


 白の言葉にリラとホワイトスパイダーは頭を縦に振る。白はワイバーンの足を取り出すと、慣れた手つきで鱗と革を剥ぎ肉を切り分けていく。


 白は簡単な焚き火と串を作り、ワイバーンの肉を焼く。火が全体に回ったことを確認すると香辛料を振りかける。


 焼けた肉を見たリラと白蜘蛛は涎を垂らす。白はそれを二匹の前に出すと、二匹は思いっきりがっつく。


 すると、すぐに肉は無くなる。だが意外と量があったのかリラはお腹を抱える。


「それじゃあ戻るぞ」


 白はそう言うと、二匹を抱えて飛行魔法でミル商業都市に戻って行った。



 ミル商業都市に戻った白達は先に冒険者ギルドを訪れた。


「こんにち……あれ?もう終わったんですか?」


 白の意外と早い帰還に受付嬢は驚いた声を上げる。


「意外と早く見つかってな……ところであいつらはどんな感じだ?」


「あいつら……ショータさん達の事ですか?」


「そうだが……」


「そうですね……朝に見かけたぐらいで後は知らないですね……あ!そう言えば北のDランクの所へ転移したのは覚えてます」


「ふーん。あいつらちゃんと俺の言いつけ守ってるのか」


「それでどうします?ショータさんの所へ行きます?」


「先にワイバーンを換金だけして行く」


「分かりました。それでは今日の報酬を渡しますね。そして今のワイバーンの値段は……」


 受付嬢はワイバーン討伐の報酬を渡し、今日の市場の平均価格を白に教える。だが、今日は全体的に平均価格は低かったため、オークションに出す事に決めた。


 そして、そのまま白はリラとホワイトスパイダーを連れて受付嬢の案内の下、翔太達が転移した森へ向かい、翔太達を見つける。白は翔太達に見つからないように、自身の体を透明にして、出来るだけ離れた場所で見守る。


 白は翔太達がしっかりとやっているのを知ると、リラとホワイトスパイダーを連れて少し離れた場所へ向かう。


「そんじゃあお前達も適当にここで魔物を狩っててくれ。俺はワイバーンをオークションに出してくるから」


「分かりました」


「グァ」


 白はそう言うと、再びミル商業都市に戻った。


 太陽が傾きかけた頃に白はリラとホワイトスパイダーを迎えに行き、そのまま冒険者ギルドの食堂で夕飯を食べている。


 すると、そこに翔太達が白の隣の席に座る。


「お疲れ様です!」


 翔太は嬉しそうな声を出しながらそう言う。


「ん?なんか良い事あったのか?」


 白も翔太の嬉しそうな顔に気付き、質問する。


「はい!実は……」


 翔太の話では、魔物の討伐が驚くほど上手く行き、予定の三倍ほど稼ぐことが出来たからだ。


 そのまま翔太達は白と共に夕飯を済ませ、一日を終えた。




 そんな日々をニ週間ほど過ごし、たまに翔太達に戦闘や魔法について指導をする。そして白は翔太達にとある命令を出す。


「これからお前達には盗賊を退治してもらう」


 白の指導の下で訓練していた翔太達にそう言う。


「退治って事は……殺すって事ですか?」


「そうだ。もうあれから一週間も経ったんだ。そろそろ良いだろうと思ってな。なんだ?まさか……この頃に及んでまだ迷っているのか?」


「…………」


「はぁ……教皇もこんな腰抜けを召喚しやがって」


 白は呆れた様にそう言うと、熊鉄はそれに反発するように白に近寄る。


「俺は……やるぞ」


「な!?」


 まさかの熊鉄の発言に翔太は驚いた声を上げる。


「お前……どういうつもりだ?」


「どういうつもり?それはこっちのセリフだ!」


 熊鉄の下に駆け寄った翔太の胸ぐらを掴んで叫ぶ。


「お前は!人を殺すことを知ってあいつらに協力するって言ったんじゃないのか?あぁ?」


 熊鉄の言葉に翔太は反論することが出来なかった。実際翔太が闇の討伐を決断した時だって軽い気持ちで考えていた。そして、人を殺すなんて事も一度もこの瞬間まで考えていなかった。


 実際熊鉄も人を殺したくない為、あの時翔太の決断に嬉々として首を縦に振らなかった。


「クマテツだけか?他の奴は?」


 白の問いに熊鉄以外は反応しない。


「ふむ……どうしたものか……そうだ!なら今回は無理に殺さなくていい。気絶でも良い。それで良いか?」


 白の妥協案に翔太達は渋々頷いた。


「そうと決まれば盗賊退治だ!お前ら行くぞ!」


 白は翔太達にそう言うと、冒険者ギルドに向かう。


 冒険者ギルドに着くと、白は受付嬢に盗賊が発見された、もしくは討伐の依頼が無いかを聞く。


 すると、受付嬢は一枚の紙を白に渡す。


「お前ら!今日は運良く盗賊退治の依頼があったぞ!取り敢えずこれを読んどけ」


 白は受付嬢から渡された紙を翔太達に見せる。


 内容としては村の近くに盗賊達が住み着き、毎日村に来ては物を盗んだりする。


 翔太達は準備が出来たのを白に教えると、盗賊が発見された村に向かった。





 



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