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5-32 一時の休憩

 白達は冒険者ギルドで食事を終え、白の自宅へ行く為にミル商業都市の城門へ向かっていた。


「あの……白さんの家ってミル商業都市の中じゃないんですか?」


 梨花は気になる事を白に聞く。確かに白の足取りは何故か城門へ向かっていた。


「え?なんでって……俺の家は外にあるからな」


 白はそう言うと翔太達は驚いた顔をした。この世界では魔物の脅威から身を守るために周りに壁を築いている。


 例えそれがどんなに小さい村でも壁があり、強度が足りないと判断されると魔導士に頼み魔除けの結界を張るのが常識になっている。


 それに対して白の家はどうだろうか?ミル商業都市の城門に向かう途中で白から聞いた話だと、大きめの家があるだけで壁や結界と言った物は張っていないと言っている。


 城門に着いた頃、見張り役の兵士は白達を止めた。


「待て!今は夜だがなんで……白さん!?珍しいですね。まだこんな時間に居るなんて……」


 見張り役の兵士が白を見ると、驚いた声を上げた。


「今日は色々と忙しくてな。飯を作るのが面倒だったからこっちで飯を食って帰ろうとしてる途中だ」


「そうなんですね……ん?後ろの人達は?」


 見張り役の兵士は白の後ろに居る翔太達に目線をやる。


「こいつらは俺の知り合いから預かった奴らだ。なんか鍛えろって言われてな。仕方なく……うん」


「そ……そうなんですね……取り敢えず今、門を開けるので少々お待ちください」


 見張り役の兵士は白の状況をなんとなく理解すると、深く詮索はせずにそのまま城門の門を開けた。


「それでは気を付けて!」


 城門を潜り抜け、外に出た白達に見張り役の兵士はそう言うとそのまま城門の門を閉めた。



 

 しばらく翔太達は白の後ろを歩いていた。翔太は後ろを見てみるとミル商業都市が一望できるほどの丘まで歩いていた。


「白さーん……まだですか?」


 蓮司は歩き疲れたのか、そう白に言う。


「大丈夫だ。もう着いたから」


 白がそう言うと平らな土地から少し大きい家が突然現れた。


「ようこそ我が家へ。取り敢えず上がってくれ」


 白は先導して、家の扉を開ける。すると、白の胸に白い何が飛び込んで来た。


「悪かったって白蜘蛛〜。今度は早めに帰ってくるから」


 白の胸に取り込んで来たのは、実戦訓練の時に翔太達が見かけたホワイトスパイダーだった。


「おかえりなさいませ。ご主人様」


 家の奥から声が聞こえると、そこから一人の少女がやって来た。


 見た目はまだ幼い子供で、小学4年生と言われても違和感がない程の可愛らしい見た目をしている。髪と瞳の色は薄い水色をしている。


 だが翔太達人間とは明らかに違う所がある。それは、狼の様な耳と尻尾が生えている事だ。


「おう。リラ待たせたな。今飯を出すから先に行っててくれ」


「分かりました」


 リラと呼ばれた少女は白の言う通りに、来た廊下を戻った。


「あの……さっきのは……」


 翔太は色々と気になる事を白に聞こうとした。


「それは家の中に入ってからにしよう。ほら。早く入りな」


 翔太達は白の後に続き家の中に入る。


 家の中はまだ電気という物が存在していないのか、小さいランプで照らしているおかげで薄暗い。


 そのまま真っ直ぐ進んでいくと、リビングらしき空間に出る。


[汎用魔法:ライト]


 白は魔力の球を作り出し、空中に投げる。すると、その魔力の球から光が発生し、辺りを明るく照らしていく。


「ご主人。早く〜」


「分かったから少し待ってろ」


 白は収納魔法から持ち帰った食事を取り出し、皿に盛り付けていく。


「ほらよ」


 それをリラの前に出すと、ナイフとフォークを使って食べ始めた。


「今お茶を出すからそこのソファーに座っててくれ」


 白はそう言うと、台所に行きお茶の準備をし、翔太達はソファーに座った。だが、熊鉄はまだ立ったままだった。


「あれ?クマテツはどうしたんだ?」


「話なんていいからよ。早く寝たい」


「そうか。それじゃあ……白蜘蛛。クマテツを寝室まで……風呂は入るか?」


「汗なんてかいてねぇから寝る」


「そんじゃあ白蜘蛛。クマテツの案内を頼む」


 白蜘蛛は白の言葉を理解し、熊鉄を寝室へと案内する。


「さて。お前達。何から聞きたい?」


 白はお茶をソファーの前にある机に出すと、翔太達に気になる事を聞く。


「えっと……それじゃあ、あの子……リラっていう子は?」


 雪は今の夕飯を食べているリラについて白に聞く。


「あの子は見ての通り獣人でな。種族は狼で前に奴隷商から買い取ったんだ」


「なんで買ったんですか?」


 雪は奴隷を買った理由を白に聞く。


 白いわく5ヶ月前に冒険者に復帰した者は良いが一人で家の管理や依頼など限界があった。だがら、家の管理や依頼の手伝いをさせる為にリラを買ったのだと答える。


 だが、白の答えに雪は何やら嫌な顔をした。


「あの子って奴隷なんですか?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 奴隷

 奴隷とは買い取った者に絶対服従であり、買い取った時点でその者の所有物となる。

 奴隷となる理由は最大二つある。

 一つは犯罪を犯し、その刑罰として奴隷となる者。

 二つは貴族などから金を借り、それを期限まで返さなかった時に奴隷となる者。


 また、奴隷にもある程度の対応も定められており、殺してはならないや、残虐に扱ってはならない等定められてある。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「安心しろ。ちゃんとミラ商業都市公認の奴隷商から買い取った」


白はそれを言うと雪は安心したような息を吐く。


 すると、

「お腹いっぱい。ごちそうさま」


 リラは夕飯を食べ終わると、皿を台所の流しに置くと、白達が話しているソファーへやって来て、白の隣に立った。


「ご主人。この人たちは?」


「こいつらは昔の知り合いから少しの間だけ世話することになった奴らだ」


「ふーん。初めまして。リラです」

 

 リラはそう言うと、頭を下げる。


「えっとリラちゃん……その……耳を触ってみてもいいかな?」


 雪は興奮したような声でリラに聞く。


「え?えっと……」


「ユキすまんな。リラは余り耳を他人に触らせるのは苦手なんだ」


「そうなんですね……分かりました……あ!私は雪と言います。しばらくの間よろしくね」


「はい。よろしくお願いします」


「僕は翔太って言います」


「俺は蓮司です」


「梨花よ」


 一通りリラと翔太達の自己紹介が終わると、白はリラに指示をする。


「リラ。風呂の用意をしてくれるか?」


「分かりました」


 リラはそれだけ言うと、風呂場に向かって行った。


 翔太達は白の答える準備が出来るのを確認すると、質問を続けた。


「なんで白さんってその仮面を被ってるんですか?」


 白の仮面は実戦訓練の時を同じ仮面を被っている。


「これはな……まだ冒険者を始めたばかりの頃に顔に大きな傷が出来てな……それでこの醜い傷を隠すために被ってるんだ。まぁその他に仮面を被った方が色々と利点があるしな」


 白は梨花の質問に答えると、今度は翔太が質問をして来た。


「グネヴィアさんから聞いたんですけど剣術と魔法が得意って本当なんですか?」


 翔太は一度グネヴィアとバルナから聞いた事を白に聞く。


「まぁ得意っちゃ得意だな。でも俺は師に恵まれたからだと思う」


 しばらく翔太達は白に気になる事を聞き終えると、白はこれからの予定について話し始める。


「最初の五日間は魔物を相手に戦う。その後は魔物を相手にしつつ盗賊を相手にしてもらう」


「盗賊……ですか?」


 蓮司は白の言葉を復唱した。


「盗賊っていう事はもしかして……」


「ああ。場合によっちゃ殺す事になるな」


「そんな……」


 白の言葉に翔太は嫌そうな顔をする。


「どうしても殺すんですか?」


「そうだ。なんだ?殺しはしたくないのか?」


「あ、当たり前です!」


「ふーん。それじゃあ聞くがお前達が討伐をしようとしている奴は誰だ?」


「それは闇の使徒です」


「闇の使徒も殺さないのか?」


「はい」


「甘いな」


 翔太の言葉に白は冷たい言葉で否定する。


「え?」


「良いか?いつの時代も闇の使徒は勇者……召喚者達に殺されている」


「でも……捕まえて罪を償わせることも出来るはず……」


「無理だ。例え生きて捕まえられても闇の使徒は惨い処刑をさせられる」


 確かに白の言う通りにミリス教会が保管している歴史書にはいつの時代も召喚者達が闇の使徒を殺している。

 それに闇を絶対的な悪と決めているミリス教徒達も闇の使徒を必ず殺すと決めている。


「…………」


「まぁまだ時間はある。たっぷり考えると良い。リラ。皆を風呂場に案内してくれ」


「……分かりました」


 白はそう言うと、ソファーから立ち上がり自分の部屋に戻る。


「ねぇ……大丈夫?」


 雪は白と話あっていた翔太に声をかける。


「う、うん。でもやっぱり殺しなんて……」


「翔太。こればかりは後で考えよう。まだ3ヶ月もあるんだし」


「蓮司……そう……だね。3ヶ月の内に考えてみるよ……」


 翔太達の話が一通り纏まったのを見ていたリラは、声をかける。


「話し合いが終わったならお風呂場に案内しますので先にショータさんとレンジさんは付いてきて下さい。リカさんとユキさんはここでゆっくりしてて下さい」


 リラはそう言うと歩き始め、翔太達も急いでリラの後を追っていった。


 しばらく歩いているとリラが引き戸の前で止まった。


「ここがお風呂場です。タオルは既に用意しているのでそれを使って下さい。お風呂から上がったらリカさん達に教えてください。私はご主人の所に行ってますので」


 リラはそう言うと白が入った部屋へ入って行った。


「翔太。とにかく難しいことは風呂に入った後で良いんじゃない?」


 蓮司はそう言うと、翔太は頷き風呂場の引き戸を開けると周りが高い柵で覆われた露天風呂があった。


「さむ!取り敢えず早く入ろうぜ!寒すぎる!」


 蓮司は服を隣にある籠に入れると露天風呂にダイブした。


「おい蓮司」


「いいじゃん。俺達だけなんだし」


「そうだね!それじゃあ行くぞ!」


 翔太はそう言うと蓮司と同じように露天風呂にダイブした。


 しばらくすると風呂場を出て行った翔太達はリラに言われた通りに、ソファーで話している梨花達に次に風呂場に入るように伝え、しばらくするとリビングに梨花達も戻って来る。


「あれ?そう言えば俺達どこで寝るんだ?」


 蓮司がそう言うと、見計らったかの様にホワイトスパイダーが翔太と蓮司の前に現れる。翔太達の前に現れたホワイトスパイダーは糸を翔太達に差し出す。


 翔太達はそれを掴むとホワイトスパイダーが廊下を進み、翔太達はそれに付いて行く。


 すると、ホワイトスパイダーは扉の前に止まる。翔太達はホワイトスパイダーに案内された扉を開けると寝室が見える。


 翔太はこれからここで寝るのだと理解した翔太は、蓮司達に「おやすみ」と言い眠りについた。

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