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5-31 冒険者稼業2

 コボルトの討伐依頼を終わらせ、次に受けた依頼は少しランクの上のオークの討伐だ。


 オークはEランクにしてされている魔物であり、コボルトやゴブリンと言ったFランクの魔物と違い体格が大きく、その上筋力も高い。


 なのでFランクからEランクに上がったばかりの浮かれた冒険者のほとんどがオークで痛い目に合う事が多い。


 白は最初は翔太達も体格も筋力が全く違うオークに手こずると考えていた。だが、白の予想とは違い、翔太達はオークに手こずる事なくオークを討伐する。


「どうですか?白さん」


 蓮司は自分達の実力を白に聞く。


「ん?まぁ予想以上だな」


 自分達より強い、ましてやSランクの冒険者に素直に褒められた四人は嬉しそうにしていた。


「まぁ今日の分の依頼は終わりだな……そんじゃあお前達。武器を買いに行くぞ!」


 白の提案に翔太達は意味が分からないような顔をした。


「どうしたんだお前ら?そんな驚いた顔をして?」


「だって今武器って……」


「はぁ~。ショータお前の使っている剣をよく見てみろ」


 翔太は白に言われた通りに今自分の使っている剣を見た。何の変哲もないただの鉄の剣だ。


「あの……これの何がダメなんですか?」


「はぁ?刃こぼれしまくって粗悪な剣だろ?」


 白にそう言われたが、翔太は自身が使っている鉄剣にそう思ったことが一度もない。そもそも翔太達にとって剣を使う事は初めてなのだから仕方がないのだろう。


「とにかく!お前達の使っている剣はおんぼろだ!だから俺のお気に入りの鍛冶屋に連れて行って自身にあう武器を選べ。取り敢えず一回これを攻撃してみろ」


 白は地魔法で土人形を作る。


「まずは……そうだな。リカ。お前からだ。適当に土人形に魔法やら撃ってくれ」


 梨花は白に言われた通り、土人形に向かって炎魔法を放つ。梨花の放つ炎魔法はすべて土人形に命中した。


「どうですか?」


「リカ。お前は何か武術系統をやっていたか?」


「はい。この世界に来るまでダンスをやっていました」


「ダンス……とは何か知らないが恐らくそれのおかげで動きが素早い。次の奴……レンジ行けるか?」


 蓮司も白の作った土人形に攻撃をする。


「レンジは刺す力より振る力がとても大きい。あれで決まりだな。次はユキ頼む」


 雪はグネヴィアから渡された情報によると、聖女シエラと同じ光を持ち、梨花と同じ魔導士である。


 雪は白の土人形に炎魔法を放つ。だが、雪は炎魔法だけでなく水魔法も同時に放つ。


「魔法の同時使用か……集中力が高い。純粋な魔導士で決まりだな。ショータ頼む」


 翔太は元はサッカー部という事もあり、素早い斬撃を土人形に放つ。


「早い……それに加えて持久力が高い。純粋な剣士だな。次は……クマテツなんだが……行けるか?」


 白は地面に座っている熊鉄に聞く。最初は不機嫌な態度を取っていたがすぐに立ち上がり、白の作った土人形を攻撃する。


 ただ、熊鉄は翔太と蓮司とは違い拳で土人形を攻撃する。


「うん。あいつは魔闘士で良いかな。お前ら集まってくれ」


 白に呼ばれた五人は白の前に集まる。


「面倒だから順番に言うぞ。まず翔太はショータな剣士で良い。次にレンジは槍の扱いで劇的に強くなることを保証する。リカは動きが軽い為、魔剣士で良いだろう。ユキはその高い集中力を活かせる魔導士。クマテツはさっき言った通り魔闘士で良い」


 蓮司は白に言われた事にいまいち分かっていなかった。だが、翔太は白に言われた事に納得していた。


 確かに翔太は持久力を利用した方法で土人形を攻撃した。


「それぞれに合わせた武器を持たせてやるから同じように土人形をまた攻撃してくれ」


 白はそう言うと、収納魔法から新しい鉄剣や槍、短剣、杖、ナックルを取り出し翔太達に渡す。


「白さん。なんで自分は槍なんですか?」


 蓮司はまだ自分が槍を扱うのか分かっていなかった。


「レンジ。お前は何か腕を中心に使った競技をしていただろ?」


「え?なんで分かったんですか?」


「お前が土人形を攻撃した時、剣を刺す力よりも振る力の方が段違いに強い。それなら槍を振った方が何倍も殺傷力が上がる。だから槍を採用した。戦い方は後で覚えればいい」


 白の説明に蓮司はある程度納得した。確かに蓮司は野球部だった事もあり、肩と腕の筋肉が発達している。


「分かりました。取り敢えず頑張ってみます」


「頑張れよ。リカは何か質問あるか?」


「短剣の扱いが分からないんですけど……」


「それも後々教える。他に質問がないならショータから土人形を攻撃してくれ」


 翔太は白から渡された新しい鉄剣で土人形を攻撃する。すると、今まで使っていた鉄剣より綺麗に土人形を切断することが出来た。


「え?すごい……」


 翔太は綺麗に土人形を切れた事に驚いていた。


「剣が違うだけでこんなに違うのか……」


 次に蓮司が槍を使い土人形を攻撃しようとする。


「レンジ!突きじゃなくて振るように攻撃をしろ!」


 白は蓮司にそう言い、蓮司は白の言った通り突きではなく槍を振る。すると、蓮司の槍で土人形の胴体は簡単に切断することが出来た。


 次に梨花の番となる。梨花は白に渡された短剣を構える。


「グネヴィアに教わっているなら付与魔法(エンチャント)ぐらい出来ると思うからそれを使え」


 白のアドバイスに従い梨花は得意魔法の氷を短剣に付与し、土人形を攻撃する。梨花は翔太の持っている鉄剣より軽い短剣で素早い動きで土人形を攻撃する。


 すると、土人形に付いた切り傷から凍って行き、気付いた時には体のほとんどが氷に覆われていた。


「ユキ。今度はお前の番だがこの杖を使うときはくれぐれも手加減をしろ。後始末が大変になるからな」


 雪は白の言葉に疑問を持っていたが、白のアドバイス通りに魔法を唱える。すると、すぐに異変が起きた。


 なぜなら、雪の持っている杖に大量の魔力が発生したからだ。


「クソ。面倒だが仕方ない。お前ら!少し離れていろ!」


 白は翔太達にそう言い、雪と白からある程度離れさせると雪と土人形を大きく覆うように魔防壁(ボルグ)を張る。


 雪は集中しているのか白や翔太達に気付かずに杖から魔力の弾を土人形に放つ。


 今までの雪の魔力の弾は強力であったが大きな爆発などは一切起きたことが無い。だが、今回の雪の魔力の弾は土人形に当たった途端に小規模な爆発が起こった。


「ふぅ……手加減しろと言ったのに……」


 白はため息をしながらそう言うと、雪は白の方へ振り向き謝って来た。


「白さんごめんなさい!」


「いや。こっちもこれ程とは思わなかった。まぁ被害は最小限だったら問題ないだろう。クマテツ!次はお前だが行けるか?」


 白はダメもとで熊鉄に言ったが、熊鉄は白の命令に素直に従い土人形の前に立つ。


「一応聞くが魔力の扱いは分かるか?」


 白の言葉に熊鉄はこれ見よがしに拳を握りしめる。すると熊鉄の拳に靄が掛かり始め、その状態で土人形を殴る。


 熊鉄が土人形から離れると、土人形に熊鉄に殴られたのか鳩尾の部分が大きくえぐられていた。


「良し。お前達。この調子でこれからお前達を育てる事になるが……まぁ何だ。死なないように頑張れよ」


 白はいつも通りの感じで翔太達にそう言うと、翔太と蓮司は嫌な予感がした。なぜなら、剣士の教官であるバルナも白と同じ事を言っていた。


「取り敢えずお前達。このバックを背負って町の冒険者ギルドに走って戻るぞ」


 翔太と蓮司の嫌な予感は的中したのと同時に、バルナの訓練の仕方も白譲りなのだと二人は理解した。


「何してるんだ?早く行くぞ!」


 白はそう言うと、翔太達を置いて走って行き、翔太達も急いでバックを背負い白の後の追って行った。


翔太達が冒険者ギルドに着いた時は明るかった空が薄暗くなっていた。


「お前達遅かったな。腹減ったと思うから飯にするぞ」


 白は疲れて地面に座っている翔太達にそう言うと、そのまま冒険者ギルドに入って行く。翔太達も急いで立ち上がり冒険者ギルドに入る。


 既に白は六人席に座っており翔太達もそこに座る。


「もう飯は頼んである。来るまで適当に休んでていいぞ」

 

 翔太達は白の言葉に甘え、椅子に座ったまま目を閉じる。


 十分程経ったのか目の前から香辛料のいい匂いが漂って来た。


 蓮司が先に目を開け目の前に出された料理を見ると驚きの声を上げる。


 なぜなら、騎士団の食堂で見た料理は栄養が偏らずバランスよい料理だったが、目の前に出された料理は揚げ物や大量の肉が出されていた。


 蓮司は急いで寝ている者を起こし、ナイフとフォークを持つ。


 起きた翔太達も急いでナイフとフォークを持つ。


「白さん!いただきます!」


 そう言うと、目の前の料理をそれぞれ自分の皿に移して食べていく。


「ん?クマテツは食べないのか?」


 目の前に出された料理をドンドン食べていく翔太達とは反対に、熊鉄はまだ出された料理に手を付けていない。


「いや……ちょっと考え事をしていた」


 熊鉄はそう言うと目の前に出された料理にナイフとフォークを付けていく。


「白さんは食べないんですか?」


「俺はもう食べたから心配せずに食え」


 六人が料理を食べ始めほとんどの料理が無くなった頃、白は気になる事を聞いた。


「そう言えばお前達。住む予定の場所はあるのか?」


 白の何気ない質問に食事をしていた熊鉄以外の四人は手を止めてしまった。白はその様子を見てため息を吐く。


「今から近くの宿に行っても五人は入れるほどの宿は無いな……どうする?」


 白も一度宿を取る事を失敗し野宿をしたことは何度もあった。


 白は小さい頃から野宿についての勉強をしたことがあるおかげで困らなかったが、翔太達は魔物が出現することがあるところで野宿をする事を白は勧めなかった。


「じゃあ少し歩いたところに俺の家があるからそこで泊まるか?」


 白の提案に翔太達は目を輝かせ頷いた。


「それじゃあこれ全部食べてろ。俺は金払ってくる」


 白は席を立つと会計の所へ向かった。


「ねぇ。白さんについてどう思う?」


 雪は白について翔太達に聞く。


「まだ初日だからなんとも言えないな。翔太はどう思う?」


「そうだな……あの人はちゃんと人を見てるなって思ってる」


 翔太の言葉に三人は頷き、白が会計を済ませたのか帰って来た。


「お前達もう飯は良いのか?」


「そうですね……もうお腹が一杯です」


「そうか。クマテツも腹一杯か?」


「そうだ」


「じゃあこれはある程度貰っていくぞ」


 白は収納魔法から皿を取り出し、残った料理を小分けにして収納魔法にしまう。


「荷物をまとめたら俺の家に行くぞ」


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