1ー9 決着
観客は信じられないものを見たような顔をしていた。それはヘルメスの魔法かアルクの剣術に驚いているのかも知れない。だが、一番は目の前で起こっている今だった。
「なんと……ヘルメス殿が冒険者に敗れた?」
と、兵士が驚いた声で言った。冒険者と兵士では所属している部隊によって力量が変わる。だが、ヘルメスの力量で有れば冒険者に負ける事は中々無い。
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(何が起こった?私の放ったテンペストが切られた?いやそんな事はあり得ない。相手は魔力を纏わず純粋な剣技だけで切った?)
ヘルメスは考えていた。目の前で起こった出来事を理解しようとしたが出来なかった。
「勝負有り!勝者冒険者アルク。これにより聖女様の護衛は冒険者アルクが務める事になった」
と、審判が言った。
「貴様!俺に何をした?」
ヘルメスは自身の身に何が起こったのか理解が出来ないでいた。冒険者であるアルクに負けた事実を認められなかった。
「何をした?ただテンペストを切って峰打ちで首を打っただけだ」
アルクは当たり前かの様に言い放つ。だが、ヘルメスが放った魔法を防ぎ切るものは中々居ない。それに加えて、アルクは魔法を塞ぐのではなく切ったのだ。
「ふざけるな!テンペストを切った?仮にも雷の上級魔法だぞ?もし切るなら貴様の持つ剣も折れているはずだ!」
「鑑定を使えばこの刀に使われている鉱石が分かるはずだ。」
すると観客の一人が鑑定を使った。
『鑑定結果……素材:アダマンタイトとレッドクリスタル』
鑑定結果を見た観客の一人が驚きながら言った。
「アダマンタイトとレッドクリスタルが使われている!?」
「なんだと?アダマンタイトはともかくレッドクリスタルは伝説の鉱石だぞ?」
アダマンタイトそれは2番目に硬い鉱石。
レッドクリスタルそれは1番目に硬い鉱石だが世界でまだ3つしか見つかってない鉱石だ。見た目はクリスタルと同じ様に透明だが、魔力を流すと赤く変色し硬度が上がる。
「鑑定に出たんだ。信じるしかないだろ……」
「そうかやはりお前は不正をしたんだな……」
と、ヘルメスが言った。その瞬間、ヘルメスの体から白い魔力が溢れる。
[光よ我が翼となれ。我が力となれ。顕現せよ]
ヘルメスが呪文を唱えるとヘルメスの背中から翼が顕現する。
これが翼の顕現だ。
「ヘルメス様もう勝負は決まりました!」
「いやまだ決まっていない!ズルをするような奴に聖女様の護衛は務まらない!第一何故冒険者がアダマンタイトとレッドクリスタルを使った剣を持っている?そのような得体の知らない奴が護衛にさせてたまるか!」
と、ヘルメスは言い呪文を唱える。ヘルメスの翼から三筋の光が現れると槍へと変形して行く。
[光よ悪を浄化せよ・聖稔槍]
ヘルメスが呪文を発動させると、光の槍が出現し、アルクに向かって放つ。
「死ね冒険者が!」
と、言い光の槍がアルクの目の前まで迫ったがアルクは避けきれず肩に刺さった。
すると審判が呪文を唱え始めた
「くっ……[風よ命ある者を拒絶せよー-」
「俺に任せろ」
「ー―ッ!?」
審判はヘルメスを止めようと魔法を唱えるが、アルクは審判の前に立つ。
「だがー-」
「良いから任せろ!」
「……分かった」
「なんだ?冒険者血迷ったか?」
[光よ雷となり敵を滅ぼせ・雷神ノ白雷]
[付与魔法・重力」
アルクは呪文を唱え。黒赤刀に重力を纏わせたまま構えをとった。
[抜刀術・天・天喰]
そうアルクの放った重力が纏った斬撃と雷神ノ白雷がぶつかり爆発が起こった。
爆発が収まり闘技場を見ると二人の影が見えた。すると、
「グアアああああ」
と、ヘルメスは自分の腕を押さえて叫んでいた。
目を凝らしてみるとヘルメスの腕が切断されていた
「ヘルメス、俺の勝ちだ」




