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7話 逃げろーですわ

 おかしいですわ。


 先ほど馬車を止めていたところに戻ってきたのですが……馬車がありません。御者の男性も一緒にいなくなっていますわ。これはどうしたことでしょう。


「もしかして場所を間違えたのでしょうか?」

「いえ、リリア様。ここで間違いない筈ですが……」

『地面に馬の足跡及び4輪の轍を発見しました、お嬢様(レディ)。痕跡からおよそ10分前に移動した可能性があります。』


 震電が教えてくれます。……10分前に移動。どういう事でしょうか?


 思案していると付近の茂みが揺れます。すっとイベリスが立ち位置を変え私の盾になってくれているようですが。なんでしょう、野犬か何かでしょうか。


 ガサッ!

 出てきたのは人間でした。


「な、何だお嬢ちゃん達、こんなところで何を?」

「あら? えっと、どちら様で?」


 3人の武器を持った男たちが出てきました。なんでしょう武装しているということは冒険者の方でしょうか。

 はっ! もしかして山賊や人さらいの方でしょうか……もしそうなら不味いですわ。


「俺たちは冒険者ギルドのもんだ。この先にゴブリンの暴走(スタンピード)が起きたんで処理しに行くんだ。この辺は戦場になる、お嬢ちゃん達は早く街へ戻るんだ!」


 冒険者の方でした。この先にゴブリンがいるようで、私たちに逃げるように言ってきます。


「っ! リリア様、早く戻りましょう。」

「そうね、分かったわ。教えてくれてありがとうございます。頑張ってください。」

「ああ、任せとけ!」


 それだけ言うと冒険者の方々は森の奥の方に向かって行ってしまいました。

 さて、私たちは早く帰らなければなりませんね。……でも馬車がありませんわ。


「仕方がありません。お嬢様乗ってください。」


 私では街まで戻る体力が無いと思われたのか、イベリスにおんぶされて街に向かいます。カッコ悪いですわ。

 ですがさすがイベリスですわね。私をおぶっているというのにいつもよりも速い歩みで街の方に歩いていきます。

 なお震電はその後ろをフヨフヨと浮かびながら付いてきますわ。


 街へ戻る途中更に数組の冒険者とすれ違いました。彼等もまたゴブリンの対処に向かったのでしょう。暴走(スタンピード)と言うのはかなりの数の魔物がいるとイベリスから聞きました。

 ゴブリンと言うのは人間の子供程度の知能と身体能力だそうです。そのため少数であれば、普通の大人たちでも対処可能だそうですが、基本的にゴブリンと言うのは群れで動くそうなので、退治は冒険者の仕事だそうです。後、女性をさらって子を産ませるのだとか。

 あの方たちが早く対処してくれることを祈りますわ。



 そうしてある程度街に近づいてきたときの事でした。


お嬢様(レディ)、先ほど向かった冒険者と呼称される人間、12名が死亡しました。』

「なんですって!」


 私はびっくりしました、先ほど言葉を交わした人たちが死んだなんて……

 一度言葉を交わしただけとはいえ彼らは生きていました。それに私によくしてくれた街の住人でもあります。


『固体名称“ゴブリン”と思われる二足歩行生物を静止衛星にて観測。数は388体です。“冒険者”は数で圧倒されたようです。また固体名称“ゴブリン”の一部が突出。このままでは前方にある人口密集地に逃げ込む前に追いつかれる可能性があります。』

「そ、そんな……何とかなりませんの?」


 ゴブリン。小さくて1匹ぐらいなら私やイベリスでも対処できますが、なんと388匹も。それに追いつかれると聞いて恐怖しました。

 追いつかれると聞いて、イベリスも一時足を止めてしました。


『可能性から考えれば可能です。【アマテラス】に搭載されている武装類を使用すれば問題りません。』

「ではそれを、早く!」


 追いつかれること、人の死と言うことが私の思考を焦らせます。


『ですがお嬢様(レディ)方は使用方法の知識がありません。口頭説明となると時間がかかります。』

「ではどうしろと?」


 少し苛立っていたのでしょう。怒鳴るような声で震電に尋ねてしまいました。


『適合化処置を行えば可能性はあります。ただし原住生物に対して同処置を行った経験が無いことから副作用の予想がつきません』

「……それをすれば、ゴブリンを退治できるの?」


 適合化処置と言うのがどういった物かは知りませんが、望みを託して聞いてみます。処置や副作用と言うことは医療行為か何かのようなものでしょう。


『可能性はあります』

「なら、私に行いなさい」

「リリア様!」


 イベリスの怒った声が聞こえてきます。分かっています。私は伯爵令嬢。その命を粗末にして良いものではないというとこは子供のころから嫌になるほど聞いてきた言葉です。その命の価値は平民や孤児などとは違うことも理解(・・)はしているつもりです。ですが、


『不可、お嬢様(レディ)の体は成長途中であり適合化処置に不向きです。この処置は成長しきった成体がベストと回答します』

「そんなことを言っている場合ですか!」


 そんな覚悟を決めている中、震電は私には出来ないと言ってきました。何でですか!?


「……わかりました。震電、私がやります」

「イベリス!」


 そんな中言い争いを見守っていたイベリスが立候補しました。イベリスの方を向き声をあげますが、イベリスは震電と視線を合わせています。


「震電、それを行えばお嬢様を助けられるのですね?」

『可能です』

「分かりました。私に試しなさい。」

『……了承しました。見事な覚悟です勇敢なる乙女(ヴァルキュリア)。ではお嬢様(レディ)指揮下にあるイベリスに対して適合化処置を行います。なお副作用が出た際の抗議は受け付けませんのでご了承ください』


 そう言うと震電は触手を伸ばしてイベリスの頭部にくっつけました。そして、


 ぷしゅっ!


「ッッ!!」


 痛かったのでしょうか、イベリスの顔が苦痛にゆがみます。


『ナノマシン注入を完了。適合化まで30秒――ではこれを』


 ビュゥン! と震電の反対側の触手に大きめのチョーカーのようなものが現れました。どこから出したのでしょうか? とにかく、それをイベリスに渡そうとします。


『使用方法を伝達します。……大丈夫ですか?』


 イベリスは頭をくらくらとさせていたようですが、どうやら自分でも立っていられなくなったのか地面に座り込んでしまったようです。


「これは一体……」

『脳情報の混乱による一時的なものです。ナノマシンの定着は30秒ほどかかります。』


 その言葉通り、30秒ほどしたら、ゆっくりではありますがイベリスが立ち上がろうとします。


「大丈夫、イベリス?」

「ええ、リリア様。有難うございます。」


 そうしていつもとは逆にイベリスが私に支えられるという状況になりました。


 震電が触手で保持していたチョーカーをイベリスに渡します。それを受け取ったイベリスですが、


『被験体イベリスへの適合化処置の完了を確認。この端末の使用方を伝送します。』

「分かりましたで、どうすれ――――ッッ!!」


 なんでしょう、またイベリスが頭を抱えだしましたわ。ですが今度はすぐに収まって


「……なるほど、これは凄いですね。ただ、頭に直接入ってくるのは慣れないのですが。」

『我慢してください』


 自己完結しないでください。私にも教えてくださいよー。何があったのですか?


 むぅ~、なんだか仲間はずれですわ。私が最初に震電と仲良くなったのに。


「ではリリア様、街へ向かいます。」

『そうですね、無理に戦う必要はありません』


 そう言ってイベリスは渡されたチョーカーを首に装着すると、更に何かまた震電が触手の中に出現させ、それを渡されていました。あれは何でしょうか、棍棒? いえ、トンファーでしょうか。

 更にそれを受け取ると再度イベリスにおぶられて街へ向かいます。


 ええ~、ここってゴブリンと戦う流れじゃなかったのかしら? そのためにイベリスが何かされたんじゃぁ……


 ……その後、イベリスは先ほどよりも早く走ることによってゴブリンを振り切ったようです。たぶん。

 時たま、イベリスが後ろを振り返り手に持った棍棒? からパパパンッ! と言う破裂音をさせていましたがなんなのでしょうか。少し耳が痛いです。


 そうして街の入り口に到着しました。

イベリス付けたチョーカーは情報通信用端末でその後渡されたのは棍棒ではなくPDW(個人防御火器)です。追跡してきたゴブリンに向けて弾をばらまき牽制しながら逃げてきました。

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