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プロローグ

「リリア様、本当にやるんですか?」

「ええ、領民が困っているのですもの。これも貴族の務めですわ」

『崇高な理念ですお嬢様(レディ)


 全高15mにも及ぶ無骨な人型兵器が2機、森をかき分けながら進行していく。


 リリアの乗る1番機、そして侍女であるイベリスの乗る2番機は目標がいると思われる地点に近づいていく。


お嬢様(レディ)、光学センサーにてこの先5㎞地点に目標(ターゲット)を捕らえました』

「了解しましたわ」


 リリアが目を凝らすと、脳波により自身と一体化した機体――そのカメラが目の前の風景をズームしていく。そうして見つけたのは、赤い鱗をまとった全長10mを超える大型爬虫類。木々の間から見えるそれはワニのような顔と蝙蝠のような翼が特徴的な害獣。ただいまお食事中。その足元には鹿だか馬だかわからない4足歩行の動物の死骸が散らかっていた。

 レッドドラゴン。冒険者たちですら二の足を踏む最強最悪のモンスターである。

 目的は領地を荒らすそれの退治。


「ビンゴ! ですわ」

「リリア様、そのような言葉遣いは下品ですよ」

「失礼、オホホ……震電、一気に距離を詰めますわよ!」

『イエス、お嬢様(レディ)


 “震電”と呼ばれた1番機に搭載されたサポートAIが機体制御の一部を担う。人間にない部位――脚部スラスターを使用し一気に距離を詰める1番機。

 一度のジャンプでドラゴンとの距離を約2㎞にまで詰めた1番機――リリア搭乗機――は着地と同時に手に持った武装、35㎜アサルトライフルを構え銃口を目標に志向させる。サポートAI ――震電――の機能によりその動きはとても運動が苦手、いや体の弱い貴族令嬢とは思えないほどスムーズだ。

 視界の中にガンカメラと同調したロックオンサークルが浮かび上がる。

 サークルの中心にドラゴンを入れ、一気にトリガーを引く。


 ダダダダッ!! という景気の良い音と共に高速で弾丸が投射されていく。そのほとんどがドラゴンに着弾。強靭な鱗に弾かれるものの衝撃は内部に伝わり肉を裂き体内器官を破壊する。


 ギャォォォオオン!!


 咆哮と共に、ドラゴンが宙に舞いあがる。銃撃によるダメージは蓄積されており、鱗の隙間から血を垂れ流しながら逃げようと空へと飛びあがった。


「イベリス!」


 リリアが2番機――イベリス搭乗機――に声をかける。


 2番機はその機体に長射程武器――誘導弾(ミサイル)を装備し発射のために先ほどの位置から動かずレーダーを作動させていた。

 空に逃げようとも、2番機のレーダーは目標を追尾している。


 バシュッ! という音と共に2発のミサイルが発射される。それは目標の赤外線及び質量による重力変動という複合情報をもとに誘導され的確に相手を貫く。


 次の瞬間、空中に黒い花が咲いた。そして爆音が響く。


「命中! 目標高度低下、リリア様」

「グッジョブよ、イベリス!」


 黒い花の中から黒焦げになったドラゴンが地面に向けて降下してくる。


 1番機はドラゴンの墜落ポイントに向け駆けていく。重鈍な兵器とは思えない機動性、脚部のスラスターの補助を受けまるで地面を滑るように近づいていく。

 1番機の背部ウエポンラックが起動しプラズマブレードがせり上がる。それを左腕に持ち駆けていく。


 轟音と共に墜落したドラゴンはその苦痛に身をよじりながらも起き上がろうとする。

 そこに1番機が突っ込んで行き首筋にプラズマブレードと突き立てる。それは鱗を突き抜け肉を貫通した。

 悲鳴と共に逃げようとするドラゴンだが、陸戦兵器持ち前のパワーでがっちりと固定されたそれはドラゴンが暴れるたびに肉に食い込み、そして裂いていく。


「これで終わりですわ!」


 右腕に構えたアサルトライフルを至近距離で頭部に向け引き金を引く。眩いマズルフラッシュと共に弾丸が吐き出されていく。

 短距離で発射された弾丸は頭部という弱点を的確に打ち抜き血と脳漿をまき散らしながら、レッドドラゴンはその生命活動を終わらせた。


 トリガーから指を離す。


「ふぅ、やりましたわ」

『お見事ですお嬢様(レディ)

「ありがとう震電。これで私もドラゴンスレイヤーですわね。」


 リリアとAIが話している場所に2番機が近づいて来る。


「リリア様、いくらこのような……ろぼっと? があるとしてもあまり無茶はされませんように」


 イベリスが苦言を呈する。こんな事ももう何度目かもわからない。


「もう、イベリスってば心配性ね。ねぇ、震電」

『イベリス、この機体性能であればあのような大型爬虫類など問題ではありません』

「震電、貴方まで……はぁ」


 ため息をつくイベリス。一体どうしてこうなってしまったのだろうかと思案する。



 コックピットハッチが開きリリアとイベリスが外気にさらされる。そうして機体と一体化していた自分の体の感覚が薄れて行き、


『機体接続をOFF……完了』


 コックピットの椅子に座っているリリアたちの目が開く。


「何度乗ってもいいわね。こうやって自由に体を動かせるというのは素晴らしいわ」


 そう言ってうーんと伸びをするリリア。

 そうしているうちにイベリスは一足先に地上に降りてリリアが降りてくるのを待っている。

 

 リリアが機体の手に乗ってコックピットから降りてくる。こういった簡単な動作であれば遠隔コントロールが効く。本来は昇降用のウインチがあるのだが、リリアはそれをつかんでいる体力がないため、こういった機能を使用して機体を乗り降りしていた。

 またコックピットブロックの後ろに埋め込まれるような形で配置されていた、正八面体の金属体が浮かび上がりフヨフヨとリリアのそばにやってくる。


「震電もお疲れ様」

『有難うございますお嬢様(レディ)

「まったくお嬢様は」


 この40センチくらいの正八面体の物体、自身をサポートAIの“震電”だと名乗ったそれを拾ってからイベリスの心労が増えたような気がする。


「さあ、冒険者ギルドに凱旋ですわ!」




 これはリリア=フォン=セルドランス伯爵令嬢の華麗なる日常。そして侍女イベリスの苦労の記録である。






 嘘です♪

思いつきのまま書いております。

1話は同日19時投稿予定。


10話程度で完結の予定です。

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