魔王の復讐勧誘
「覚悟しろ魔王!!!
お前は僕が倒す!!!」
魔王城、謁見の間に入ってきた勇者がそう叫ぶのに玉座に座る魔王は哀れそうに彼を見る。
「へぇ、バカな奴まだ居たんだ。」
勇者に哀れな視線を向けほかの勇者パーティには侮蔑の視線を向ける。
「愚かしいにもほどがあるな。
また、異世界から召喚か?
どれだけこの世界の人間は愚かなんだ?」
「何っ!!!???」
こつりと魔王が玉座の腕おきに爪を立てるように叩いた瞬間に勇者パーティは見えない何かに圧迫され全員ひれ伏した状態になる。
「さて、余興だ。
勇者、お前はこちら側になるかならないか自分で決めろ。
五大精霊共、貴様等の罪ここで晒せ。」
魔王がそう告げると同時に部屋の一角に牢にとらわれた精霊が出現するのに誰もがそちらへと視線を向ける。
「闇の女神、ヴィジュティーア。」
再び、魔王が呼びかけるように名をつぶやけば闇の女神が現れるのに勇者達は戦慄する。
「光の女神の神罰はどうなった?」
「あら、あなたなら知ってるのではなくって?」
「勇者が来るからこいつらの前で聞かせてほしいんだが?」
「なるほど。
あなたからの言葉だと人間は信じないものね。」
「そういうことだ。
そもそも、俺がこの世界の人間を滅ぼすのは自業自得。
復讐させる機会を与えたお前等が悪い。」
「えぇ、そうね。
異世界の人間を召喚して魔王にさせたのはこの世界の人間と光の女神。
愚姉だもの。あなたが怒るのも仕方がないわ。
自分達の権威を高める為に死んでくれっていうんだもの。」
「え・・・・?」
女神と魔王の言葉に勇者が呆然と声を漏らす。
その顔には、2人のもたらした言葉を理解を拒むように・・・。
「ちなみに、光の女神とそこの五大精霊のやらかしで俺は創造神から復讐の許可得てるから滅ぼされてもマジで文句いえねーよ。
創造神に見放された人間なんだし。」
砕けた口調でもたらされた言葉は彼らへとんでもない衝撃を与える。
創造神に見放されてるなどと言うとんでもない言葉。
教会に所属している聖女は否定の声を上げたくとも魔王から与えられてる圧力によってその言葉は封じられる。
「あぁ、勇者。お前、こいつらの中で知ってる顔あるか?」
魔王と勇者の間の空間に突如幾人もの顔が浮かびあがる。
明らかに死んでいる者や苦痛に顔をゆがめてるものなどそれは様々。
「え・・・?」
驚く勇者に魔王が目を細める。
「知り合い、居たか?」
「な、んでっ・・・・!!」
憎悪の視線を魔王に向けるのに魔王は勇者から向けられる象王の視線と同じような・・・・いや、それ以上の憎悪をのせた視線を五大精霊へと向ける。
「どいつ?お前等にこの世界の人間が勝手に生贄とほざいて捧げた奴らだ。
俺も水の大精霊に妹殺されてるんだ。
それが俺のこの世界への復讐。
この世界の人間は生贄やら魔王やらめんどくせぇ事を異世界から召喚してそいつを身代わりにさせてんだよ。
俺もそうやって水の大精霊に殺されかけたけどユニークスキルがえげつなくってねぇ。
復讐と断罪の神格得てる最新鋭の神でもあるのさ。」
「この大陸は私が守護する大陸であり彼が統治する大陸でもある。」
「勘弁、俺は引退するぜ?
人間への復讐が終わり次第な。
そういう契約だ。その為の改革やら後任育成はしたんだ。
新人神としての仕事ほっぽってたんだからそっちの片づけだろう。」
「まったく、まじめな人ね。
まぁ、だからこそお父様も認めたのでしょうね。」
「ま、まってくれ・・・!!生贄なんて聞いてないぞ!!?」
寝耳に水の言葉を魔王から聞かされ勇者はあわてて叫ぶように魔王に問いかける。
他のパーティ達が話せない状態なのに自分だけ話せる異状な状態だというのに・・・・。
「そりゃー、言えないだろ?
お前の家族を生贄にしてる可能性もあんだからそういう風習がある。
生贄は村から出してるっていえばだませるし。」
「そうね。あの愚姉と信仰してる連中なら平気でしそうね。
そうそう、愚姉の処罰は神格の剥奪されて人間となること。
そして、そこの勇者に聞くけどあなた愚姉の代わりに光の女神をやらないかしら?
愚姉は堕ちた神だもの。ほかの神々だって怒り狂ってる。
そもそも、異世界の神々の許しなく召喚などあちらの神々の逆鱗に触れるのわかってるのかしら?」
「自己中なバカなだけさ。
正直な話し、創造神としては元の世界の神々の緩衝材として俺を抜擢してるにすぎない。
んで、そこに勇者も参加させるってわけさ。
あぁ、ちなみに光の女神つぶして霊験あらたかになるな。
断罪を施すんだし。」
「姉さんはっ・・・。」
勇者が悲痛な声で魔王と闇の女神に問いかける。
その言葉に魔王はまるで自身のように悲痛な顔になる。
「なんもかんも精霊に食われてるよ。
俺も妹がそうだ。
さらにいうと無駄死にだ・・・・。
こいつらは生贄なんていらねーってさ。
くれるからもらったと主張してんぜ。」
「っざけるな!!!」
憎悪と憤怒が入り混じった表情で精霊達に吠える勇者。
「だろーな。
その想いが俺を魔王にし復讐と断罪の神格を得させた。
さぁ、勇者。俺と同じく異世界から理不尽に身勝手に召喚しやがった人間へ復讐をしねぇか?
俺は妹を、お前は姉をこの世界の連中に殺された。」
魔王が笑いながら勇者へと歩みより手を向ける。
「この世界の創造神が認めた復讐の権利を一緒に使わないか?」
瞳は獣のように獰猛さを醸しながらも魔王はそれは美しい笑みを作り勇者へと手を差し伸べた。
「俺は―――。」
のちに世界からほとんどの人間が駆逐された。
生き残った人々は人間でありながら光の女神を信仰せず別の神を信仰していた人々。
彼らは光の女神が行った事、光の女神の信者達の所業を知らされ新たに誕生した元異世界人の二神に対し、
この世界の人間であり彼等の家族を奪った我々を光の女神の信者達とは違うと考え滅ぼすことはせず見守り続けてくれた二神に深い感謝を捧げた。
新たな神話としてそれは語り継がれた。