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第0話【バッドエンド?】

よくある話だ。学校に一人はいる透明人間。

誰からも見向きもされず、誰からも愛されることない存在。

クラスからイジメの対象に合って不登校になるなんてのは本当にありすぎる話だ。

彼に名前はない。両親は海外で仕事をしており幼い頃から一人で生活している。

そんな彼の孤独を紛らわせるのはゲームだった。

VRなんていう近代的なものはなく3Dのファンタジーゲームに彼はのめり込んだ。

一人で黙々とその世界を旅しいつしか彼はトップランカーと呼ばれるようになった。

しかし終わりとは唐突に訪れる。

体を激痛が襲う。意識は混濁していき呼吸ができず窒息していく。

霞む視界の先には何時も遊んでいたゲーム画面。

彼は死ぬ間際に思っただろう。

あぁ、せめてもう一度あの世界を…。

叶わぬ願いを胸に彼は微睡みへと落ちていく。

そう、これはよくあるバッドエンドでしかなかった。


-----


陽の光が顔を照らす。心地よいそよ風に髪が揺れ土の香りが鼻腔を刺激する。

揺れる木々の音、囀る小鳥の声に耳を傾けつつ彼は目を開ける。


「ここ…は?」


見たことがないほど綺麗な森が目の前に広がっている。

空を見上げれば二つの太陽が地上を照らしており、ワイバーンが空を飛んでいる。

何時もモニター越しでしか見ることが叶わなかった空が広がっている。


「ま、まさか…!」


歓喜の感情を声に織り交ぜつつ立ち上がる。

自身の手に視線を落とす。そこには見慣れた自分の手ではない手があった。

自由に動かせ、触感もある。温度も感じる。正真正銘今は自身の手であった。

目を凝らせばうっすら左上に緑色のHPバーが表示される。

三人称視点で遊んでいたゲームが今では一人称視点。

そもそもここがどこなのか、なんでここにいるかといった理由は最早関係なかった。

彼は無意識に右手を空中にかざしステータス、と呟く。

ヴンという鈍く響き音とともにメニュー画面が表示され、迷わずステータスを押す。


■□■□■

Lv100

名前:ヤト 年齢:1029 種族:龍人種

HP:10039 MP:7651 異名【神雷】

メイン職業:侍:Lv10

サブ職業:鍛冶師:Lv8 料理人:Lv6 暗殺者:Lv5

種族Lv:10

<ステータス>

STR:430 AGI:970 PER:660

INT:370 CHA:290 LAC:460

<メインスキル>

✩四刀流:Lv10 三刀流:Lv10 二刀流:Lv10 一刀流:Lv:10 剣術:Lv10

身体強化:Lv10 雷魔法:Lv5

<サブスキル>

鍛冶魔法:Lv8 感知:Lv10 探知:Lv10

料理魔法:Lv6 鑑定眼:Lv10 闇魔法;Lv3 暗殺術:Lv5


■□■□■


そこには何時も自分が使っているアジリティ超特化キャラのヤトのステータスが表示されていた。

この画面が自分の知ってるゲーム基準だとすれば最高ステータスが1000。

自分の知ってる限りこのアジリティを超えているキャラを見たことがない。


「やっぱり…ここは俺の知ってる世界…」


歓喜に満ち溢れた声で思わず言葉を漏らす。

冷静で居られるはずもなく近くにあった水面に近づき姿を見る。

そこには自身が作ったキャラの姿があった。

白髪に紅い双眸。額からは短い角が生えており首筋にはうっすら鱗も見える。

黒一色で統一された着物と赤黒い羽織を身にまとっている。

190cmは優に超えるその巨体。そして腰に差している漆のように光沢ある黒色放つ一振りの刀。

間違いなく自分が作ったキャラそのものだった。


「……流石制作に5時間かけただけあって、イケメンだな」


角度を変え自身の姿を何度も確認する。本当に現実なのか怪しくなる頬をつねる。

勿論頬には微弱な痛みが伝わる。どうやら夢ではないらしい。


「だけど……なんで俺はこんな所にいるんだ」


元々人間不信だったためフレンドはおらずフレンドリストを表示しても誰もいない。

勿論ギルドにも所属しておらずソロプレイを極めていた。

しかしプレイヤーであれば誰しも所持するワールドマップ。

それがあるのを思い出し開く。

だがそれは彼の知ってるワールドマップではなかった。

「エルフの森:アラトリアス」とマップに表示され現在位置とその周辺のマップが表在される。

彼の知ってるゲームに勿論エルフはいた。しかしこのような土地は存在しなかった。

そもそも知らなかったのでは、と一瞬過るが設定を全て記憶しているためそれは違うだろう。

だが幸運な事に近くに街を発見する。それなりの規模で都市と言っても過言ではないだろう。

一度も訪れたことがない街のためここからファストトラベルすることはできない。

現在馬もいないため仕方なく歩くこととなった。


「俺は前の世界?で多分死んだんだよな…それでここに来た」


歩きながら自身の記憶を探る。確かにあの激痛、薄れゆく思考は覚えている。

そしてその後微睡みに落ちていく感覚も鮮明に。


「つまるところこっから第二の人生ってことか。なんでか知らないがありがたい」


前の世界ではいじめられ、親とも接せず恋人もいなかった。

いいことなんて一つもなく悪いことが世界を作っていた彼にとっての第二の人生。

彼は心から決心した。


「今回こそ、ハッピーエンドで終わってやる!!」


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