助けるために
その"運命"は"偶然"として僕の元に訪れた。
僕の名前はキール。ある国の、ラフィートという町のはずれに暮らしている。父や母は僕の記憶には居なくて、たった一人で生活している。
僕の容姿のせいで僕を嫌っている人が多い中、唯一優しく接してくれるプラントさんの元でアルバイトを終え、家に帰る途中―――。
いきなりだった。
深い森のような色の髪に僕は引きつけられた。道端に女の人が座り込んでいたのだ。
・・・どうするべきか迷った結果、僕はその人に声をかけた。
「・・・あの・・・・・・大丈夫、ですか・・・?」
「・・・あ・・・ええ、大丈夫よ・・・"私はね・・・・・・ねぇ、あなた・・・私を助けてくれない?」
「・・・え?い、いや、でもさっき大丈夫って・・・?」
「あぁ、ごめんなさい。少しややこしい話をしてしまったわね。」
◇◇◇
・・・女の人はリリーと言った。
母がいない僕は、年上の女の人と話すことはあまりなくて、いつにもなく緊張していた。
しかし、彼女と話しているうちに何となく、心が暖かいような、そんな気持ちを感じていた。
リリーの話はこうだ。
リリーには僕と同じくらいの子供がいるらしい。けれど、彼女はある事情があって、その子を置いて旅に出たそうだ。
・・・それが数日前の事。
詳しく尋ねると、僕の住んでいる集落の隣村に居るらしい。子供を置いて旅立ったはいいけれど、どうしても心配で何日も、世話をしてくれる人を探していたそうだ。
それが、たまたま声をかけた僕に回ってきたと。
・・・普通に考えれば、断るところだろう。なんせ、たった一人で生活しているのだ。
けれど。
僕はどうしても、リリーを見捨てられなかった。 もしかしたら、一人じゃなくなるかもしれない。
本当は、ずっとさみしかったから。
それとリリーにはぬくもりがあった。
遠い昔に一度・・・たった一度だけ感じたことのある、なつかしいぬくもりを彼女は持っていたから。
・・・そのぬくもりを感じた"昔"はいつだったのか、思い出せやしないけれど。
――僕は、彼女を救いたかった。




