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ヒロインとはパンツに似ている

パンツはヒロインが履くものだと僕は思う

「少し、おかしいことに気が付いた」


 ある日の昼飯時、相も変わらず3人で公園の遊具を嗜んでいると、茶児がアイスを食べながら言った。


「何がおかしいんだ?」


 僕は滑り台を滑りながら茶児に訊ねる。

 どうでもいいことの予感を感じながら。


「いや……どうして俺らの周りにはこんなにも女っ気が無いんだ? ヒロインの一人くらい居た方が……」

「んー、僕にはエリーゼ姫が居たからなぁ……それに、異世界冒険編でヒロインを無造作に出し続けた結果、大変なことになったしな」

「だからその異世界冒険編って何だよ……いっとくが俺はまだ信じてないからな」


 まだ信じてなかったのか?

 一度証拠を見せる必要があるかなぁ……。


 とか考えていると、ブランコをノリノリで漕いでいた白黒が突如ブランコから降りて、決めポーズ。

 正直かっこ悪いポーズだが、白黒はそのまま語りだした。


「茶児よ……つまりお主はこう言いたいわけじゃな……? 『彼女が欲しい』……と」

「いや別に、そこまで望んじゃいないが……確かに欲しいっちゃ欲しいな」

「ならばお主にこれを授けよう!」


 どこぞの青タヌキのように、白黒のポケットから取り出されたのは、最近の流行エロゲー、『理想の彼女を作ろう!~金髪祭りだワッショイワッショイ~』だ。


 自分の理想のヒロインをキャラクタークリエイトできるという触れ込みのわりには金髪しか作れないという謎仕様が逆にユーザーの心を掴んだ名作中の名作!


 し か も !


「馬鹿な……それは僕ですら手に入れることができなかった初回限定版フルボイスパッケージバージョン!?」

「ふ……茶児、お前だから、貸すんだぜ? なぁに、気にすんな、親友が困ってたら助けるのが筋ってもんだ、ろ?」

「白黒……君ってやつは……」


 感動した。

 僕たちの友情ってやつは思った以上に強固だったようである。


 僕たち3人の友情は、これから崩れることは決してないだろう。

 例えいかなる障害が僕たちの前に立ち塞がろうとも、僕たちならそれを乗り越えていけるだろう……。


 そう、確信した瞬間だった。


 茶児は、そのゲームをまるで卒業証書のように丁寧に受け取り……。


 そしてケースごと膝で折った。


「ぎゃあああああああああああ!? きさまぁああああああああああああああああ! この! このゲームを手に入れるのにオレがどれだけの苦労をしたと思ってるぅうううううう!」

「知るかぁあああああ! 俺はなぁ! 二次元の女が嫌いなんだよぉおおおお! 気持ち悪い眼しやがって! でかすぎるんだよ!」

「貴様の趣味趣向など! どうでもいい! もう戦争だ! クリークだ! 異世界冒険編で鍛えたオレの力で貴様を殺す! 法律なんざ知ったことか!」

「やってみろよ……! 言っとくが少しばかり強くなった程度じゃ俺には勝てねえぜ……!」


「…………はぁ」


 全く、こいつらは……。

 イイハナシカナー? って思った瞬間これだよ。


「お前ら、少し待て」


 いがみ合う二人を諌め、カバンからボクシングの時に使うゴングを取り出す。


 何? 天丼? 知らん、これは僕の持ち芸だ。


「見合って見合って……ファイッ!」


 カーン! っと、子気味の良い音が鳴り、二人は同時に動き出す。


 あー……、今日も平和だなぁ。






*****






 高校2年生というのは、受験もなく、また、学校にも慣れてきて、部活動も先輩が引退し、自分たちの代になる、まさに自由な年と思われがちである。


 しかし、実際はそんなわけがない。

 自由など、どこの世界にもいつの時代にも存在しないのだ。


 確かにここ日本は比較的自由度が高い国だろう、しかし僕は思う。

 ここ日本での『自由』とは、所謂『与えられた自由』だ。


 真の自由とは存在しない。

 何故ならこの世界には制限が多すぎるからだ。


 その最たる制限は、法律の存在だろう。

 例え法律が無かったとしても、完全なる自由は有り得ないが、それでも、法律は厳しく僕らの自由というものを縛っている。


 何故こんな話をいきなりしたかというと、今まさに、僕らはその法律のお世話になっているからである。


「またお前らか……」


 モミアゲが濃い警察官が、頭を掻きながらそう呟いた。


「オレ達男同士の友情を確かめ合ってただけっスよ、ほら、公園で男と男の意見のぶつかり合いが起きたら殴りあいっしょ」

「白黒の言うとおりです、だからムショは勘弁してください、もうコリゴリなんです」


 白黒と茶児が必死に弁明してるのを横目に、僕は女子中学生のパンツを食べる方法を模索しているのであった。


 え? 薄情? 知らん。だって僕当事者じゃないし、ただ煽っただけだし。


「それは同罪だ」

「くそっ! なんて時代だ!」


 僕はただ白黒と茶児の戦闘を「へいへーい、へいへーい」とか言いながらタンバリンを叩いて煽っていただけなのに!

 それだけで捕まるとか、日本の法律はどうなっていやがる!


「法律がどうこう以前に常識の問題だ。……はぁ、とりあえず、親御さんに連絡するからな」

「あ、了解です。今の時間帯なら母さんがいると思います」

「オレ両親いないお、知ってると思うけど死別っス」

「ウチの親、昨日からインドのカレーが食いたいとかで旅行に出てますね」


「……親に連絡されるのを全く動じないのはお前らくらいだよ……ったく」


 警察官は溜息混じりにそう言って、電話をかけ始めた。

 おそらく唯一マトモと言ってもいい、茶児の母親に電話をしているのだろう。


 まあ、あの人もあの人でぶっとんでる部分があるからなんとも言えんが。

 それでも僕の交流関係の中では数少ない常識人と言えるだろう。


「はいはい、えー、またです、はい」


 さて、モミアゲ警察官が茶児の母親と話し始めたところで正直面白みもなんもないので……。


 主人公のみに許される禁断の必殺技! 場面転換・話数進行の型! 発……動!





*****






 次回予告。


「……ついに、始まったか……」

「ああ……」


 ――――水面下で動きだす、悪。


「嘘だろ……? 茶児の気配が……消えた……!?」


 ――――次々と倒れていく仲間たち。


「私は好きなんだよ、人の苦しむ姿ってやつがねぇ……!」


 ――――立ちふさがる強敵……!


「いいぜ、全員かかってこい……安心しろ、2秒で終わる」


 ――――物語は加速する――。


 次回、第5話『終焉のレクイエム』。











「と、いう次回予告を作ってみたんだがどうかな?」

「却下で」


 あう。


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