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世界とはパンツに似ている

さて、今回から満を持して第2章の開幕です。

「パンツが食べたい」

「いきなり何言ってんだお前は」


 異世界冒険編から数日後、僕と茶児、白黒の3人は食堂で熱くパンツについて語っていた。


「いや、ねつ造すんな! パンツの話なんてしてないだろ!?」

「バカ野郎、パンツとはこの世の全てであり、また世界とは主にパンツのことだろう? つまり茸筍戦争の話だろうが学食の話だろうが僕たちはパンツの話しをしていたと言っても過言ではない」

「過言すぎる!」


 と、そんなわけで、僕の交友関係唯一にして無二のツッコミ役、古谷茶児のありがたいツッコミが冴えわたったところで、僕は構わず大声で叫ぶ。


「そんなことはどうでもいい! つまるところ僕はパンツが食べたい! できれば女子小学生の履きたてホヤホヤの少し暖かいパンティーが食べたい!」

「食堂で叫ぶなそんなこと! ていうかお前ってロリコンだったっけ!?」

「違うわ! 僕をロリコンなんていう一部の女性のパンツしか愛せない男だと思うな! 0歳から100歳まで! 全ての女性が履くパンティーが大好きだと! 主食だと! 僕は高らかに宣言させてもらう!」

「もう何でもいいから黙ってろ馬鹿!」


 ちなみに食堂で飯を食う生徒たちの反応は「またアイツか……」と言った具合である。

 この関ヶ原学園で僕を、僕たちを知らない人間はいないといっても過言ではない。


「で、もう一人の馬鹿は妙に大人しいけど、どうしたんだ? 白黒」

「いや、考え事しててさー」


 ほう、この斉藤白黒という人物はここ関ヶ原学園では馬鹿の代名詞として使われる程の馬鹿。


 テスト成績は常に最下位、授業時間は睡眠時間。

 彼がどうやってそれなりの偏差値を誇るこの高校に入れたかは関ヶ原学園の七不思議のひとつである。


 その馬鹿が考え事とは珍しいこともあるもんだ。


「何を考えてたんだ?」

「いや、大したことじゃないさ。妹と結婚って、どうしたらできるのかなぁーって」


 真顔でそう言い切った白黒に、茶児は侮蔑の視線を、僕は普通の視線を送った。


 ああ、そういえばコイツ妹フェチだっけ。それも重度の。


「うん、まあとりあえず日本じゃ無理だなぁ……」

「いや、なんで真面目に相談に乗る流れなの!?」


 茶児の浅はかなツッコミは無視し、僕と白黒は話を続ける。


「やっぱし? 流石のオレでも日本じゃ無理だよなー、とは薄々思ってた」

「何処だっけ? 兄妹での結婚が認められてる国って、アメリカ?」

「いっそのこと、卒業したら引っ越すのも手かなぁ」

「いやいや、そもそも兄妹で結婚っておかしいだろ、それに妹さんは了承してんの?」


 常識的すぎてつまらん茶児のツッコミに、白黒はやれやれ……と呆れながら答える。


「愛があれば、兄妹であることなど大した問題ではない、それに、先日、あいつに告白したら……無事OKが貰えたよ」

「まじで!?」


 驚く茶児を尻目に、僕は白黒にサムスアップをする。


「おめでとう」

「ありがとう」


 コツ、と拳同士を合わせ、笑いあう。


 さあ、これで大方の障害は取り払った。

 問題は、あと一つ。


 白黒はカバンからノートPCを取り出し、その画面をこちらに向けた。


 そこに映ったのは、人気エロゲー『萌え萌えキュンキュン~Hな女の子は好きですか~』の隠し攻略キャラ、主人公の妹である女の子。


「そう、問題はあと一つなんだ……あとは彼女が……液晶から、出ることが出来れば……ごふっ!」


 メコス、と顔面に茶児の拳がめり込んだ。

 元空手部の鉄拳は非常に痛そうだ。


「……前が見えねぇ」

「ゲームのキャラかよっ! 真剣に親友の心配をした俺の純情な心を返せ!」

「馬鹿野郎! 彼女はなぁ! ミキはなぁ! 生きているんだよ! 確かにゲームのキャラかもしれない……! でも! 彼女は確かに、オレの心の中で生きているんだ!」

「所詮ゲームはゲーム! 現実を見ろォ!」

「何だとぉ!」


 仰々しい音を立てて二人の座っていた椅子が倒れる。

 白黒と茶児、二人は立ち上がり、互いに拳を握りしめ、今にも相手に掴みかかろうとせんばかりの気迫でにらみ合っている。


 そんな親友二人を見て、僕は――


「待ていっ!」


 ――と、叫び声を上げた。


 白黒と茶児は、突然声を張り上げた僕を同時に見る。


 そんな二人の視線を浴びながら、僕はカバンの中を漁り普段から持ち歩いているボクシング用のゴングを取り出し、机の上に置いた。


「見合って見合って……ッファイ!」


 カァァン! と、綺麗な音が鳴り、二人は一斉に動き出す。


「うおおおおおおおおお!」

「どりゃあああああああ!」


 こうして……二人の戦いは始まった。


 誰にも止められない、二人だけの戦いが……。







*****





 辺りがどっぷりと暗くなったころ、僕たち3人以外誰もいない廊下で、凝り固まった身体をほぐすように伸びをする。


「さて、と」


 いやあ、反省文は強敵でしたね。

 僕たち3人はあの後先生にこっぴどく怒られ、生徒指導室に連行。

 常連さんということでおまけとして反省文10枚の所を3枚も追加で渡されて参りましたよHAHAHA!


 まあ反省も後悔もしてないけどね。


「今何時?」

「そーね大体ねー……7時だな、随分遅くなっちまった」


 茶児が腕時計を見ながら言う。

 ふーむ、7時か。腹減ったから帰ろうかな。


「じゃあそろそろ……」

「徹カラだな」


マイクを持ったポーズでそう提案してきたのは勿論白黒。

 なんでコイツはこんなに元気なんだろう、あれか、馬鹿だからか、それとも僕たちが反省文書いている横で寝ていたからか(そのせいで僕は反省文を26枚書くことになった)。


 ……両方か。


「やだ」

「えー」


 文句を垂れるな白黒野郎、そもそも高校生は夜中に出歩いていると指導されるだろ。


 警察には顔も、名前も、住所も、好きな食べ物も、お尻にあるほくろの数も覚えられる程お世話になっているから、あまり会いたくないんだよね。


「じゃあ何して遊ぶんだぜ?」

「何で遊び行く前提なんだよ……」


 さっきからげんなりとしていた茶児が話に入ってきた。

 優等生もどきには反省文13枚は辛かったらしい。


 いい加減慣れればいいのに。


「俺は帰るぞ、今日はもう疲れた」

「よし、じゃあ茶児ん家行くか」

「え?」

「ナイスアイデアだ白黒、その手があったか……あ、夕飯もごちになりまーす」

「は?」


 ガシッと両サイドから茶児と肩を組み、歩き出す。


 目指すは茶児の家。

 僕たちの冒険は始まったばかりだ!


「何故打ち切りエンドっぽく言うの!?」


 茶児のツッコミが廊下に虚しく響き、僕たちは茶児の家にお邪魔することになったのであった。


「勝手に決めんなー!」


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