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魔王の血を引く者達  作者: 前田炎蔵
第一章 魔王の心臓を持つ姫 
12/15

第12話 目覚めし者

「待て、そこの者」

ナタリーの進路を塞ぐダーヴィッツ。


「どきなさい」

少し距離をとって、馬を止めるナタリー。


「この先に行きたければ、私を倒してからにしてもらいましょうか。

 双剣を持った私は、そう簡単には抜けませんよ」

馬を下りて、すぐさま双剣を引き抜くダーヴィッツ。


「私は、あなたの相手をしている暇はないのよ」


「私が合図をすれば、貴方の兄弟を殺す事が出来ます」


「脅し?」


「真実か、脅しか、どちらでもよろしいでしょう?

 あなたは、どちらにしても戦わざるを得ないのですから」

そう言うと、同時に走りこむダーヴィッツ。

馬から飛び降りるナタリー。

ナタリーは、懐から【カナンウェルナン】を引き抜く。


『ザッ』


ダーヴィッツの一撃が空を切る。

自分の攻撃が、空を切った事に驚いて目を見開く。

しかし、攻撃の手を緩めない。さらに、ナタリーに向かって踏み込んでいく。

必中の距離まで詰め、素早く双剣の一撃を繰り出す。


『ザッ』


かろうじて、ナタリーの服をかする。

もちろん、かするつもりで攻撃を放ってはいなかった為、

再び、目を見開いたままのダーヴィッツ。

さすがに、次の攻撃を躊躇して距離を取る。


「ああ、もう、ドレスって、こんなにも動きにくかったかしら

 仕方ないわね。お気に入りだったけど状況が状況って、

そもそも血まみれで所々破れているし、直しようがないから、もうどうでもいいわ」


『ビリビリッビリビリビリリッ』


そう言うと何の迷いもなく、自分のドレスの膝部分から下を【カナンウェルナン】で

斬り捨てて膝から下に、素足を披露する。

靴は普段から行動力重視で、軽い革靴を履いていた。


「あんた、本当にオンデンブルグ王の第二王女か?」


「そうよ、私がナタリー・フォルヌ・ユングリングよ」


「あんた、武道とかの心得があったのか?」


「ううん、別に。ただ良く兵士たちの稽古場に、遊びに行ってたのだけど」


「あんた、さっきに王の間で会った時、そんな瞳の色だったか?」


「色って、私の瞳は太陽の光で、スカイブルー色に見えるのがお気に入りだけど」



「あんた、今、瞳の色は赤色だぞ。それも透き通った赤じゃない。血のような赤だ」



何か得体の知れないモノを、見たかのように少し怯えるダーヴィッツ。


「そう・・・、瞳の色も変わってしまうのね。

感傷に浸りたい気持ちになるけど、今はあなたを殺さないといけないのよね。

全てが終わってから、感傷に浸るわ」


そう言うと、一気にダーヴィッツに向かって走り出す。

虚をつかれて、双剣を構えるのが遅れた。

しかし、ダーヴィッツが普段相手にしている連中だったのならば、別に問題のある隙ではなかった。

ダーヴィッツの目の前にいる者は、普段の相手の枠に入らなかった。


『ズバッ』


「ぐぅ、は、早い・・・」

鉄の鎧の上からでも、深々と傷を負わせる一撃を浴びせるナタリー。

しかし、痛みを感じるよりも先に、反撃に出るダーヴィッツ。

相手の攻撃範囲と言う事は、また、自分の攻撃範囲でもあるのだから。

鋭く斬りつけるダーヴィッツ。


『パキィ』


「嘘だろ」

自分の双剣が相手の武器と重なって、粉々に砕け散る光景を

スローモーションで見るダーヴィッツ。

ナタリーの口の端が吊り上がる。また、吊り上げた口から荒い息が漏れる。


「待て、まだ、もういっぽ・・・ん」


『パキィン』


残った双剣を振り上げた瞬間、先ほどのデジャブと同じように、粉々に砕け散る双剣。


「な・・・、な・・・何者だ」


「何度も言わせないで、時間がないの」


『ザッシュ!!!!!』


何の迷いもなく、無防備のダーヴィッツを切り捨てるナタリー。


「くぁ・・・」

前のめりに倒れるダーヴィッツ。

それを確認すらせず、馬に再び乗るナタリー。


「待・・・て、何故・・・、お前が勝ったのに・・・、そんな顔をし・・・ている?」


「こんなの・・・、私が望んだ事じゃないからよ」


その言葉だけを口にして馬を走らせるナタリー。

何かが頬を伝った気がした。でも何が伝ったのか、ナタリーにはわからなかった。



次回更新予定日は12月18日12時ごろです。

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