涙で紅茶の濃度が薄くなる
俺は呆れて仕方が無かった。
とりあえず泣き出したこの理事長娘をどーにかしねーと。
三禮のティーカップに入った赤い液体にポツポツ波紋が浮かぶ。
このまま泣かれたら涙で紅茶の嵩が増しそうだ。
「ま……まぁとりあず画像の件は解決しておきますから」
「はい、宜しくお願いします!」
彼女はこれ以上ないといくらい、その華奢な体を折り曲げた。
俺は申し訳なく思い、とりあえず顔を上げるように促した。
「いいえ。お父様や学園の方々に迷惑をかけるわけにはいかないんです」
彼女は一向に頭を上げようとせず、力強く言った。
「現に、こうして貴方様にもご迷惑をかけていますし」
「別に俺は趣味で……」
もう諦めたのか、束紗は頭を上げさせようとしなかった。
責任感が強すぎる、俺が言ったところで彼女を励ませるわけでもない。
「じゃあ、画像は何とかしておきますから。失礼しました」
俺は何度言ったか分からない言葉をまた同じように言った。
「はい、こちらこそありがとうございます」
三禮はまだ顔を上げていなかった。
俺はその場を逃げる様にそそくさと立ち去った。
また泣き出されたりしたら厄介だ。
あのまま放っておくのは後ろめたいが、俺にはどうしようもできない。
「ちっ、画像流出はやっかいな事件だな」
俺は控えのコピーした資料を片手に頭を掻いた。
一応自分が管理している掲示板は何とか削除出来そうだ。
Twitterや他掲示板もハッキングすれば何とかなるだろう。
ただ、人の記憶まではハッキング出来ない……