100均ポーチって案外ブランドと変わんないよね
5時間目の授業終了のチャイムとともに、俺は教室を飛び出していった。
女子から早く逃げ、三禮と会って話をするためだ。
三禮から依頼があり、俺は事前に応接室へ来るよう頼まれている。
職員室を通り過ぎ、突き当たりを右に曲がったところだった。
人気が無く、関係者以外立ち入り禁止と看板がぶら下げてある。
俺は関係者だから通っていいのか……?
応接室と書かれたプレートがあり、俺は軽くノックした。
カッカッ
「失礼します」
俺は粗相の無い様、慎重に重い扉を開けた。
ギィィと、重々しい音がする。
「どうぞ」
応接間には、栗色カールの髪型をした少女がソファに腰掛けていた。
案外広く、トロフィーや肖像画などが飾ってある。
「どうぞこちらへ」
彼女は丁寧な物腰で俺をソファへ誘導し、腰掛けるよう促した。
「ありがとうございます」
俺は恐る恐る座った。
「では早速本題に入らせて頂きます」
さっさと帰りたいので、俺は座った途端に本題を切り出した。
無関係な天気の話でもされて長引くとこちらも困る。
俺は今早く帰りたいのだ。
「はい、お願いします」
彼女は何の違和感も無く、すんなり受け入れた。
俺は早速、昨日調べた資料を三禮に差し出した。
政治家や大手企業社長の加工画像流出も何百件とやったし、自信がある。
「昨日調べた限り特定出来たのは、画像発信元の名前と住所です。心当たりありますか?」
プリントには、『真名寺 柴乃』と表記されていた。
「真名寺柴乃、この人知っています……先日、トラブルに」
よっしゃビンゴ!
俺は心の中でガッツポーズした。
「それでは、詳しくお聞かせ下さい」
俺は出来るだけ優しい口調で尋ねた。
「えぇ。私、実は彼女のブログを炎上させてしまったようなんです……別に
悪気があったわけではないのですが……」
彼女はおどおどと、落ち着かない様子で喋った。
そして机にあったパソコンの画面を、俺の方に向けた。
ブログ
柴乃
【新しいポーチ買ったよ~人気ブランドのRAIN!画像載せたからよろ♪】
カキぴー
【わぁ、カワいい(・▽・)RAINすっごく高いんでしょ?いーなぁ】
三禮
【え、これRAIN?見えにくいけど後ろのタグにセリアってあるよ~^^】
まいまい
【セリアってあの100均の!?ホントだ、RAINじゃないじゃん】
名無し
【うわ、詐欺師ー】
カキぴー
【RAIN買えるとかすごなぁって思ってたのに。信じられない】
俺はこんな些細な出来事なのかと唖然としてしまった。
「私、悪気があったわけじゃなくって……」
まぁ、純粋過ぎる彼女だから招いてしまった事なのかもしれない。