見た目は中坊、頭脳は大人
これからつまらない授業が5時間も続く。
分かりきった内容ばかりが黒板に並び、退屈だった。
「連立方程式では、ここに代入をして……」
俺には小学一年生に教えているとしか思えない。
「んだよ、中2ってまだΣとかαとかやってねーのかよ」
「貴方本当に中2なの?コ●ンみたいに頭脳だけ大人なの?」
都亜は呆れている。
俺は頬杖をつきながら、ノートもろくにとらずにぼーっとしていた。
隣の席の都亜はしっかり授業を受けるよう促したが、やる気になれない。
勉強に身が入らず、俺は退屈すぎて眠ってしまった授業もあった。
どの先生も、同じような、誰にでも出来るような授業を教える。
「起きて束紗、次、家庭科。調理実習だから調理室へ移動」
都亜の声で目を覚ますと、皆エプロンと三角巾を着用していた。
「あぁ、家庭科があったな」
俺は昨日持ってきたエプロンと三角巾を仕方なく身につけた。
「えー、今日の課題はスクランブルエッグです。くれぐれも怪我しないよう……」
へーへー、分かってますよー。
「はぁ、束紗と同じ班かぁ」
「何か不満でも?」
俺はイラっとしながら文句を言う都亜を軽く睨みつけた。
「別にぃー」
都亜もこちらを睨んで嫌味たらしく言ってくる。
俺がフライパンで卵をさっさと焼いていると
「うわぁーっ、束紗君手際いいーっ!」
「料理得意なんだねっ」
と、何か知らんが女子が群がってきて、物凄いギャラリーになってしまった。
「束紗、女子に言い寄られてるぅー」
都亜が隣でププッとからかってくる。
「るせー、放っておけ」
ついでに余った卵で軽くオムレツとかプリンを作ってやるとなお喜ぶ。
「束紗君、スクランブルエッグだけじゃなくって、プリンもできるの?」
「うわぁ、料理デキる男子っていいねー!」
俺はキッチンから出られず、女子に取り囲まれた。
なんだなんだ?俺何もしてねーんだけど?
キーンコーン
「やべっ!」
終業のチャイムが鳴ると同時に、俺は女子をかき分けてキッチンを出た。
4時間目終了後、応接室で三禮と会う約束をしているたのだ。
「待って束紗君ー!」
女子から逃げ切り、俺は生まれて初めて自分の運動神経が良くて助かったと思った。