善意でGO
そしてその数日後、事件は起こった。
「大変、束紗!」
部屋に都亜が駆け込んできて、かなり焦っている様子だった。
また登校を勧めてきたのかと思ったが違った。
「んだよ急に」
都亜が学校から急いで走って帰ってきたのか、息を切らしている。
俺はSDカードのデータを整理している最中だった。
「理事長の娘……阿南三禮知ってるでしょ?」
息を切らしているため、途切れ途切れで言っている。
「それがどうしたんだよ」
俺は面倒く仕事の邪魔をされて機嫌が悪いので、ぶっきらぼうに言った。
「三禮の麻薬乱用の画像が流出して、今学園で問題に……!」
都亜は自分のスマートフォンを取り出すと、俺の顔に向けた。
都亜が俺に見せたのは、三禮が薬に囲まれている画像だった。
風邪薬とか、そういうものではなく、一目見て麻薬だと分かる画像。
確かにこんな画像が出回れば、学園の危機になるのは当然だろう。
俺は食い入るように注意深く見つめた。
「んだこれ、加工画像じゃねーかよ」
「えっ?一瞬見ただけで分かるの!?」
「あぁ。影の向きが違う、明度が違う、背景にズレがある」
俺は少し得意げに言うと、都亜は驚いていた。
「束紗なら何とか出来ると思って……」
都亜は俺に顔を背け、小声で呟くように言った。
「ちっ、完全に除去するのは少しムズいが、やれるだけやる」
俺はスイッチが入ったように、口角を釣り上げ、パソコンを立ち上げた。